「船乗りの仕事」と聞いて、皆さんはどのようなことをイメージしますか?真っ黒に日焼けした顔、力が強くて豪快、家にはほとんど帰れない...といったさまざまな想像が頭を駆けめぐるかもしれません。
とはいえ実際には、「この人が船乗りなの?」「見た目はサラリーマンと変わらない」というような人もたくさん働いています。しかし、船乗りの仕事はサラリーマンと違って「きつい」の度合いが明らかに違います。
陸地では当たり前のことが、海上ではできないことがほとんどです。何か月も船の上で暮らすわけですから、当然プライベートな時間など無いに等しい状態になります。
このように、船乗りの仕事には「きつい」と言われるポイントがたくさんあるのです。海の生活に憧れて船乗りになったけれど、仕事があまりにハードですぐに辞めてしまう人も大勢います。
そこで今回は、船乗りの仕事が「きつい・限界だ」と言われる理由や仕事の魅力・やりがい、さらにきつい海上生活を乗り越えるコツなどについて紹介していきます。
目次
もう限界!船乗りの仕事がきついと言われる理由
船乗りは陸地でおこなう仕事と異なり、任務に就いているあいだのほとんどを船の上、つまり海上で過ごすことになります。それは想像するよりもはるかに厳しい仕事です。
海上生活がきつい、もう限界だ...と感じて船乗りの仕事を辞めてしまう人も少なくないと言います。それでは、船乗りの仕事がきついと言われる具体的な理由について、見ていくことにしましょう。
逃げ場がない!人間関係が思った以上にきつい
一般的な会社に勤めている場合には、仕事が終わればプライベートな時間はきちんと確保することができます。しかし船乗りの場合はまったく異なり、プライベートな時間を確保することは非常に難しいのです。
船の上から出ることができないのですから当然です。乗船者にはそれぞれ個室が与えられていることが多いとはいえ、壁はとても薄いですからプライバシーを確保することも容易ではありません。
家族や恋人と電話で話をしていたとしても、会話が隣の部屋に丸聞こえになっているということもよくあります。こうしたことは、オフィスワークをする会社員にはまずあり得ないことです。
さらに、性格的に合わない同僚や上司がいる場合には、船乗りの仕事はさらにきついと感じられるでしょう。陸地に上がるまでは常に同じ船内で行動しなければいけないからです。
次に休めるのはいつ?海に出たあとは休暇ゼロ
海に出たあとは、次の停泊地に到着するまで休みが取れないのも、船乗りの仕事がきついと言われる理由のひとつでしょう。精神的にもかなり負担がかかります。
もちろん24時間働き通しというわけではなく、当直・当番制になっていますが、それでも船から降りる事ができないため、かなりきついと感じられることが多いようです。
また、当直ではない場合でも、緊急時には当然のことながら業務につかざるを得ないという点も、船乗りという仕事のきつい点かもしれません。
このように船乗りの仕事は長期間にわたって自由になる時間がないことから、精神的・体力的にも大変な激務であるということが分かります。
暇を持て余すことも!海の上には娯楽がない
海の上での生活に慣れてきた、それほどきついと感じなくなってきたという場合、次に実感するのは「海の上には娯楽がない」という点かもしれません。
何といっても海の上ですから、場所によってはスマートフォンが使えなかったり、お酒やタバコが思うように手に入らなかったりすることもあります。気晴らしをしようと思っても、海の上には娯楽施設など当然ありません。
このように、船乗りの仕事は実務以外にも「きつい」と感じられるところが多々あるのです。実際に任務に就いてみてはじめて、「船乗りとして働くことの厳しさを思い知った」という人も多いと言います。
このように、船乗りとしての仕事を続けていくためには、いくつものハードルをクリアする必要があるのです。安易な憧れから船乗りの仕事を選んでしまうと、後悔することになるかもしれません。
船乗りの仕事はきついけど楽しい?その魅力とやりがい
望んで船乗りの仕事に就いたとしても、思った以上に船乗りの仕事がきついといって早々に見切りをつけて船乗りの仕事を辞めてしまう人は少なくありません。
その一方で、「船乗りの仕事はきついけど楽しい」と言う人がたくさんいることも事実です。では今度は、船乗りの仕事の魅力とやりがいについて、探って行くことにしましょう。
給料が高く航海中は生活費の心配がいらない
いったん海に出ると数ヶ月以上も陸地に戻ることができないことも多いなど、きついことの多い船乗りの仕事ですが、実はとても高い給料がもらえるということはあまり知られていません。
仮に3ヶ月間の船乗りの仕事をしたとすれば、おおよそ100万円前後のお金を稼ぎ出すことができます。一度にこれほどまでの大金を手にできる職業というのは、他にはあまりないのではないでしょうか。
また、航海中は生活費のことを気にしなくて良いという点も、船乗りとして仕事をしていくうえでの大きなメリットと言えます。住居費はもちろん、光熱費なども必要ありません。
ただし、無事に業務が終了して船から降りた、肩の荷が降りたことの安心感から豪遊や散財をしてしまわないように気をつける必要があるでしょう。
困難を乗り越えるたびに鍛えられる
船乗りの仕事はハードで、身も心も休まる暇がないと感じることが多く、とてもきつい業務の連続です。しかし、困難を乗り越えるたびに自分自身を鍛えられるという良さもあります。
潮の流れや気象条件などにより、海はさまざまに変化していきます。人間の力が及ばない大自然の力を目の当たりにすることで、人間がどれだけ頑張ってもどうにもならないことがたくさんあるということを 思い知ることでしょう。
また、数々のきつい仕事・イレギュラーなトラブルを乗り越えるたびに、船乗りとして、人間として鍛えられるというところも、忘れてはいけません。
船乗りの仕事はきついことの連続で、「普通のサラリーマンの方が良かった...」と感じてしまうこともあるでしょう。しかし、数多くの困難を乗り越える必要があることから、人間的に成長できる職業と言えるかもしれません。
船から降りたら長期休暇がもらえる
いったん海に出てしまうと、少なくても数ヶ月のあいだは陸地に戻ることができません。もちろん家族や恋人と会うことはできませんし、大事な行事に立ち会うことができない可能性も考えられます。
そのため、大切な人達と良好な関係を維持することが難しくなってしまう場合もあるでしょう。しかし、数ヶ月にわたる仕事を終えたあとは、長期休暇が待っています。
1か月から3か月ほどの休暇を得ることができるのです。この期間に家族や恋人、友人たちと思いきり楽しい時間を過ごすことが可能になります。
また、長期休暇を利用して旅に出たり、事業を始めたりするなど、新しいことにチャレンジするのも良いでしょう。このように船から降りたらまとまった休みを取得できるのは、船乗りの仕事の大きな強みと言えそうです。
船乗りの仕事は楽しい?きつい海上生活を乗り越えるコツ
船乗りの仕事のきついところや、船乗りの仕事をすることで得られるメリットなどについて見てきました。「自分に向いていそうだ」「ちょっと自分には合わないかもしれない...」など、様々な感想を持ったことでしょう。
それではここからは、船乗りの仕事・きつい海上生活を乗り越えるためのコツや心の持ち方について考えていくことにしましょう。
雄大な自然を肌で感じることができる
日々きつい仕事ばかりが待っていると思われがちな船乗りという職業ですが、実は船に乗っているからこそ体験できることもたくさんあります。
特に「雄大な自然を肌で感じることができる」というのは、船乗りという仕事をしている人に与えられた特権と言っても良いかもしれません。
イルカやクジラとの遭遇や、本来ならお金を払ってツアーに参加しないと見ることができないような、めずらしい自然現象を見ることができることもあるでしょう。
「船乗りの仕事が好き」「実際きつい仕事だけれど、これからも船乗りを続けていきたい」という人は、こうした自然との触れ合いを大切にしていることも多いようです。
荷物がない時には休日がもらえることもある
船乗りの仕事は基本的に、いちど船に乗ったら次に陸地に上がるまで休みがないことが普通であり、きついと言われる理由のひとつです。
しかし、時には船に乗せて運ぶ荷物がない場合もあります。そんな時は岸壁に船をつけて一時的に休みを取るケースもあるのです。
一時的な停泊期間は1週間から10日前後であり、その間は船員それぞれの自由時間ということになります。観光をしたり、ご当地グルメを堪能したりすることもできるでしょう。
仕事で海に出ていても、こうした突発的な休みがもらえる可能性があることは、船乗りという仕事ならではの嬉しいポイントかもしれません。
「船乗り生活」は良い話しのネタになる
知人や友人、家族の中に、職業は「船乗り」という人はあまりいないでしょう。そのため、「船乗りの仕事をしている」と言うと、誰もが興味を持って話を聞いてくれます。
船乗りとはどんな仕事で、船の上ではどのような暮らしをしているのか、またどのようにきつい仕事なのか、「船乗り」という職業そのものが、良い話のネタになることは間違いありません。
船乗りの仕事は精神的・体力的にもきつい仕事!心が折れる前に転職を考えよう
船乗りの仕事が「きつい・限界だ」と言われる理由や仕事の魅力・やりがい、さらにきつい海上生活を乗り越えるコツなどについて紹介してきました。
精神的・体力的にも大きく消耗する仕事ですから、単純に「海が好き」「自然と触れ合いたい」という気持ちだけで船乗りを続けていくのは困難でしょう。
もしも船乗りとして限界を感じるようになった時には、心が完全に折れてしまう前に転職を考えることも必要かもしれません。