不登校とは?学校に行けないことは何が問題なのか?登校拒否の現状を解説。

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特に理由はないけれど、何故か学校に行けない・行かない……それが「不登校」です。

不登校の具体例として、文部科学省は以下のように定義しています。

  • 学校生活上の影響:いやがらせをする生徒の存在や、教師との人間関係等、明らかにそれと理解できる学校生活上の影響から登校しない(できない)。
  • あそび・非行:遊ぶためや非行グループに入ったりして登校しない。
  • 無気力:無気力で何となく登校しない。登校しないことへの罪悪感が少なく、迎えに行ったり強く催促すると登校するが長続きしない。
  • 不安など情緒的混乱 :登校の意志はあるが身体の不調を訴え登校できない。漠然とした不安を訴え登校しない等、不安を中心とした情緒的な混乱によって登校しない(できない)。
  • 意図的な拒否:学校に行く意義を認めず、自分の好きな方向を選んで登校しない。
  • 複合:不登校状態が継続している理由が上記具体例と複合していていずれが主であるかを決めがたい。

不登校に分類されるのはこのような理由で長期間学校を欠席し続けている場合です。

そのため、病気や怪我の治療を理由とした欠席の場合は不登校には分類されません。

また、表に出てきづらく、隠れがちなのですが「親の状況を原因とした出席困難」も不登校の枠には入りません。あくまでも「身体は健康」ということが大前提なのです。

不登校という言葉が広く一般に使われるようになったのは比較的最近のことで、それまでは「登校拒否」だとか「保健室登校」という言葉が使われていました。こちらの言い方の方が馴染み深い、という方も多いのではないでしょうか。

言い方を変えれば馴染み深い、という時点でこの問題、最近唐突に出てきたわけではなくずっと前からあったもの……ではあるのですが、90年代の後半から急激に増加していることは否定のしようのない事実です。

原因は色々考えられますが、一番はインターネットやSNSが発達したことではないでしょうか。

これによって大人の見えない場所で問題が発生し始め、対処が後手に回りがちで気付いた時には既に手遅れ……というケースが多いのです。最近はLINEが問題となることも多々ありますよね。

ですが、不登校=いじめ・対人関係の悩みというわけではないのです。

文部科学省は、小・中学校の不登校生徒(俗に言う保健室登校を除く)を対象に調査を行っています。

2012年度調査によると、日本国内における不登校の発生率は、中学校で2.56%、小学校で0.31%とやや中学生が多いのが特徴的です。

また、同時に学校に対して「不登校となったきっかけは何か」という調査も行われています。

中学校で最も多いのは「無気力(怠惰傾向からうつ状態まで含みます)」で26.4%、次がほぼ同列で「不安など情緒的混乱」の25.1%なのです。

この2件だけで半数超えなので、不登校の子を見て「いじめではないか」と判断するのは少々気が早いと考えられます。

この2件以外だと「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が15.7%、「あそび・非行」が11.4%、「学業の不振」が9.5%、「いじめ問題」が2.1%という結果になります。

小学校でも「不安など情緒的混乱」が33.2%、次点で「無気力」が23.8%と、やはり精神的な理由が半数を超えてきます。

小学生の不登校の特徴が出ているのが「親子関係をめぐる問題」で、こちらも20.2%と非常に高い数値となります。

中学生、高校生になると親子関係が影響することは少なくなるのですが、小学生の段階ですと、親との関係性が学校生活に大きな影響を与えるということがお分かり頂けるでしょうか。

なお、それ以下になると「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が11.0%、「家庭の生活環境の急激な変化」が9.6%、「病気による欠席」が9.3%、「いじめ問題」が1.9%となります。

あくまでも学校に対する調査で数値上の話であるということ、いじめられていても頑張って学校に行く子どももいることから安心してはいけないのですが、どちらも「いじめ」が直接の原因となる不登校というのは少ないという結果となっています。

連日ニュースに取り上げられたり、専門の書籍が発売されたりと、不登校問題は普通に生活していても目に付く機会が多いため、「何となくいけない」ということは不登校に寛容な方でもお分かり頂けるかと思います。

単純に「皆が学校に行っているのに、行っていない生徒がいるのはおかしい」という問題ではないのです。では、具体的にどのような問題が起こり得るのでしょうか。

  • 学業に着いて行けなくなってしまう
  • 社会復帰が難しくなってしまう
  • 本人の自信低下に繋がってしまう
  • 家族の負担が増加してしまう

この記事では、これらの問題について触れていきます。

1:学業について行けなくなってしまう

これは比較的早い段階で直面する問題です。そのまま「授業が理解できない」という意味もありますが、授業が理解できなくなったことが原因で尚更不登校が悪化するケースが多々あります。

自ら学校に行かないと決めた子どもならそこまで大きな問題にはならないのですが、ふとしたタイミングで「何となく学校に行けなくなってしまった」子にはこれが極めて大きな壁となります。

また、どの段階で不登校になったとしても上位の学校に進学する際に大きな問題となって立ち塞がるケースが多々あります。

入学試験では学校で学んできた事柄が問われるため、どうしても不利に働いてしまうところがあるのです。

残念ながら日本の教育は不登校復帰後の子をサポートする制度が整っておらず、全て各学校に委ねられてしまっているのが現実です。

そのため、学校に復帰するも「授業について行けない……」と挫折してしまい、再び不登校となってしまう子どもも一定数存在します。

とはいえ、学業だけならば自宅でどうにか補うことも可能です。通信制の教育キットや塾、家庭教師と手段は色々あります。

子どものやる気さえあればどうとでもなりますので、保護者としてはその「やる気」が無くなってしまわないようにサポートしていく必要があるでしょう。

2:社会復帰が難しくなってしまう

国が比較的、深刻に考えているのはこの問題です。一度不登校になってしまうと、ニートやフリーター、引きこもりになってしまう可能性が若干ではありますが高くなっているのです。

特に高等学校は義務教育ではありませんから、不登校になった後は学校に復帰することなくそのまま退学してしまうケースが多々あり、そうなってしまうとなかなか社会復帰へのレールに戻ることが難しいのです。

精神的な理由もありますが、制度的にも大きな壁が立ちはだかります。

日本は「高校までは卒業していて当然」という考え方が根強い上に妙に年齢を意識する部分が大きいため、「何歳から何歳は小学生」、「何歳から何歳は中学生」、「働き始めるのは何歳、もしくは何歳」といった価値観が拭えず、それに合わない年齢の者を排除しようとする傾向が未だに強く、改めて学校へと考えても難しいところがあるのです。

就職に関してもそれは同様で、あまりにも若過ぎる場合は「何かあったのだろう」と勝手に判断され、弾かれてしまうことが多いのです。そんなことが続けば、当然ながら子どもの心は折れてしまうでしょう。

不登校が長期に渡れば渡るほど、引きこもりのリスクは高まります。国としては引きこもりの増加は痛手でしかありませんから、不登校の防止・早期解決を望んでいるのです。

保護者としてもこの点は非常に頭を悩ませる問題でしょう。ですが、10年以上不登校を経験した子どもが大人になって大成功を収めている例もあります。

学校には行けずとも、何かしら目標があれば、それに向かって子どもは努力するようになります。

子どもが失敗して苦しい思いをした時、安心して帰って来て傷を癒し、再出発できるような環境を整えるようにしましょう。家庭が安心出来ると気付いた時、子どもは1歩前に踏み出すかもしれません。

3:本人の自信低下に繋がってしまう

特に本人の意に反した不登校の場合、不登校期間が長引けば長引くほどに「自分は駄目な奴なんだ」と気分はどんどん後ろ向きになっていってしまいます。

周りがどうこう言わなくとも、本人は自分の状況を考えていることが多いです。だからこそ、変わらない状況に苛立ち、絶望し、自信を失ってしまうのです。

何をするにも「学校にちゃんと通えなかった」という事実が付きまとい、さらに2で上げたような周囲から遠ざけられる事例が重なれば、もうどうしようもない程に落ち込んでしまうのです。

最悪の事態にまで発展していくことはそう多くはないのですが、リスクが高まっていくことは事実です。

現状は変わりませんし、本人が落ち込んでしまうのも仕方のないことです。ですから、周囲は「大丈夫だ」と暖かい言葉を掛けてあげることに徹するべきでしょう。

少しでも心が軽くなるように、間違っても責めるような言葉を掛けてしまわないように気を付け、穏やかに見守り続けるべきです。

とはいえ、あまりダラダラしているのはどうかと思いますので、状況を見つつ、時には厳しい言葉を掛けることも必要かもしれませんね。その場合も「学校に行きなさい」ではなく「何か手伝いなさい」辺りから始めるべきでしょう。

4:家族の負担が増加してしてしまう

  • 言いたいことはたくさんあるけれど、傷付けてしまうかもしれない。
  • このまま引きこもりになってしまったらどうしよう。
  • 子どもが不登校になってから、家庭内の空気が重くなってしまった。
  • 些細なことで落ち込ませてしまった、もうどうして良いか分からない。

普通の子育てだけでも非常に難しい難題だというのに、不登校のナイーブな子を抱えてしまえばその負担は増大します。困ったことに、周囲はなかなか分かってくれないことも多く、そのご家庭だけで問題を抱え込んでしまう事例が多々存在します。

そうしているうちに周囲に助けを求めるということも出来なくなっていき、学校や行政機関に対して不信感を剥き出しにしてしまうという悪循環が発生しがちです。

そうなってしまった場合は、心療内科など学校とは全く無関係な機関に助けを求めることを推奨しますが、その「心療内科」がハードルの高いものとして認識されることが多く、やはり家庭内で不登校の子どもを抱えたまま閉じこもってしまうご家庭も存在します。

こうなると共倒れしてしまう可能性がありますし、何とかしていきたいところです。まずは固まってしまった猜疑心を解きほぐしていくところから始めるべきでしょうか。

そもそもの不登校の原因にもよりますが、大抵の学校は不登校をそのまま放置したいとは思っていません。

それが善意か、はたまた数字の問題かはさておき、利用できるところは利用していくべきです。行政機関も同様の理由で、敵にはなりにくいです。

また、心療内科は最近、どんどんカジュアルなものに変わりつつありますのでお子様やご家族に合う場所を探してみるのも一つの手です。

「家族のことは全て家族で解決すべきだ」と考えてしまうと、何かと悪循環に陥りがちです。不登校が有名になった分、サポート機関も増えてきています。

身近で事を大きくしたくないのであれば、インターネットを利用したサポートを受けてみるのも一つの手だと思います。

問題になるということは、それだけ件数が多いということ

不登校はまだまだ少数で、イレギュラーなもの。そう思われる方も多いと思います。ですが、5人に1人レベルで不登校が発生している現在、この問題は決して目を背けてはならないものなのです。

「今の子どもが昔の子どもより弱くなったから」だとか「甘ったれてるだけだから放っておけばいい」だとか、そんな厳しい意見も登場していますが、そのような意見が主流となり、弱っている子を見捨て続けた今までの流れがこの現状を招いてしまっているとも考えられます。

今と昔では、環境が違うのです。基準となるものが違うのに、子どもだけを攻めるというのは少々無理があるとは思いませんか。

漸く、とも言える話ですが、国は不登校を問題視し、解決の糸口を探り始めています。一人や二人のために国が動くことはありませんから、それだけ身近な問題と化しているということを理解すべきでしょう。

お子様が不登校になった時、「どうしてうちの子が」と考えてしまうかもしれません。そんな時、決して低くはない不登校発生の確率を思い出してください。

宝くじに当たるようなものではなく、比較的発生しやすい事柄であることを思い出してください。そのように考えると、少し楽になるかもしれません。

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