「棚からぼた餅」と「2階から目薬」はどちらも「ことわざ」で、上から何か落ちてくる(現れる)状態を言い表していますが、その意味は全く異なります。
ことわざや慣用句は大抵、良い意味を表すものと悪い意味を表すものに大分出来ます。
それで言えば「棚からぼた餅」は良い意味、「2階から目薬」は悪い意味に分類されます。
「棚からぼた餅」の由来と意味
ぼた餅というのは、半分潰したもち米を手のひらサイズにしてアンコで包んだ食べ物で、牡丹の花が咲く頃(=春)に食べるのでその名が付きました。
同じものが、萩の花が咲く頃(=秋)には「おはぎ」と名を変えます。
このぼた餅を棚の上に仕舞っておいたのを忘れていて(あるいは家族が仕舞っておいたのを知らなくて)、ふとした拍子にそれが見つかったとしたら、甘い物好きなら「ラッキー」と思うでしょう。
それ故、意図せず幸運が舞い込む事を「棚からぼた餅」と言い表すようになりました。
「2階から目薬」の由来と意味
目薬を差す時に苦労する人も多いことでしょう。
人間にとって目はとても敏感な組織なので、そこに異物を入れるという行為は本能的に躊躇ってしまうからです。
上手く差すには小さな点眼部分を出来るだけ目に近づける必要があります。
ではもし、それを2階の窓から下で待っている人の目に向かって差そうとしたらどうなるでしょうか。
とても上手くいくとは思えませんし、そもそもそんな差し方をする事自体が回りくどいです。
それ故、わざわざ面倒な方法を用いてもどかしい事を「2階から目薬」と言い表すようになりました。
「棚からぼた餅」と「2階から目薬」を使った例文
税金が戻ってくると聞いた時はまさに「棚からぼた餅」だったが、その返金を受けるのに役所でたらい回しにされた挙句、最初の場所に戻らされたのは「2階から目薬」と言わざるを得ない。
掃除機があったのに箒を使って掃除したのは「2階から目薬」だったかもしれないが、おかげで先日無くしたピアスを吸い込まずに済んだのは「棚からぼた餅」だった。
「棚からぼた餅」と「2階から目薬」に似た表現
意図せず幸運が舞い込む事には「棚からぼた餅」以外にも「鴨が葱を背負ってくる」という言い方があります。
鴨は鍋にすると美味しいので、同時に葱まで手に入ればラッキーという事です。
一方、回りくどくてもどかしい事には「2階から目薬」以外にも「隔靴掻痒(かくかそうよう)」という四字熟語があります。
「靴を隔てて痒い所を掻く」という意味です。
痒いならまず靴を脱いでから掻けば良いものを、履いたまま掻けばもどかしいはずです。