裁判の記事の中で、判決が「禁固刑(正式には禁錮刑)」だったり「懲役刑」だったりします。
一般市民で禁固と懲役の違いを知っている人はほとんどいません。
どちらも、受刑者を「刑事施設に拘置」ということでは変わりませんが、懲役の場合は拘置とともに、「刑務作業」という労働の義務があります。
禁錮の場合は単に拘置するだけで、義務とされる労働はありません。
禁固刑と懲役刑に分かれている理由
禁固刑は元々、政治犯が対象になっていました。
政治犯を政治的な報復や強制から保護する必要性を考慮し、他の犯罪者とは異なる処遇にするために作られたのが禁固刑です。
現在でも禁固刑は政治犯か、若しくはあやまって事件を起こした過失犯に下されています。
例えば、公務執行妨害罪や名誉毀損罪、公務員職権濫用罪、及び業務上過失致死傷罪、過失運転致死傷罪などが禁固刑になります。
刑務作業の選択
懲役も禁固も刑期は1月以上20年以下で同じです。
なお、懲役受刑者に義務付けられている刑務作業の内容は、懲役受刑者ごとに刑務所長が指定します。
禁錮においては刑務作業の義務はありませんが、逆に何もすることがないことが苦痛になります。
そのため、禁錮受刑者も刑務作業を申出ることができ(請願作業と言います)、実際に8割以上の禁錮受刑者が作業を希望しています。
執行猶予が付いた場合
禁固刑や懲役刑が下されても、執行猶予の付くことが少なくありません。
例えば、「禁錮3年、執行猶予5年」などという判決が下されます。
この意味は、禁錮3年の刑ではありますが、今後5年間法を犯さなければ、5年経った時点で刑に服する必要がなくなるということです。
逆に、猶予期間内に事件を起こすと、禁錮3年の刑に新たな犯罪の刑罰も加えて刑務所に収監されることになります。
禁固刑と懲役刑の実態
禁固刑と懲役刑の違いは、刑務作業の有無です。
なお、刑務作業をする場合、懲役受刑者と禁錮受刑者は同じ工場で一緒に作業しますが、居室は別々に分離することが定められています。
ちなみに、どんな罪が懲役になって、どんな罪が禁固になるかは、裁判官の判断次第です。
ただし、禁固刑の場合、実際に服役する受刑者は非常に少なく、その理由は禁錮刑のほとんどに執行猶予が付くからです。