大学や国の研究機関で働く、医療研の研究者の人生の流れについて

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研究者、というと大学や国の研究機関で研究している人達が真っ先に浮かびます。

しかし、企業にも研究者はたくさんいます。国だけでなく、地方自治体でも研究所を持っているところもあります。

一般の方が知る研究者の人生は、どうしてもノーベル賞学者などの報道で、マスコミを通じてということが多いかもしれません。

ここではあまり世間の脚光を浴びない理系、医療系の研究者達の人生について解説します。

特に断らない限り、ここで解説するのは大学、国の研究機関で研究する研究者の人生が基本です。

  • 基礎系の研究者
  • 実務系の研究者
  • 研究者として生き残るには?

研究者をおおざっぱに「基礎系の研究者」と「実務系の研究者」に分けました。これはやはり大学にいる人が研究者としてはメジャーであり、最近になって、大学における実務系の教員が注目されつつあるからです。

ここでの解説の前提として、「博士号はすでに取得している」とします。理系、医療系の研究者は基本的に博士号を取ってからがスタートになるからです。

基礎系の研究者

基礎系の研究者は、博士号を取得すると大学の助教(昔の助手に似た職種)、または研究員から研究者人生をスタートします。

大学の助教になれる人はそれほど多くなく、助教のポストを得ても、任期(契約年数)が決まっていることがほとんどです。

研究員の場合も、ほとんど任期があります。助教も研究員も、おおよそ3年から5年の契約です。

この間は、研究に集中できる契約なのですが、やはり大学院生などの教育業務も多少あります。

まずはここで博士課程在籍時代に出した論文を越える論文を出すことを目標とします。

この任期の間に業績を出せないと、任期終了後、次の職を得ることが難しくなります。

給料は、かなり安いことを覚悟しなければなりません。この時期は年俸制が多いのですが、だいたい、年400万円から500万円、ひどい契約になると300万円台もざらにあります。

これらは日本国内にとどまっている場合の話です。

かなりの人が、博士号取得後、すぐに海外に出ます。

海外の大学、研究機関に研究員として雇用される人は少なくありません。ただし、日本と同様に任期はあります。

博士号を取得したら、まずは職を探すのですが、海外は考えずに国内のみで探す人もいますし、日本国内は考えずに海外での職を探す人もいます。

この期間が過ぎますと、次の職を探します。次の段階でも、別の研究機関で任期付きの研究員をする人もいますし、大学の任期付き助教を続ける人もいます。

目安として、こういう任期付き研究員、任期付き助教は30代までです。40歳になる前に次のステップに行かないと、その後の人生が苦しくなります。

任期付き助教、任期付き研究員の期間は、研究プロジェクトのトップにリーダーがいるわけですが、40歳になる前に小さくてもいいので自分の研究チームを持たなくてはなりません。

大学で研究室のリーダーになるケース(教授、准教授)、助教ではあるが、雇用は定年制になり、研究室内に自分の研究チームが作れる、また、主任研究員などになってチームを作るなどです。

このような形で研究チームを作っても、研究機関によっては、「研究チームを作れるが契約は5年間」という場合があります。

こういった場合は、5年間の間に業績を挙げれば長期雇用に切り替わることもありますが、かなりの業績を求められます。

この段階で、かなりの研究者がふるいにかけられます。

一昔前は、「万年助手」という陰口がありました。

研究も大してせずに、大学の研究室の片隅でひっそりと定年まで生きていた方々がこう呼ばれてお荷物扱いされていました。

しかし現在の日本の状況ですと、助教で居続けるのも業績が必要であり、簡単ではありません。

一昔前であればとっくに講師、助教授(現在の准教授)になれるのに、人件費節約のために助教にとどめ置かれている研究者は日本にたくさんいます。

今後、少子化に伴い、大学の数が減ることが予想されています。そうなりますと、大学で研究する研究者のポストも減ると考えられています。

実務系の研究者

最近、大学には教員全体の何割かを実務系の研究者にすることが文部科学省から求められています。

実務系の研究者とは、企業などに勤務し、「実務」を業務としてやってきた人を指します。

教育学部であれば、小学校、中学校などの教員を経験した人、薬学部であれば、薬剤師経験者です。

この文科省の方針は、実務系の教育を充実させて、即戦力を大学で育成しようとする狙いがあります。

実務系の研究者を目指すのであれば、JREC-INなどの公募サイトを頻繁にチェックする、コネクションを使うなど様々な方法があります。

しかし、誰でも実務系の教員、実務系の研究者になれるわけではありません。

学部によっては、やはり博士号を取得していることが応募の必須要件になるケースがあります。

将来的に大学教員、研究者を目指すことを考えているのであれば、早めに博士号を取っておくことをおすすめします。

給与面は、あまり期待しない方がいいかもしれません。

よほど得がたい人材である、または優秀であると見込まれた場合はその限りではありませんが、基本的には基礎系の大学教員と同じくらいの給与になります。

かなりの割合の方が、企業勤務時代よりも給与は下がっているようです。

もし実務系の研究者として大学に勤務するのであれば、名前が通った大学、特に私立大学を目指すのがよいと思います。

名の通った、名門と言われる私立大学であれば給与もそれなりに期待できます。

実務系の研究者と基礎系の研究者の間には壁があることは否めません。つまり、仲良くなることはそれほど多くありません。

大学というアカデミックにおける「業績」というもので判断されますので、企業でのやり方では評価されないことがあります。

「実務系教員が○割在籍していると、文科省から補助金がもらえる」という理由だけで雇用する大学も少なくありません。

そういった大学では、実務系教員をどう活用するかについてビジョンがない事が多いので、肩身が狭くなることもあります。

ただし、きちんとしたビジョンを持つ大学であれば、実務系教員は重宝されますし、基礎系教員との連携も密になります。

きちんとした大学であれば、業績も上がりやすいですし、一部の私立大学では70歳が定年というケースもありますので、将来は安心です。

  • 研究者として生き残るには?

基礎系、実務系を問わず、研究者が生き残る方法は様々なものがあります。

業績、つまり結果を出し続けることは重要なことですが、この業績は大学の場合は、次に挙げるものが高い評価を受けます。

外部資金の獲得

1000万円の研究資金をあなたが外部から獲得したとします。多くの大学ではそこから10%~30%の金額が大学に入ります。これを間接経費といいます。

残ったお金があなたの研究に使えるお金になります。間接経費は、大学の設備維持、光熱費などに使われるとされています。

こういうお金を取ってくる研究者は大学にとっては非常にありがたい存在です。多ければ多いほど、大学の収入は増えます。

特許の出願

特許は、取れれば儲かるというものではありません。その特許がどれほど社会の役に立つか?が問題になります。

しかし、大学においては、大学で特許を取れば取るほど、「世の中の役に立つ研究をしている」と認識されます。

ここ20年くらいで、大学の研究は昔のように基礎一辺倒ではなく、どれだけ社会の役に立つかが重要とされるようになりました。

その指標として、特許の出願数を重要視する大学は増えています。

実務系教員も、この特許を取った経験があると大学側から大事にされます。

国際誌への論文発表

国際誌への論文発表は、一般の方々の目にあまり触れることがありません。

しかし、プレスリリースすることによって新聞などに掲載されれば大学の宣伝になります。

また、先に挙げた外部研究資金の獲得には、国際誌への論文掲載数が影響します。

外部資金の獲得はコンペティションによって行われることが多く、優劣は国際誌への論文投稿数、またはその論文の質によって採択されるかどうかが決まります。

そして、論文掲載数が少ないと、文部科学省からの指導される可能性があります。

大学・研究機関でどう役に立つ人材か

研究者が生き残る3つのポイントを解説してきました。

この3つは業績として扱われるものであり、これらが全くできないと大学内では評価されず、場合によっては離職を勧告されることもあります。

一方で、これらに頼らずとも生き残る術があります。

・講義の評判がよい
・雑務と言われる事務作業に長けている

などです。

今や大学は、講義の評価を学生が下す時代です。この評価が常に高い教員は、大学としても手放したくないため、大事にされます。

事務作業、つまり事務能力ですが、大学の人件費削減の流れで、事務員の数も減っている大学が多数です。

そんな中で、ある程度の事務処理をスムーズにできる教員は、私立大学などでは意外と出世が早い傾向にあります。

事務業務とは、学生教育カリキュラムの構築、運営などで、講義の質、研究の質はそれほど高くない教員の生きる道の一つです。

また、私立大になると、事務業務をする教員は大学上層部、事務上層部とコンタクトする頻度が増えます。

そうなると、顔と名前を覚えてもらいやすく、出世がしやすい、という利点もあり、割とやりたがる教員は多いです。

研究となると、相手が世界ですので、能力をフルに出さないとなかなか業績は出ませんが、事務業務はとりあえずやり切れば、やったという評価は得られます。

国試対策中心の学部で、国試対策などの中心を担っている教員の多くは、こうした研究競争力が低下している教員です。

こういったやり方は、現状の日本では仕方ないという話もありますが、大学の教育の質の低下はこういう事から始まっているのかもしれません。

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