「罹患」は病気にかかること。
「羅漢」は高位の仏道修行者を表す言葉。
信仰の対象として彫像や羅漢図にその姿を見ることができる。
罹患と羅漢は全く違う意味をもった言葉です。
しかしその読みの音と文字の類似により、勘違いしやすい言葉でもあります。
「罹患」という言葉を、初めてみたとき「らかん」と読んでしまった人も少なくないはずです。
「罹患」の意味
病気にかかることをいいます。
読みは「りかん」。
発病し、治療が必要だと診断されたという意味を含むこともあります。
「罹患証明書」は感染症にかかったことを証明する書類です。
「罹患者」や「罹患率」という表現で用いられます。
「罹患する」という風に動詞として使われる場合もあります。
たとえば「インフルエンザに罹患した人の数」などといった具合に使用されます。
「羅漢」の意味
仏教で「最高の悟りを身につけた者」を「阿羅漢」と呼び、その略称が定着して羅漢「らかん」と言われるようになりました。
梵語(サンスクリット語)のアルハンの音訳で、釈迦の弟子の最高の階位とされています。
お釈迦様の弟子で特に優れた16人の十六羅漢や釈迦亡き後、経典の編纂に集まった弟子達と言われる五百羅漢などが有名です。
「罹患」と「羅漢」を漢字でみる
「罹」は、訓読みで「かかる」と読み、「患」が、「わずらう」です。
意味的にも「罹病」と同義語です。
「羅」は、「鳥あみ」や「あみで捕える」ことを意味する漢字です。
ですから、網羅(もうら)するという言葉は、魚をとる網(あみ)と鳥をとる羅(あみ)で、もらすことなく、すべて集め、収めることという意味になります。
「漢」は「男子・おとこ」を表す文字で「熱血漢」や「痴漢」といった単語にも使われます。
共通点、異なる点、その他
「罹患」と「羅漢」は、意味としては全く別のもので、間違いようのないものですが、「カン」という共通の音と、「罹」と「羅」というよく似た文字の印象から勘違いを起こしやすい単語です。
勘違いをおこしてしまうのは、「罹」(かかる)という文字が、「?(こころ)+『羅』の略体」の会意形声文字(既存の文字を組み合わせてつくられた文字)であるということが理由のひとつと言えます。
あみにかかった鳥の様子に、心を足すことでわが身に置き換え、病気にかかったり災難に出会うといった状態を表す語としてつくられました。
「罹」が「羅」から生まれているのですから、似ているのは仕方のないことなのです。