小学校、中学校と無事に卒業し、いざ高校生……といった場面で、急に子どもが「学校に行きたくない」と言い始めた場合、多くの親は困惑し、何とか状況を変えようと焦ってしまうのではないでしょうか。
勿論、小中学校の時点で不登校の傾向を見せる子どももいますが、彼らの場合はある程度覚悟をして見守ることが出来ると思います。
しかしながら、高校生になって急に「学校に行きたくない」と言い出した場合、どうして良いか分からなくなってしまうのではないでしょうか。
ただ『その時だけ』学校に行きたくないのか、本格的に不登校の兆しを見せているのか、まずはそこを見極める必要があります。
特に後者の場合は非常にデリケートな問題ですので、しっかりとしたサポートを心掛けなければなりません。
子どもが学校に行きたがらない原因は色々と考えられるのですが、不登校の兆しを見せている場合は以下のことを念頭に置き、話を聞く必要があるでしょう。
- 子どもだけを一方的に責めない
- 責任を外部に丸投げしない
- いきなり新しい環境に放り込まない
- 『家族』が最後の砦であることを理解する
どうして良いか分からない、と焦ってしまう気持ちも分かります。
しかしながら、正直に「学校に行きたくない」とSOSを出した子どもの気持ちを1番に考え、適切な対応を取れるように大人はどっしりと構えておかなければなりません。
そのためにも、いつ何が起こっても良いように、ある程度は心構えをしておくべきです。
以下、それぞれの詳細について述べさせていただきます。
子どもだけを一方的に責めない
最も大切なのが子供を一方的に責めない、ということです。
まずは子どもの立場になって考えてみましょう。
親に「学校に行きたくない」と縋った際に一方的に悪者扱いされ、無理矢理学校に行かされたとしたら……残念ながらもう2度と、親に縋ろうとは思えないでしょう。
仮に「学校に行きたくない」という話が何とかなったとしても、一方的に責められた経験がその後の親子関係に悪い影響を与える可能性が極めて高いので、これだけは避けなければなりません。
甘えるな、社会はもっと厳しいんだと言いたくなる気持ちは分かります。
高校生の子どもの場合は自我がしっかりと構築され、親から離れる巣立ちの準備期間に入っています。
ですから、彼らは本来、大人に頼るということ自体したくないと思っている場合が多いのです。
そんな子どもが自分のプライドを捻じ曲げ、あえて親に縋ってきたのだという事実を忘れてはならないのです。
逆の立場で考えてみて下さい。それがいかに勇気と妥協を必要とする行為であったかを理解してください。
ただの子どもだと一蹴するのではなく、ひとりの人間として話を聞いてあげる余裕を持つようにしましょう。
責任を外部に丸投げしない
学校に行きたくない=学校がすべての問題なのだから、学校にすべて何とかしてもらうべきだ、と考えてしまうのは時期尚早というものです。
当然学校以外に問題がある場合もありますし、学校に問題があったとしても、解決策を試行錯誤する前に学校に丸投げしてしまうのでは、子ども視点で「自分はその程度の存在か」と受け取られてしまう可能性が高いです。
カウンセラーなどの外部機関に頼る場合も、親は一切話を聞かずに……ということがあってはならないのです。
最悪の場合、問題が解決できたとしても、子どもが親に対して心を閉ざしてしまう可能性があります。
確かに専門家に任せた方が良い場面というものも存在します。
しかしながら、過剰に外部に頼ってしまうと「親が全く頼りにならない」と判断されてしまう恐れもあるのです。
忙しいから、分からないからと言って子どもの話を一切聞かないということは絶対にないようにしましょう。
相手は高校生ですから、聞く気がない態度を見せるだけでも伝わってしまうものです。気をつけ過ぎるくらいに気をつけて、子どもと向き合うようにして下さい。
また、問題解決のためには複数の人間が連携を取り合った方が良い場面も存在します。
子どものタイプによっては親には悩みを吐き出せずとも、全く関係のない他人(カウンセラーなど)には色々話せるといった子も中にはいます。
この場合は間に入ってもらった方経由で情報を得るため、その方に全てを丸投げせずに話を聞いておくべきでしょう。
丸投げもダメ、ひとりよがりもダメ……難しいですが、あまり気負いすぎずに周囲と話し合っていきましょう。
いきなり新しい環境に放り込まない
これもやってしまいがちなのですが、いくら子どもが「学校に行きたくない」と主張したとしても、「ああそうなの」と言ってサクッと転校させたり、フリースクール行きにしたりするのは少し違います。
言えば簡単に状況を変えられる、逃げられる……と思って甘えてしまうだけならまだ良いのですが、新しい環境でも失敗してしまった場合、子どもは間違いなく自信を無くしてしまうでしょう。
そのまま引きこもってしまうこともあり得ます。
ですから、新しい環境に子どもを送るにしても、それを決断する時間は必要です。
もしかすると、子どもが「学校に行きたくない」と言った理由は比較的簡単に解決できるものかもしれませんし、高校生くらいになると比較的レアケースなのですが、ちょっと子どもっぽい理由でワガママを言っているだけの可能性も無くは無いのです。
実際のところ、「そこが辛いのなら新しい環境へ」とすぐに決断できる方はそう多くはありません。
むしろ、無理だと突っぱねてしまい、子どもを追い込んでしまう方の方が多いくらいです。その決断力はきっと、子どもの支えになるのではないでしょうか。
ですからもう少しだけ、様子を見てみましょう。
「早くしなければ手遅れになるかもしれない」と心配になる気持ちも分かりますが、無理矢理学校に行かせて傷付けるわけではないのです。
ですから、先走って周囲が焦った行動を取らないように気を付けておきましょう。
その決断が正しいかどうかを見極めるのは、今すぐでなくとも良い筈です。
『家族』が最後の砦であることを理解する
高校生くらいの子どもは難しいもので、なかなか親に気持ちを吐き出してくれないものです。
悲しいことに、世の中には気持ちを吐き出せないまま我慢し続け、取り返しのつかないことになってしまう子どもたちもいます。
子どもの方から「学校に行きたくない」と言ってくれたということは、親を頼ろうという気持ちが少なからずあったということです。
それは親子の信頼関係がしっかり築けているという証であり、誇るべき場面だと考えられます。
ですから、決して恥ずかしいことではないのです。むしろ、誇るべきことなのではないでしょうか。
実は不登校関連では意外にも、話を聞いているだけで解決するパターンも多いものです。
逃げ道がある、気持ちを吐き出せる場所がある……それに気付くことが出来れば、気持ちにゆとりが出てくるのです。
話を聞いているだけでは解決しないこともありますが、それでもなるべく子どもの気持ちを受け止めてあげるように心掛けましょう。
甘ったれるな、世間はもっと厳しいんだと言いたくなっても、今は耐えて下さい。
子どもが「『家族』は守ってくれる存在だ」と認識し、誤った行動を起こさないように支えてあげて下さい。
それが出来るのは、きっと家族だけなのですから。