どちらも微生物のはたらきによって、食品中の有機物が分解された状態です。
しかし人間や生物にとってメリットがあるものが発酵で、人や動物にとってデメリットになる有害なものが腐敗です。
冷蔵庫に、食べ忘れて長期間放置された食品がある場合、「まだ大丈夫かなあ?もう腐っているかなあ?」と匂いを嗅ぐでしょう。
腐敗した時には、ケトンやインドールと呼ばれるものが作られてしまい、これらが悪臭を放ちます。
そして腐敗して微生物が繁殖すると、お腹を壊すなどの健康被害をもたらすことがあります。
「腐敗」の意味
真菌や酵母や腐敗細菌などの微生物のはたらきで、食品中の有機物が分解された状態が腐敗です。
有機物を含む代表的なものがタンパク質なので、肉や魚や卵などのたんぱく質食品の方が、ごはんやパンなどのたんぱく質が少ない食品よりも腐敗しやすい傾向があります。
食物が腐敗すると、悪臭の原因となるインドールやケトンなどの物質が悪臭を放ちます。
腐敗したものを食べると、お腹が痛くなったり下痢をしたり、健康被害をもたらすことがあります。
しかし食中毒の原因菌と腐敗の原因菌は別物です。
食中毒の原因となる菌は、残念ながら匂いはしません。
また、腐敗していなくても食中毒になることはあります。
ですので、匂いだけで「大丈夫、まだ食べられる」と判断するのは危険です。
「発酵」の意味
発酵は、原料に酵母菌や乳酸菌などの微生物や酵母を加えて、その微生物のはたらきで食材中の物質を分解させることを言います。
納豆は発酵食品ですが、これは蒸し大豆に納豆菌を加えてできたものです。
近年は、発酵食品に整腸効果があることやダイエット効果等の健康によい物質がたくさん含まれていることが分かり、注目されています。
このように、発酵は人にとってメリットのある物質が生成されるのが特徴です。
発酵食品にはどのようなものがあるのか?
発酵食品には、納豆以外にヨーグルトや味噌、酢、乳酸菌飲料(ヤクルトなど)、キムチやすぐき(京都のつけもの)やピクルスやザワークラウト、くさや(滋賀県で有名な魚の干物のような食品)、アンチョビがあります。
また近年ちょっとしたブームになっている甘酒も発酵食品です。
甘酒は「飲む点滴」と言われているように、江戸時代は夏バテの予防に甘酒を飲んでいたようです。
ビタミンB群が豊富でアミノ酸やブドウ糖やオリゴ糖が含まれており、抗酸化作用の強い「エルゴチオネイン」という物質も含まれています。
違いは、人にとって「良いもの」か「悪いものか」で区別されています
「腐敗」と「発酵」の違いを、一言で説明するなら、人間にとって良いか悪いかの違いです。
発酵も腐敗もメカニズムは基本的には同様です。
しかし、人間にとって美味しいものであったり、いい香りがする、食べると健康にも良い等の「良い結果」をもたらすものは、発酵です。
チーズは時に臭いものもあるし、納豆の匂いが嫌いだという人もいますが、食べること自体は良い結果をもたらので、発酵食品です。
蒸し大豆に納豆菌を加えてわらで包んで発酵させると納豆になりますが、そのまま蒸し大豆を放置すれば、悪臭を放って腐敗してしまいます。
このように腐敗したものを食べても良いことは何もなく、むしろお腹が痛くなったり下痢をする可能性もあります。
つまり、人間にとって「悪い」結果をもたらすのが、腐敗です。