言葉の意味は何となく分かっていても、漢字で書く時に迷ってしまうものがあります。
その良い例が「顧みる」と「省みる」で、どちらも「かえりみる」と読みます。
両方とも過去を振り返る言葉ですが、間違った使い方をしている人が少なくありません。
顧みるは、過ぎ去った物事や出来事を思い起こすことで、省みるは過去の自分自身を振り返ることです。
顧みるとは
「顧みる」は、一般的に過ぎ去った物事全般に対して使う言葉であり、歴史的な出来事を振り返る場合などにこの漢字が充てられます。
あくまでも客観的に見るため、当事者は誰であっても構いません。
またその他に、心に留める、気に掛けるという意味があります。
例えば、「彼女のことを顧みる」と言えば、彼女がどうしているか気に掛けるという意味になります。
省みるとは
「省みる」というのは、過去に自分自身がしたことや、言ったことなどについて、思い返すことを意味しています。
自分自身のことであるため、他人の過去の言動を見る時には省みるとは言いません。
省みるを象徴する言葉が「反省」です。
過去の自分の言動を思い返して、謝罪したり改善したりするのが反省です。
従って、省みるは主観的な言葉になります。
顧と省
顧と省を使った熟語を見ると、違いが分かります。
・一顧(いっこ):ちょっとだけ振り返る。
・回顧(かいこ):過去を振り返る。
・顧客(こきゃく):特別に目をかける客。
顧は意識を向ける対象は特に限定されません。
・自省(じせい):反省する。
・内省(ないせい):自分の心の働きを振り返る。
・反省(はんせい):振り返って考える。
省は対象が自分自身です。
対象の違い
顧みるの主な意味は、振り向いて見る、心に掛けるということです。
過ぎ去った物事を思い起こす意味と、何らかのものを心に留めるという意味です。
従って、顧みる対象は何であっても構いません。
一方、省みるは、自分が過去したことをもう一度考えたり、見直したりすることです。
従って、自分のことを振り返る時のみに使う言葉です。