一人暮らしを初めてみても、就職や進学を経てみても、未だに自立できないという方はおおくいらっしゃいます。
モラトリアムという言葉が流行したり、「境界人」という定義が生まれるなど、年齢が二十歳を超えても精神的に自立できるわけではないことが社会学や心理学では述べられています。
精神的な自立とはどういった状況を指すのでしょう、そのヒントを心理学を中心に探し、精神的に大人になるために必要なものを考えてみましょう。
この記事を読み終わる頃には、一歩、精神的な自立に近づいていることをお約束しますので、ぜひお付き合いくださいね。
精神的な自立とはどういう状態なのか
精神的に自立するとはどういったイメージでしょうか。
自立、というくらいですから、他人に頼ることなく自分の力で立ち上がり、生きている人のことを想像するでしょうか。
そうした考え方もできなくはありませんが、精神的な自立とは言い換えれば「アイデンティティの確立」が適切に行われた状態である、というのが心理学的な見解です。
アイデンティティの確立と聞いてもピンときませんよね。
そこで、まずはそのあたりから解説していきたいと思います。
そもそもアイデンティティとは
アイデンティティという言葉を聞いたことはあるけれど、説明しろと言われると難しい言葉ですよね。
わかりやすく一言で伝えるならば「自分が自分でいられる理由」のようなものでしょうか、自我の拠り所といった意味合いで使われますね。
なんだか哲学的になってきましたが、心配はいりません、難しく考えなければとてもシンプルな話です。
自分が自分であるために必要なもの、それがアイデンティティになるのですから、アイデンティティの確立というのは「自分が自分であるために必要なものが分かっている」状態を指すのだと予想できますね。
ここで一つ質問です、あなたは、自己紹介が得意な方ですか、苦手な方ですか。
私自身はとても苦手ですが、名乗る肩書きや実績、立場をひとまずは持っていますので、自己紹介するときにはそれらを述べて、趣味や特技も付け加えることが多いです。
きっとみんな似たようなものだと思います。
そして、自己紹介で語る言葉こそがあなたがあなたに見出した「アイデンティティ」であるといえます。
次項で詳しく解説していきますね。
自己紹介ができればみえてくる「自分」
自己紹介というのは特殊なもので、自分のことを「他人の目」でみる機会でもあるわけです。
他人から見てわかりやすいかどうか…。
気に入ってもらえるかどうか…。
そういった他者からの見え方をある程度取り入れながら自分のことを語る場が自己紹介なのですが、本来、そこで出てくる本音からの言葉には嘘は混じりません。
自分が胸を張って、人生の大切な時間を費やして就いている仕事のことや、心から休まる瞬間や楽しめる時間の過ごし方を語るのですから、本当であれば自己紹介の時間というのは自身と向き合う時間でもあるわけです。
しかし、多くの人は自己紹介が苦手ですよね、それはなぜでしょうか。
「ありのままの自分」に自信が無いからです、今の自分に自信が持てず、少なからず嘘を吐いたり虚勢を張ったりしなくてはならない瞬間として自己紹介をするから苦手なのです。
ここで一つ忠告ですが、自己紹介する場で嘘を吐いている間は精神的な自立はできません。
自分が自分を認めていないことの現れですし、嘘を吐いてその場を乗り切ってもその後その嘘を吐き続けなくてはなりませんから、本音の自分がどんどん奥に引っ込んでいってしまいます。
ここまで読んで後ろめたさを感じた嘘を吐いている、自己紹介が苦手なあなた、心配はいりません。
まずは自己紹介が難なくできる、というレベルまで到達するという目標が生まれました、大いなる一歩です。
次は自己紹介を軸として、自己理解を深める方法を探っていきましょう。
自分を知るために必要なたった一つの方法
本当の意味で自分という存在を理解するのはとても難しいものです、きっとあなたにも苦心した経験があるからこの記事を読んでいるのだと思います。
得手不得手は分かっても、自分が本当は何がしたいのか、どう生きていきたいのか、といったセンシティブな内容についてはなかなか見えてこないものですよね。
一つ質問ですが、あなたは最近一人でどこかへ行きましたか。
少し前に、一人でカラオケ、焼き肉、回転寿司など「どこまで一人で楽しめるか」が話題になりました。
そうした一人でどこかへ行き行動する経験を、最近しましたか?
私は一人で海に行ったり、登りたくなれば山にも行きます、青春18きっぷで日本を旅したこともあります。
すべて一人で、行きたいと思ったときに行くのですが、そうした経験はおありでしょうか。
なぜ突然こんなことを述べたのかと言うと、こうした「一人で決断し、行動し、楽しむ」ことができるかどうかがアイデンティティの確立、ひいては精神的自立と密接に関係しているからです。
一人で決断し、行動し、楽しむために必要なのは「自分が何をすれば幸せになれるのか」をちゃんと見つけていることにほかなりません。
もしこれが、友人からの誘いがなければ動けず、誰かと一緒でなければ恥ずかしくてどこにもいけない、という心理を持っている方であればどうなるでしょうか。
「あれがやりたい、あそこにいきたい」という感情の前に「一人で外に出て遊ぶなんて恥ずかしい」という心理が立ちふさがり、自分の本音を押さえつけてしまいますよね。
そして、そうした心理を覆せないまま、自己紹介の段になって嘘を吐く羽目になるのではないでしょうか。
嘘とまではいかなくても、一人で決断し、一人で楽しめるものが本当は分かっていないままで自分の趣味を語ることはできませんから、なんとなく好き、程度の物事を語ることになるのかもしれません。
結論としては「自分ひとりでもやりきれる、大好きなこと」を見つけることで、自己紹介で心から語れるネタが手に入りますし、ひいてはそれが自己理解の手助けにもなり、精神的な自立につながるのです。
「ひとりでやりきれる大好きなこと」から自分を見つける
その対象はなんでも良いです。
夜な夜な一人で飲み歩くことでもよいですし、廃墟の探索でもよいです、もちろん読書でもゲームでも音楽でもなんでもよいです。
誰かと一緒でなくても、自分からやりたい、触れたいと思える対象を見つけることで、そこに自己を見出すことができるようになります。
次第にその対象が自己の一部となり、アイデンティティとして機能してきます。
音楽や読書、ゲームであれば少なからず哲学的な影響を受けることになるでしょうし、廃墟の探索など一風変わった趣味は知的好奇心や感受性を豊かにしてくれます。
夜な夜な一人で飲み歩く楽しさは、美味しいものを食べたり飲んだりできるだけでなく、知らない酒場の主人やお客さんと知り合えるところにも見いだせます、まるで小さな旅のような刺激を与えてくれます。
大切なことはその行為によって「自分が幸せ」であるということ、自分の幸せを自分で定義できるようになったとき、人はほんとうの意味で自由になります。
それまでは他人や社会の定義した幸福に向けて動かなければ、という強迫観念じみた意識があったとしても、自分で自分の幸せを定義できるようになった人はその枠から外れていきます。
それが精神的な自立を意味します。
自分一人で幸福を手に入れられる状態を得る、そのために必要なのがアイデンティティの確立なのです。
自己紹介や、一人で行動する事の重要性がおわかりいただけましたでしょうか。
まとめ
アイデンティティや一人で行動する事の観点から精神的自立について考えてきましたが、いかがでしたでしょうか。
現代はモラトリアムなど自由な青年期が確保されているおかげでたっぷり自我を探索することができる時代ですが、それゆえに、自分について理解できないまま大人になることがとても恐ろしいことのように感じられるようになりました。
ですが本当は、とってもシンプルな話でしたね。
自分が一人でも楽しめるものを見つける、たったそれだけで、自分についての理解というのはぐんと深まるものでした。
今現在、もし自分が精神的に自立できていないと悩んでいるのであれば、一旦友人や家族との関係を疎遠にして、一人になれる空間を作ることをおすすめします。
リゾートバイトなどは知らない土地に一人で暮らすことになるので、こうした精神的な自立にはもってこいの生活だと思います。
そうした、誰もあなたを知らない環境に身をおいて、押しやっていた自分自身の声に耳を傾けてみてください。
きっとそこに、精神的自立の第一歩が隠されています。
ご覧いただき、ありがとうございました。