「艦上爆撃機」とは、航空母艦(いわゆる空母)で運用可能な急降下爆撃を主な任務とする爆撃機のことをいます。
これに対し、「艦上攻撃(雷撃)機」とは、航空母艦で運用可能な雷撃(敵艦側面からの魚雷攻撃)と高高度からの水平爆撃を主とする攻撃機のことをいいます。
どちらも、航空母艦で運用可能な軍用機の用途を区別するために用いた言葉(用語)です。
「艦上爆撃機」の意味
「艦上爆撃機」は、航空母艦(いわゆる空母)で運用可能な急降下爆撃を主な任務とする爆撃機です。
第二次世界大戦時において、急降下爆撃は水平爆撃に比べて格段に命中精度が良く、特に海上の敵艦を爆撃するのに最適な戦法として世界中に広がり、旧日本海軍でもこの「艦上爆撃機」が開発されました。
「艦上爆撃機」は基本的に2人乗りであり、前方のパイロットは操縦を担当、後方は爆撃・偵察・報告・後方旋回機銃等を担当します。
「艦上爆撃機」に求められる性能としては、敵機からいち早く逃れる速力、素早い旋回等を行うことが出来る運動性能、そして何よりも爆弾の命中率の高さとなります。
「艦上攻撃機」の意味
「艦上攻撃(雷撃)機」とは、航空母艦で運用可能な雷撃(敵艦側面からの魚雷攻撃)と高高度からの水平爆撃を主とする攻撃機です。
高高度からの水平爆撃は、命中率を高めるために専従の爆撃手が必要となりますので、「艦上攻撃機」は基本的に三人乗り(操縦を担当するパイロットのほか、爆撃手、偵察・報告・後方旋回機銃等を担当する機銃手)となります。
「艦上攻撃機」は、乗員が多く、また魚雷等の搭載量が最優先となっていたことから、「艦上爆撃機」に比べて速度や運動性能は劣っています。
「艦上爆撃機」と「艦上攻撃機」の用法や用例
「艦上爆撃機」は、攻撃範囲に敵艦を捉えたら、すぐさま爆弾を装着して航空母艦から発艦し、敵艦の爆撃に向かいます。
例えば、太平洋戦争の途端となった真珠湾攻撃(1941年12月8日)では、ハワイ近海に集結した旧日本海軍の機動部隊(艦隊)から飛び立った「九十九式艦上爆撃機」が、アメリカ海軍の艦艇等を機に装着した250㎏爆弾で爆撃し、沈没や大破など大きな損害を与えました。
「艦上攻撃(雷撃)機」は、攻撃範囲に敵艦を捉えたら、すぐさま魚雷を装着して航空母艦から発艦し、敵艦の魚雷攻撃に向かいます。
例えば、真珠湾攻撃では、旧日本海軍の機動部隊(艦隊)から飛び立った「九十七式艦上攻撃機」が真珠湾に停泊中のアメリカ海軍の艦艇を機に装着した魚雷で攻撃し、沈没や大破など多くの被害を与えました。
第二次世界大戦の中後期には「艦上攻撃機」に用語が一本化
第二次世界大戦の中後期には、敵艦への攻撃力を高めるため、「艦上爆撃機」に搭載する爆弾の大型化が求められるようになりました。
そのことで、運動性能の向上が求められていた「艦上攻撃(雷撃)機」との要求仕様に差が無くなってきたため、両者を一本化する流れとなり、結果として旧日本海軍では、「艦上爆撃機」と「艦上攻撃(雷撃)機」の機能を兼ね備えた「流星」が開発されました。
(アメリカ海軍では「ADスカイレーダー(A‐1)」、イギリス海軍では「バラクーダ」がこれにあたります。)
以後、ロケット弾や誘導爆弾が開発されたこともあって、アメリカ海軍などでは用語が「艦上攻撃機」に一本化されています。