育児中にすぐにイライラする、子どもを憎らしいとしか思えない…。
こんな症状でお悩みであれば、育児ノイローゼ気味かもしれません。
誰にも相談できず、辛く苦しい思いをしていませんか?
「これって育児ノイローゼ?」と思ったら、できるだけ早く対処することが大切です。
今回は、育児ノイローゼになる原因と対処法を紹介します。
目次
育児ノイローゼはどのくらいの人がなる?
育児ノイローゼという言葉を一度でも聞いたことがある人がほとんどでしょうが、実際のところ、どれくらいの人が育児ノイローゼの経験があるのでしょうか。
育児ノイローゼは明確な線引きが難しいため、はきりとしたデータをとることはできません。
しかし、参考となる数値はあります。
少し古いデータですが、平成15年に日本労働研究機構がおこなった調査によれば、「育児ノイローゼや産後うつではないかと思った経験」をしたことがある人の割合は次のようになっています。
- 雇用者の女性本人…40.8%
- 雇用者の男性(妻について)…40.3%
- 無職の女性本人…41.0%
また、平成22年にマーケティングリサーチ機関のMMD研究所がおこなった調査によれば、「育児ノイローゼだと感じたことがある」と回答した母親の割合は49.1%にのぼっています。
では、少し前と比べて家庭内における育児の状況が大幅に改善したのかを考えたとき、答えはNoだといえるはずです。
女性の子育て環境が大幅に改善していれば、「ワンオペ育児」などというネガティブな言葉が広がるはずもないからです。
つまり、子育て経験がある人のうち、40~50%ほどは育児ノイローゼに陥っている可能性があるということです。
育児ノイローゼは決して珍しいものではなく、他人ごとでもないということがお分かりいただけるでしょう。
育児ノイローゼは放っておくと、育児放棄や虐待など、母親自身だけでなく子どもへの悪影響も生じてしまいます。
夫婦関係に亀裂が入り、離婚にいたるケースも珍しくありません。
できるだけ早く対処する必要があります。
参照 厚生労働省:仕事と家庭の両立支援に向けた課題について(データ集)
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/02/dl/s0228-6b.pdf#search='%E8%82%B2%E5%85%90%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BC+%E4%BA%BA%E6%95%B0+%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF'
参照 MMD研究所「育児ノイローゼに関する実態調査」
https://mmdlabo.jp/investigation/detail_489.html
育児ノイローゼの原因は?
育児ノイローゼの原因は人によって異なりますし、必ずしも何か一つのことが原因になるわけでもありません。
しかし、原因となりやすい要素がありますので覚えておくとよいでしょう。
原因を知っておくだけで、原因不明の症状よりも気が楽になりますし、対処法も見えてくるからです。
睡眠不足やホルモンバランスの乱れ
まずは、女性である母親特有の身体的な要素が影響しています。
育児中は子どもの夜泣きや癇癪で夜から朝までぐっすり眠れることが少なくなります。
特に子どもが小さいうちは「よく寝た!」と思って起きたのがいつだったのか、忘れてしまうほどです。
慢性的な睡眠不足によって自律神経が乱れがちになり、感情の起伏が激しくなったり、不調を感じたりします。
これが、もともとの女性特有の不安定さ、妊娠期~出産後に起きるホルモンバランスの乱れに加わることで、どうしても心身ともに不安定な状態になるのです。
理想と現実とのギャップ
育児における理想が大きすぎたことで、現実とのギャップを感じてしまう人が少なくありません。
子どもの存在は確かに幸せを感じる大きな要素ですが、独身時代や妊娠中はその「幸せな瞬間」だけを楽しみにしてしまったり、子どもが言うことを聞かなくても自分は大丈夫だとどこかで思ってしまったりすることがあります。
実際には、子育ては慣れないことの連続で大変なことばかりです。
テレビCMで見かけるような可愛い子育てのシーンばかりではないことがほとんどなので、「こんなはずではなかった」と思ってしまうのです。
性格的な要因
性格的に必ず育児ノイローゼになるという人はいませんが、「育児ノイローゼになりやすい性格」と言われるものはあります。
たとえば、
- 完璧主義な人
- 真面目で頑張り屋の人
- 人に甘えられない人
- 理想が高い人
- もともと感情の起伏が激しい
- 繊細で傷つきやすい
こうした性格をもっていると、上手に息抜きしなければ育児ノイローゼになるおそれがあります。
育児以外のストレスを多く抱えている
育児以外でストレスを抱えていることも原因となります。
たとえば、親の介護や夫婦問題、友人関係などです。
精神的なストレスとなることの多くが、人間関係から派生しているものや家庭内の問題です。
育児という一大仕事をしている最中ですから、大人に気をつかう必要はありません。
介護など別の負担が発生しているようであれば、今すぐにでも外部のサポートを受けるなどして負担を分散する必要があります。
夫が協力してくれない
育児ノイローゼになった人や、その夫の話を聞くと「夫が非協力的だった」「自分が妻を支えてあげられなかった」という声がよくあがります。
育児はそもそも一人で担うものではないにもかかわらず、仕事などを理由に夫がほとんど参加しないと妻の負担は増えるばかりです。
しかも、育児に参加しない夫は自分のこと(食事、洗濯、掃除など)すらできないことが多いため、子どもと夫の二人分の世話が発生します。
育児ノイローゼとはいうものの、実際には夫への不満やイライラが精神面の負担となり、そこにはいない夫ではなく、目の前の子どもに当たってしまうというケースがよくあります。
子どもが思うようにならない
子どもは身のまわりのことを自分ですべておこなったり、自分の感情をコントロールしたりといったことができません。
イヤイヤ期に突入していっさい言うことを聞かないこともあるでしょう。
人は、もともと自分の思い通りにならないことがあると一定のストレスを感じるものです。
独身中は自分や、ときどき夫の都合で動いていればよかったのが、子どもができた途端にすべて子ども軸で時間が進むことで、時間をコントロールできないもどかしさが募っていきます。
相手が小さな子どもともなればコントロールはほぼ難しくなります。
子どもが自分の思うようにならないことで「振り回されている」感覚が強くなり、ストレスがたまっていくでしょう。
最初のうちは頑張って耐えていても、いつかどこかで爆発し、あるときふと身動きがとれなくなってしまった自分に気がつくのです。
周囲に相談できる人がいない
育児ノイローゼは専業主婦の方がなりやすいと言われることがあります。
これは、職場など外部の人と接する機会が少なくなるため、誰にも相談できずに自分の中で抱え込んでしまうことが原因のひとつとされています。
もちろん、兼業主婦であっても、周囲に相談できる人がいなければ同じことです。
- 夫は毎日帰りが遅くて話す時間をとれない
- 自分の両親は離れて暮らしており心配をかけたくない
- 義両親は気をつかう
- 友人は仕事や自分の家庭で忙しい
こうした理由から、次第にふさぎこみがちになり、気づいたときには育児ノイローゼになってしまうことがあります。
育児ノイローゼの症状
育児ノイローゼとひとくちに言っても、その症状は人によって異なります。
たとえば次のような症状がでているのであれば、誰かに相談するところから始めましょう。
- やる気がでない
- とにかく泣けてくる
- イライラが止まらない
- 子どもを可愛いと思えない
- 自分は母親失格だと感じる
- ちょっとしたことでもパニックになる
- まったく眠れない
- 食欲がない、反対に食欲が止まらない
- 子どもに対してひどいことを言う
これまでとは何かが違うのは、体や心が助けを求めている証拠です。
少しでも「あれ?わたしって育児ノイローゼ?」と思ったら早めに対処することが大切です。
症状が軽いうちに対処する方が、改善も早くなります。
育児ノイローゼの対処法
ここからは、育児ノイローゼを感じ始めた方に試してほしい対処法を紹介します。
自分を認めてあげる
まずは、ぜひ、子育てに奮闘する自分を認めてあげてください。
母親は、とてもすごいことをやってのけているのです。
出産や子育ては大人になって初めて経験するものです。
しかも子どもは一人一人全く異なるため、育児本や先輩ママの経験と必ずしも合致するものではありません。
家事や仕事とは違い、子育てだけは完璧にできなくて当たり前です。
それを母親である自分が中心となっておこない、現実に子どもは日々成長しています。
それがどれほどすごいことか、自分自身ではなかなか気づきにくいかもしれませんね。
しかし、子どもにとっての母親は唯一無二の存在。
会社の従業員や社長、総理大臣だって代わりはいますが、母親だけは誰にも代えることができないのです。
夫の協力を得る
育児ノイローゼを乗り切るためには夫の協力が欠かせません。
夫婦はお互いが助け合わなければ、そもそも結婚する意味などないでしょう。
育児ノイローゼ気味の今が、夫に助けを求めるひとつの時期です。
夫の方から気づいて助けてくれればよいのですが、世の中の多くの夫は気づかないものです。
多少気づいていても、仕事の忙しさやストレスを理由に見てみぬふりをしてしまうこともあるでしょう。
夫へは、口やメール、書面などでしっかりと伝えることが大切です。
言わなくても分かるという期待は捨て、「本当に辛いから助けてほしい」と訴えましょう。
頼るときは、しっかり頼りきることも大切です。
「夫に頼んでもできないだろう」「自分とやり方が違うから自分でやった方が早い」と思わずに、夫に任せたことは夫自身に完遂させることが大切です。
少しでよいので一人になる時間を作る
たまには子どもを夫に任せ、一人になり、自分のためだけに動いてください。
外出したときは子どもの絵本やおもちゃを探すのではなく、自分が独身時代に好きだったものに目を向けましょう。
ショッピングをする、美容院やネイルサロンに行く、カラオケに行くなど、ご自身が楽しめる時間を作るのです。
たまには友人とカフェでお茶をしたり、スイーツを食べたりしてもよいですね。
女性の友人は苦しい状況に対して共感してくれる頼れる存在です。
母親の場合、数時間もすると
- ちゃんとご飯食べたかな?
- 今日はお昼寝できたかな?
- 寂しくて泣いていないかな?
と、子どものことが気になってくることがあるかもしれません。
そのときは、子どもが可愛くて仕方がない存在だと再認識できているので、家に帰ってもよいでしょう。
新鮮な気持ちで子どもと接することができます。
母親がいない状態で子どもと一緒に過ごしていた夫も、母親の大変さが理解できるはずです。
家事を一切やらない日を作る
育児とともに家事も担っていることが多くの母親の現状です。
イクメンなどという言葉が認知されるようになりましたが、ごくたまに掃除や買い物をした程度でイクメンを気取られては、妻としてはたまったものではないでしょう。
家事は夫にすべて任せるか、家事代行サービスを使うなどして、家事を一切やらない日を作りましょう。
育児に手を抜くことは性格上できない方が多いかもしれません。
母親は、一緒に寝ている子どもが寝返りひとつするだけで気になって起きてしまうものです。
しかし、数日くらい家事をやらない日があっても大した問題ではありません。
大人の食事はできあいのものや外食で十分ですし、子どもの離乳食もドラッグストアなどに行けば多数売られています。
家事負担を減らすこと自体は、育児ノイローゼと関わりがないように思えるかもしれませんが、全体的に母親の負担を減らすことにつながります。
結果的に心の余裕が生まれることで育児にもよい影響があるのです。
一時保育、託児サービスを利用する
待機児童や仕事をしていないなどの理由で保育園に子どもを預けられないことがあります。
しかし、母親の負担を減らすために子どもを一時的に預かってもらえるサービスがありますので、上手に活用してみましょう。
たとえば次のようなものがあります。
【認定こども園・認定保育所・保育園の一時保育】
子どもの保育に伴う心理的肉体的負担解消のために、一時保育をおこなっている施設があります。
保育士がいる施設へ預けるため安心感があります。
ただし、子どもの人員数がいっぱいで預けられないこともありますので、直接施設に問い合わせしておくこと、できるだけ急な依頼でないことなどがポイントになります。
【ファミリーサポートセンター】
子育てを助けてほしい人と助けたい人が会員登録をし、地域の中でお互いに助け合う組織です。
基本的に宿泊はおこなっておらず、助けたい会員の自宅で数時間預かってくれたり、保育園の送迎を代わりにおこなってくれたりします。
助けたい会員は原則、資格者である必要はありませんが、保育に必要な知識、実技などの実習をおこなったうえで登録しています。
親が少しの間、子どもと離れて自分の時間を持ちたいときにも利用できます。
【ベビーシッター】
ベビーシッターの派遣をおこなっている民間業者がありますので、子どもが小さいときに利用することも方法です。
自治体が主導の制度と比較して費用はかかりますが(相場:1時間1500~2000円ほど)、個別に対応してもらえるなど融通がきくメリットがあります。
ただし、民間業者なので情報収集をしっかりおこないましょう。
全国保育サービス協会に加盟している業者か、自治体が紹介している業者かなど、信頼できるかどうかが大切になります。
厚生労働省のHPでもベビーシッターを選ぶ際の注意点を紹介していますので、よく確認したうえ慎重に選ぶようにしましょう。
参照 厚生労働省:ベビーシッターなどを利用する際の留意点
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/babysitter/index.html
【保育ママ】
どの自治体でも実施しているわけではありませんが、お住まいの自治体で保育ママが実施されていれば使うこともよいでしょう。
保育ママとは、主に3歳未満の児童を保育者の自宅などで保育する事業です。
自治体に認定された保育士などが、自宅で一時的に子どもを預かってくれますので、育児ノイローゼ気味で自分の時間を持ちたいときなどに依頼してみてはいかがでしょうか。
こちらは自治体を通じた制度になりますので、費用面が抑えられること、預かり先の信頼度が高いことなどがメリットです。
行政に相談する
夫や親、友人を頼れない方もいるでしょう。
あるいは、周りの人よりも知らない人に相談する方が、気が楽だという方もいるかもしれません。
行政では頼れる相談先が多数用意されています。
インターネットで「お住まいの自治体名 子育て 相談」などと検索してみてください。
たとえば東京都の場合は次のような場所で相談、支援をおこなっています。
- 子供家庭支援センター…相談や支援講座の開講、一時保育や支援ヘルパーの派遣などをおこなっています。
- 保健所・保健センター…子どもの予防接種や健診などのほか、家庭訪問もしてくれます。
- 児童相談センター・児童相談所…育児やしつけに関する相談などを、ソーシャルワーカーや医療職などが受けてくれます。
- 東京都ひとり親家庭支援はあと…ひとり親家庭の子育ての悩みや就職支援、離婚や養育費についての情報提供などをおこなってくれます。
参照
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/koho/ouenbook.files/1712_kosodateA5_out_tan_6.pdf#search='%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD+%E4%BF%9D%E5%81%A5%E6%89%80+%E7%9B%B8%E8%AB%87+%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6'
医療機関を受診する
どうしても辛い場合は、心療内科や精神科などを含めた医療機関を受診することも検討しましょう。
医療機関と聞くと躊躇する方は多いですが、育児ノイローゼになり、家族に受診をすすめられて通った結果、症状が改善された母親は多くいます。
育児ノイローゼの相談を医師などにおこなうことは珍しくありませんので、あまり構え過ぎないようにしましょう。
相談相手が医療の専門家というだけで気持ちが安心できるケースもあります。
出産の際にお世話になった産婦人科で相談することもよい方法です。
顔見知りの助産師・看護師や医師がいますので、母親や赤ちゃんの状況を知ってくれています。
近い日程で健診を控えているのであればその際に相談してみてもよいでしょう。
少なくとも、自分の判断でサプリメントや市販薬を飲むなど、医療の知識がなければ危険な行為をすることは避けましょう。
薬で改善したいと思ったら、真っ先に医師に相談してください。
最後に
いかがでしたか?今回は育児ノイローゼになる原因と対処法を紹介しました。
育児ノイローゼといっても、その原因や症状、適切な対処法は人それぞれ異なります。
まずは状況を把握することが必要ですが、育児ノイローゼになってしまう人にはそれすら難しい問題です。
そのため、できるだけ早く周囲や行政、サービスなどを利用して誰かに相談することが重要です。
夫を頼れない、知り合いがいないなどで相談できる先がないと思わず、自治体や民間企業も含めて広く頼るようにしてください。