イタチもテンも、哺乳綱ネコ目(食肉目)イヌ亜目 イタチ科テン属に分類される動物です。
小さな頭、長い尻尾、とても素早い動き、と見た目もよく似ています。
また、生態もどちらも肉食獣であり、小さいのに凶暴であるなと、よく似ています。
住んでいるところはどうでしょう?
イタチは元来は水辺で暮らす動物でしたが、街中でもよく見られるように、その生息範囲はとても広いです。
一方テンは、街中に姿を見せることはまずなく、山の中でくらしています。
しかし、中山間地の人里にはよく現れて、家畜などに被害をもたらします。
イタチと人間
イタチには仲間がとても多く、朝鮮半島にもシベリアにも同種の動物が暮らしています。
日本でもっともよく見かけるニホンイタチは、前述のように街中にも住んでいるくらい人間界に深く関わってきたので、イタチにまつわる伝承も多く残されています。
そのいくつかは、イタチが家畜を襲ったり、天井裏で騒いだりするものなので、イタチを悪者に描いた鳴き声が聞こえたら不吉の前触れである、化けるなどなどです。
テンと人間
イタチは群れで暮らすのに対し、テンは単独で山で暮らしているので、イタチほど人に親しまれてはいないのでしょうか?
いいえ、テンにまつわる伝承は、イタチととてもよく似ています。
やはり火事を起こす、化ける、といったものです。
筆者は、それらは人がイタチとテンとを混同していたこともあるのではないかと思います。
テンは猟師にとってはとても縁がある生き物のひとつです。
テンの毛皮は、昔から高級品として珍重されてきたからです。
あれはイタチかテンか?
もしあなたが山でイタチのような動物を見かけたら、それはテンかもしれません。
テンの体はイタチよりひと回り太く大きく、頭もひと回り大きい印象です。
また走る姿は、イタチは体がスリムなせいでしょうか、直線的に地面を這うように走る姿が印象的です。
一方テンは、もっと軽やかに、半ば跳ねるように走ります。
またテンは木の枝や人家の屋根の上など、高所での動きがたいへん機敏です。
こうした特徴から、イタチとテンを見分けることができます。
イタチとテン、ふえる?へる?
現代日本は、残念ながらイタチにとってもテンにとっても、ますます暮らしにくい環境になってきています。
中山間地では人口減少と高齢化によって山の開発は一段落していますが、その結果としてこれまで手を入れてきた山が放置されてしまうこととなり、山が荒れ、すべての野生動物の餌場が減ってしまいました。
山暮らしのテンにとっては由々しき事態です。
そんな時代、街中でも生きていけるイタチのほうが、これからは見かける機会がふえることでしょう。