同じ内容であっても、あえて違う言葉で伝えられることがありますが、「遺体」と「死体」もその一つです。
遺体も死体も生命の途絶えた身体に対して使われる言葉ですが、遺体と死体では基本的に使う対象が異なります。
死体は基本的に人でなく、死んだ動物を指します。
遺体の場合は死んだ人に使われ、人以外の動物の場合には用いられません。
遺体と死体に対する感覚の違い
遺体と死体の言葉の捉え方で大きく異なるのは、人の感覚です。
動物に使われる死体という言葉には「物体」という側面があり、感情の移入がありません。
それに対し、「遺体」という言葉には、亡くなった人に対する哀悼が込められています。
従って、テレビのニュースで死体の表現が使われるのは、動物のものであるか、死体損壊罪などの法律用語に限られます。
遺体とは
遺体の「遺」の文字には、「のこす」や「とどめる」という意味があります。
このことは、人が死ぬと魂が離れ、肉体だけが地上に残されるという考えに由来しています。
そこで、遺体の言葉には死者の尊厳や、残された人の愛着が存在します。
なお、生と死をさまよっているような場合、生と死の事実関係を表す時は人であっても遺体ではなく、死体という言葉を使うことがあります。
死体とは
死体は基本的に動物の死んだ身体を指しますが、人や動物に関係なく機械的に死体という言葉の使われることがあります。
例えば、人の場合でも身元が判明していると遺体で、身元不明だと死体と呼ばれることがあります。
また、規約において呼び名が決められている場合もあります。
例えば、鉄道・バス・タクシーにおける持込み禁止の手回り品では、「死体」と明記されています。
死体の位置づけ
遺体と死体は、対象が人か動物かで使い方が分けられます。
また、遺体には哀悼の念が込められています。
なお、動物に対する死体と同じような言葉に、「死骸」という言葉があります。
死体の場合は生命を失ったとはいえ、まだ血液や体液が体内に残っています。
一方、死骸の場合は、血液や体液がすでに無くなり、干からびた状態にあります。