「伯母」と「叔母」は血縁関係あるいは姻戚関係にある親世代の女性を指し、「小母」は基本的には赤の他人である年配の女性を指しますが、場合によっては血縁関係にある親世代の「未婚の」女性を指す事もあります。
すべて「おば」と読みますが、書き言葉の上では、「おば」という言葉を発する人物と該当する人物との関係性をしっかり区別する必要があります。
「伯母」と「叔母」の違い
語源は中国に伝わる「伯仲叔季(はくちゅうしゅくき)」という言葉にあります。
これは兄弟の順序を表す言葉で、伯は長男、仲は次男、叔は三男、季は四男を表します。
日本における「一郎」「二郎」のように嘗て中国では名前として用いられていた事もあります。
ここから、親の兄弟の内、親の兄を「伯父」、親の弟を「叔父」と書いて、両方「おじ」と読むようになり、同様のルールが親の姉妹達にも適用されたのです。
つまり「伯母」は親の姉、「叔母」は親の妹となります。
「伯母」と「叔母」の派生形
「伯母」や「叔母」にはその前に「義」、「従」、「大」、「小」などの文字が付く事もあります。
しかし、読み方に関してはその文字の読み方も足される場合もあれば、省略されて全て「おば」と読む場合もあります。
「義」は「義理」の意味なので、関係性は親の兄弟の配偶者となります。
「従」は「従姉妹」の意味なので、親の従姉妹を表します。
「大」が付けば、今度は親ではなく祖父母の姉妹を意味する事になります。
「小」が付くのは稀ですが親の姉妹が多い場合、複数居る姉や妹を区別する為に付けたりします。
「伯仲叔季」の考えから「仲母」や「季母」という表し方でも良いのですが、あまり浸透せず「小」の字を用いる方法が生まれました。
「小母」の使い方
「小母」の対象は幅広く、例えば我が子の友人から呼ばれる「おばさん」はこれに当たりますし、学生が寮母さんの事を言ったり、若い会社員が定食屋のおかみさんの事を言ったりする時も、全て「小母」となります。
但し、いくらその人が年配でも自分が同年代かそれ以上の場合、「小母」と呼ぶのは失礼です。
かつては、まだ若く未婚で実家にいる親の姉妹を「小母」と呼ぶ事もありましたが、これは家制度が根強く「結婚=嫁入り」が当たり前と考えられていた時代の名残と言えるでしょう。
本来の「伯母」や「叔母」は成人女性というニュアンスが強く、まだ実家にいて若く「未熟」な女性は「家を切り盛りする母を手助けする立場」という事で「小母」が用いられていたのです。
漢字の輸入が書き言葉を多様にした
読み方が全て「おば」である事からもわかるように、日本語では年配の女性を指す言葉はたったひとつでした。
しかし、文字が発達しなかった日本は大陸から漢字を輸入し、日本語に会わせてカスタマイズしてきました。
その際、今尚中国に残る「姻戚関係の呼び名を当人から見た関係性で分類する習わし」も日本に入って来ました。
その結果、詠み言葉では同じでも書き言葉では区別が必要になったのです。