世界一の生産量で、日本でも親しまれているのがブラジルのコーヒーです。「ホッとする味」のイメージを作りだしたブラジルのコーヒーにはどのような特徴があるのでしょうか?栽培方法や飲み方を交えてご説明します。
目次
コーヒーの栽培状況
言わずと知れた世界第1位のコーヒー生産国、ブラジルのコーヒー栽培の基本情報です。
生産国であり消費国
世界第5位の国土の広さを持つブラジル、ブラジル高原がある中部から南部でコーヒーが栽培されています。標高1000m前後にある台地状の高原地帯で、気候がよく土壌肥えており、栽培に適しています。生産のみならずノルウェー、スイスに次ぐ世界第3位のコーヒー消費国でもあります。
プランテーション
世界で最も生産量が多い理由として挙げられるのが、プランテーションという大規模農園での栽培です。広大な農地で一度にまとまった量を収穫し、出荷しやすいよう幹線道路付近に農園を構えています。
一方で熱帯雨林を伐採して栽培しやすい農地への開墾を繰り返したために、もともといた動植物の生態系を破壊しつつあるという環境問題があるのも事実です。現在では森林の中でコーヒーノキを栽培して、植物と動物との共存をする取り組みが行われています。
リーズナブルな価格
大規模栽培によるおかげで安定した収穫量があり、他の国々と比べてブラジルのコーヒーの価格はリーズナブルです。とりわけブラジル国内では500g400円前後で購入できます。
そんなお求めになりやすい価格のイメージがあるブラジルのコーヒーも、一部はオーガニックやフェアトレード商品として高級豆としてブランド化する動きもあります。
ブラジルコーヒーの銘柄
ブラジルのコーヒーの代表的な銘柄は次の通りです。
ブラジルサントス
南米最大の港町であり世界最大のコーヒー輸出港で、世界の消費量の3分の1が出荷されています。ここから出荷されたコーヒー豆は、「ブラジルサントス」という銘柄名が付きます。
ブラジルサントスはまろやかな甘味とほろ苦さで、まさに日本人が慣れ親しんでいるコーヒーのおいしさです。
イパネマ
ブラジルのコーヒー生産量の半分を占める、ミナスジェライス州にあります。世界最大級の生産施設があり、精製はナチュラル(自然乾燥式)、ウォッシュト(水洗式)どちらにも対応できるほどの規模があります。同じイパネマ農園でも違う精製方法で飲めるため、コーヒー愛飲家注目の銘柄です。
バイア
バイア州はブラジル最北のコーヒー生産地で、ブラジルには珍しく標高700mの高台で栽培されています。他のブラジルコーヒーとは違い、甘さの中にもビターな飲みごたえがあります。量産型のブラジルコーヒーとは一線を課し、スペシャリティコーヒーとしてブランディングを進める銘柄でもあります。
ブラジルコーヒーの格付け・等級とは?
ブラジルのコーヒーは3つの格付けで評価され、銘柄にも「ブラジル サントス No.2 SC13 Strictly Soft」と表示されます。
スクリーンサイズ
スクリーンサイズはコーヒー豆の大きさで、最大SC20~最小SC13の8段階で大きいほど評価が高くなります。
欠点豆の合計点数
形が不揃いの豆は2点、未成熟の豆は5点など欠点豆を減点化して、その合計点で等級を決めます。
- G2 300gに、欠点豆が4点以下
- G3 300gに、欠点豆が8点以下
- G4 300gに、欠点豆が26点以下
- G5 300gに、欠点豆が46点以下
- G6 300gに、欠点豆が86点以下
- G7 300gに、欠点豆が160点以下
- G8 300gに、欠点豆が360点以下
等級にG1がない理由として、「自然の農作物である以上、欠点豆がない(No.1)のはあり得ない」という考えであるためです。
カッピング
不快な刺激をどれだけ感じるかにより等級が決まります。
- ストリクトリーソフト 十分に滑らかで刺激がない味
- ソフト 滑らかで刺激のない味
- ハード 刺激がある味
- リーヨ やや刺激のある味
- リオ 不快な刺激を感じる味
つまりブラジルのコーヒーは、いかに刺激のない、滑らか(マイルド)であることが重要なのです。
ブラジルのコーヒーはどんな味?
前項でご説明の通り、ブラジルのコーヒーはマイルドな味が高品質の印です。
優しい甘み
ブラジルのコーヒーの味を一言で表現するならば、「優しい甘み」です。この甘みが引き立つのは、ふわっと広がる甘い香りとほんのり苦味があるからこそです。もう1杯飲みたくなる、甘味だけではない、脇で支える香りと苦味がブラジルのコーヒーの特徴です。
インスタントコーヒー向き?
世界のコーヒーの3分の1はブラジルで消費されていますが、インスタントコーヒーに限って言えば9割以上はブラジル産が使われています。流通量を確保しやすい点や、酸味が少なくマイルドなので加工性がよいためです。
コロンビアとの違い
ブラジルのコーヒーについてよく質問されるのが、同様に生産量が多い「コロンビアのコーヒー」との違いです。ブラジルの隣国であるにもかかわらず全く地形が異なる山岳地帯で栽培されていて、味は酸味がありながら、甘味の余韻があります。
味は異なるようでも実は優しい甘みは共通している両国のコーヒーは、ブレンドコーヒーとして一緒に配合されることも多いのです。
おすすめの飲み方
ブラジルのコーヒーならではの優しい甘みを引き出す飲み方、ぜひお試し下さい。
使うドリッパーの種類
底が平らなものや台形型のドリッパーなど、ゆっくりポタポタと抽出するドリッパーがおすすめです。時間をかけて丁寧に入れると、コーヒーの甘味や苦みをバランスよく抽出できます。
ミルク・砂糖を入れて
ブラジルのコーヒーは、ミルクや砂糖とも相性がよいです。カップ1杯にひと匙入れるのもよいですし、ブラジル現地ならではたっぷりと入れたコーヒーもおすすめです。
コーヒーの消費量も多いブラジルでは、かつては等級が高いものが輸出用、そして等級が低いコーヒーを自国で消費していました。当時コーヒーをおいしく飲むために、砂糖やミルクを何倍も入れて飲んでいたたのです。たっぷりミルクを入れて飲む「ピンガード」、小さなカップにブラックコーヒーを入れて砂糖をたくさん入れて飲む「カフェジーニョ」という種類があり、今でもよく飲まれます。
ブレンドコーヒー
ブラジルのコーヒーはあっさりとしたコクと甘みです。そのままシングルオリジン(単一銘柄)としても飲まれますが、ブレンドコーヒーのベースにも使われます。コロンビアやグアテマラなどの少し酸味のあるコーヒーと合わせることで、ブラジルの甘味が濃厚になります。ブレンドコーヒーを見つけたら、ぜひ生産国一覧を見て下さい、色々なブレンドコーヒーに「ブラジル」の名前を発見できます。
相性がよい食べ物
地元の食材とともにコーヒーを楽しむブラジルのコーヒーの飲み方とともにご紹介します。
パン
朝にカフェオレ風のビンガード、お昼にカフェジーニョと1日に何度も飲むブラジル人に欠かせないコーヒーのお供は、パンです。朝はサンドイッチ、また「ポンデケージョ」というブラジルのパンも一緒に食べられます。
ポンデケージョはモチモチとした丸い形のチーズパンです。日本にも米粉を使ったパンがありますので、一緒に食べてブラジル現地ならではの組み合わせをお楽しみ下さい。
チョコレート
コーヒーの他に、ブラジルのカカオの生産量は中南米トップクラスです。そのためコーヒーとともにチョコレートを楽しむ習慣があります。トリュフチョコレート「ブリガデイロ」はブラジル定番のお菓子です。
砂糖をたっぷり使ったブリガデイロのように、甘いチョコレートにブラジルコーヒーの優しい甘みの組み合わせは止まらないおいしさです。
いろいろな飲み方が楽しめるコーヒー
ブラックはもちろん、砂糖を入れてもミルクを入れてもおいしいのがブラジルのコーヒーです。うんと甘くしてもコーヒーらしさを損なわないので、苦手な人や初心者におすすめです。