弓道を始められた皆様、弓道の世界へようこそ。
たくさんの素敵な方々との出会いを大切に、弓道を楽しんでくださいね。
さて、今回は初心者の稽古・練習について紹介していきます。
目次
初心者の稽古・練習方法
基本動作編
基本の姿勢や動作の練習があります。
一番初めは、立った時の姿勢や礼の練習を行いますが、道場や室内を使える場合には射法八節より先に基本姿勢や動作を教わることが多いです。
下記では項目だけご案内し、詳細は別の記事で紹介しますので、参考にしてください。
- 立った姿勢
- 椅子に腰かけた姿勢
- 坐った姿勢(正坐、跪坐、蹲踞)
- 立ち方
- 座り方
- 歩き方
- 曲がり方(立っている場合、歩行しながらの場合、座しての場合)
- 礼の仕方(坐礼、立礼、揖)
- 執弓の姿勢
弓を引く動作編
さて、早速ですが、弓を引くための練習の流れを紹介します。大体はこんな感じです。
- 射法八節を覚える(徒手→平ゴム→ゴム弓→素引)
- 巻き藁で矢をつがえて練習
- 的前で練習
所属する団体や指導者によって多少違いはあるかと思いますので、参考程度にしてくださいね。
ちなみに、2.3へのステップアップは、指導者の判断によって許可が出されます。
ここでは、入門者が一番最初に習得する1.「射法八節を覚える」を重点的に紹介します。
1.射法八節を覚える
弓道には、「射法八節(しゃほうはっせつ)」という、いわば弓道の形があります。
「正射必中」という言葉の通り、「射法八節」をいかに正確にとるかが美しい射形や的中率につながっています。正しい射形は、ケガや事故を未然に防ぐことにつながります。
ともかく、この「射法八節」を覚えなければ、弓を引くことはできません。
残念ながら、きっと弓矢を持たせてすらも持たせてもらえないでしょう。何としてでも覚えましょう。
以下では、射法八節を勝手に簡略版で紹介します。射法八節の流れと各形の名前をざっと覚えましょう。
ここでは、正面打起しで説明します。
(※かなり省略していますので、一般的な射法八節の説明については別途参照ください。)
【射法八節(簡略版)】
- 1.足踏み…足を踏み開く動作です。ポイントは角度、幅、向きの3点。
弓を引いている最中にふらつかないよう、しっかりと踏み開きます。
- 2.胴づくり…弓を起して矢をつがえ、姿勢を整える動作です。
弓を起して弓の下の部分を左膝に乗せ、弦と弓の間の延長線上に顔が来るように位置を取ります。
人にもよりますが、射手から見るとちょうど半角スラッシュ(/)の様な角度になります。右手は、腰にあてます。
- 3.弓構え…馬手を取り掛け、手の内を整え、正面で構えます。
最後に顔を的の方に向け物見を行います。
- 4.打起し…的を見据えたまま、弓を静かに正面に高く持ち上げます。
- 5.大三・引き分け…打起した弓を左右均等に引き分ける動作です。
まず、弓を左側に移動しながら左腕がまっすぐに、同時に、右肘を動かさず、右手のこぶしは額(おでこ)の前に位置するように右ひじを曲げ、額(おでこ)と右手のこぶしとの間隔がこぶし1つ分あくようにし、一時停止します。
これが、弓を3分の1ほど引き分けた大三(だいさん)です。
大三を取ったのち、左右の高さが同じになるように左右均等に引き分けていきます。
- 6.会…弓を引き絞り、練を定め、力をためます。
- 7.離れ…矢を放ちます。
- 8.残心(身)・弓倒し…離れの後、一旦、停止します。これを残心(身)と言います。
残心を取った後、弓を倒し、物見を元に戻して、足を閉じます。執弓の姿勢に戻します。
1.足踏み、2.胴造りが「土台作り」、3.弓構えが「装填」、4.打起し5.大三・引き分けが「発射用意」、6.会で力をためて狙いを定め、7.離れで「発射」、という流れになります。
練習の順序
射法八節の練習方法は、徒手(→平ゴム)→ゴム弓→素引という順番で練習していきます。
徒手(としゅ)
徒手とは素手のことです。ここでは、弓など道具を持たず素手で形をとる練習を言います。
まず、射法八節の各動作・形を取って体に覚えこませます。徒手の良いところは、道具が必要ないので自宅など場所を選ばずに行えることです。
また、道具を使わないので、矢やゴムを飛ばすこともなく、安全に練習できます。
平ゴムを使う。
個人的な練習方法の紹介です。布製の平ゴムを使って練習します。
100円均一や手芸店で幅が5mm~15mmの布の平ゴムって売っていますよね。
その平ゴムを70~100㎝位に切って半分に折り先を合わせて結び輪を作ります。これが弓の代わりになります。
実際に使用する際には、弓構えで車のハンドルを持つように輪の左右を持ち、射法八節を練習します。
身長やゴムの伸び具合にもよると思いますので、ご自身が会を無理なく余裕でとれるくらいの長さに調整してください。
この練習では、力を入れずに引いている感覚を疑似体験できます。ゴム弓は太いゴムチューブを使っているのですが、意外にもかなり力が必要です。
慣れないうちは、力を入れたり道具を持つことで射形が崩れます。
徒手では完璧にできていたとしても、ゴム弓を用いると余計な処に力が入り、射法八節が崩壊してしまうことがあるのです。
ゴム弓に入る前の予行練習と考えてください。
練習のポイントはこちら↓
- 引き分け、会の際にゴムが水平になっているかどうか。
- 射法八節が正確にとれているか。
注意することは、離れでは「離さないこと」です。会を取った後、ゆっくり戻します。
離れの動作をとると、確実にゴムが手や腕に当たるので痛いです。ご注意ください。
ゴム弓を使う
ゴム弓とは、木やプラスチックの弓の握る部分をかたどった棒にゴムチューブをつけたものです。
様々なタイプがあり弓具店で販売しています。ゴム弓を使えば、弓が無くても、天井が低く狭いスペースでも練習することができます。
平ゴムとの違いは、握りがあるので手の内の練習ができる事、ある程度の筋力が必要になることです。
つまり、ゴム弓での練習は筋力とレーニングになります。また、離れの動作をすることができます。
ただし、握りに繋がっているとはいえ、ゴムは前方にとぶので、周囲に人がいないことを確認してから練習してください。
ゴム弓のタイプによって、扱い方が違うので、初めは必ず指導の先生方の指示に従ってくださいね。
ゴム弓の練習でチェックするポイントはこちら↓
- 射法八節がきれいにとれているか。
- 大三~会までゴムが水平であるか。
- 会で伸びあい、離れができているか。
- 握りの下部についているおもりがついている場合、離れた際にできるだけ上下に揺れていないようにする。
注意点として、ゴム弓ではどうしても馬手に力が入ってしまいます。
ゴム弓の構造上、ある程度は仕方のないことなのですが、実は、弓を引く際に馬手に力を入れたり、手首を曲げるのはよろしくないことなのです。頭の片隅に置いておいてくださいね。
素引き(すびき)
矢を持たず、弓だけを引いて射法八節を練習することを素引きと言います。
徒手やゴム弓と比べ、実際に弓の力を感じながらのより実践的な練習となります。
各項目での力の使い方、正しい動作を体に覚えさせましょう。
初めは、弓だけを用い素手で弦を引き練習します。
弓構えでは、弓手は手の内を整えて握りますが、馬手は甲が自身の方を向くようにし弦を人差し指~小指の4本で持ち、打起しをします
慣れてきたら、弽をして素引きを行います。その際は実際に取懸けてみてください。
注意点は、素引きでは弓を使うので、打起しができるくらいの天井の高さと執弓の姿勢をとれるだけの周囲のスペース(前後左右)が必要です。
また、離れの動作はせず、ゆっくりと元の状態に戻しましょう。
弓を引く際は普段の日常生活では使わない筋力を使いますので、最初、弓が重く感じると思います。
慣れるまでの辛抱ではあるのですが、余りに弓の強さが強い場合は、指導の先生に相談してみましょう。
(ちなみに…道場にもよると思うのですが、置いてある弓の強さは8kgが一番小さいキロ数ではないかと思います。)
素引きの練習でチェックするポイントはこちら↓
- ・弓を持った状態で、射法八節がきれいにとれているか。
- ・会で伸び合いができているか。
ここまで、射法八節の練習段階を紹介しました。この後、巻き藁練習へと移るのですが、矢を使うため、安全面から指導者の許可が必要です。
射法八節の練習をくりかえし、体にしっかり覚えさせましょう。
オススメの暗記方法
暗記のコツは4つ。声に出し耳で聞くこと、実際に動作を行うこと、文字として認識すること、更にこれら3つを繰り返すことです。
射法八節を覚えるにあたり、下記を2つを一緒に行うとよいです。
1)射法八節の各動作を取りながら、各動作の名前を声に出す。
2)各項目・動作を書いて覚える。
次に具体的に説明します。
射法八節の各動作を取りながら、各動作の名前を声に出す。
射法八節の動作をしながら各項目で一旦停止し、項目・動作の名前を声に出します。
声に出すことで、耳で聞き認識し聴覚を使って覚えることができます。同時に、動作を繰り返すことで、体が各動作を自然と覚えてくれるでしょう。
音をたてられない場所にいる場合や恥ずかしい場合には、心の中で声を出してみてくださいね。
各項目・動作を書いて覚える
もう一つおすすめなのが、文字に書いてみる事です。視覚側から覚える方法です。
射法八節は、難しい漢字が使われているわけではないものの、名前が独特です。審査の時には筆記試験もありますので、ぜひ正しい漢字、読み方を今のうちに覚えてしまいましょう。
まとめ
入門したての初心者が習得しなければならないのは、「基本動作」と「弓を引く動作」の2種類です。特に「弓を引く動作」は「射法八節」という弓道の形を覚えなければなりません。
練習方法は、徒手(→平ゴム)→ゴム弓→素引と順に進めます。素引きで射法八節ができるようになって初めて巻き藁練習へ進むことができます。
暗記の方法としては、耳で聞き、体で覚え、文字を書いて目からも覚えると効果的です。何度も繰り返しマスターしましょう。
一番初めは、覚えることが多く、覚えるためには反復練習が大切です。
しかし逆に言えば、この基礎さえ身につければ、弓を引くことができるということになります。根気が必要ですが、頑張ってくださいね。