「こんにちは」と「こんばんは」は、どちらを用いるかが時間帯で変化する挨拶の言葉です。
一般に、「こんにちは」は昼間、「こんばんは」は夜間の挨拶として知られています。
しかし、境目の時間帯ではお互いの認識差から、一方が「こんにちは」、もう一方は「こんばんは」と別々の言葉で挨拶を交わしてしまう事も起こりえます。
「こんにちは」と「こんばんは」の由来
「こんにちは」は漢字で書けば「今日は」となります。
「こんばんは」は「今晩は」です。
これらの「は」は助詞の「は」です。
つまり本来なら後に言葉が続きます。
例えば、「今日は良い天気ですね」や「今晩は早いお帰りですね」といった具合です。
言葉や文章を省略するのも古くから日本語の性質のひとつで、こうした文章の冒頭部分を用いて「挨拶」という形に進化したのです。
「こんにちは」と「こんばんは」の使い分け
「こんにちは」は昼間の、「こんばんは」は夜間の挨拶という認識が一般的ですし、勿論それで正解です。
より細かく言えば、「今日」とは「本日の日が出ている間」を意味します。
同じように「今晩」は「日が沈んでいる間」です。
なので例えば、午後5時に挨拶する際、それが日の入りの遅い夏なら「こんにちは」、日の入りの早い冬なら「こんばんは」を選ぶ方が正しいという事になります。
「こんにちは」と「こんばんは」に対する「おはよう」の位置
「こんにちは」と「こんばんは」で丸一日をカバーできるので、「おはよう」は本来、非常に限られた時間帯で使える挨拶です。
「おはよう」は漢字で「お早う」、丁寧な言い方では「お早うございます」となります。
これは「(起き出すのが)早いですね」という意味の文章です。
今程夜中に灯りを易々と確保できなかった時代では、日が登れば活動を始め、日が沈めば休むというのが基本的な生活習慣でした。
なので、「起き出すのが早い」というのは、「空が白み始めているがまだ日は登っていない頃」や「日の出と共に」といった時間帯を指しました。
今ではその日最初の挨拶ならば午後の時間帯でも「おはよう」が使われる事があり、これは「社会的に」正しい日本語の使い方とされています。
しかし、「語学的に」正しいのは、「こんにちは」や「こんばんは」である事の方が多いのです。
極端な言語マナーはナンセンス
言語というものは日々変化します。
「語学的」「社会的」「文化的」という三つ巴の主張で論争が起こりますし、「語学的に間違い」だった使い方がそのまま定着して「文化的に正しい」になったりする事もよくあります。
そうした積み重ねで現代の言葉遣いが構築されており、未来に向けてまた少しずつ変化していくのも当然の事です。
新入社員が出社して来て「おはようございます」と挨拶したのに対し、「もうこの時間は「こんにちは」だろう」と注意するような上司は、流石にもういないでしょう。
しかし、言葉の本来の意味や由来を知り、その上で「今」の使われ方を知る事こそが、言語マナーの大切な部分です。