FXは通貨ペアにより為替相場の動きが大きく変わります。
その中でも一番動きの激しい種類として有名なのがポンド円であり、短期間で利益を得ようと考え手を出すトレーダーも多いです。
一方でその値動きから多くのトレーダーを「殺して」きた恐ろしい通貨ペアでもあります。
しかし値動きは激しいと理解しているものの、具体的にどのような特徴があるか分からない方も多いでしょう。
ではポンド円はどのような特徴があり、取引する時はどのようにすればいいでしょうか。
ポンド円とは
ポンド円はイギリスが取り扱っているイギリスポンドと円が組み合わさって構成されている通貨ペアです。
今のポンドは値動きが激しいためイメージは湧きませんが、実は基軸通貨として扱われていた時代もありました。
単なる基軸通貨ではなく今のアメリカドルと同じ立ち位置、他の通貨を購入する時に介して買われる立場となっていたのです。
しかし第二次世界大戦の後は国の金融会議によりポンドからドルへ基軸通貨が移り、ポンドは「単なる通貨の一種」となりました。
基軸通貨の変換にはポンドを取り扱っていたイギリスの経済力が弱まっていたのも原因です。
現在の基軸通貨はドル、ユーロ、円であり基軸通貨ではなくなっているものの実はポンドの取引量は3種類に次いで多くなっています。
そのため値動きからイメージし難いですが取引量が多い通貨同士のペアになっているのです。
取引量が多いのに何故値動きが激しいのか
基本的に為替相場は取引量の多さが値動きに関わってきます。
取引される量が少ない通貨は少ない取引量でも相場の動く力が強くなり、逆に基軸通貨を始めとした取引量の多い通貨は少しの取引では動かないのです。
そうなるとポンドは取引量が多いにも関わらず何故か相場の動きが激しいというおかしな状況になっており、疑問が浮かぶ方もいるでしょう。
実はポンド、取引量こそ多いのですが通貨として流通している量は多くありません。
そのため流通している量に対して取引量が多いため値動きが他の通貨に比べ激しくなってしまうのです。
何故ユーロではなくポンドなのか
ポンドはイギリスが取り扱っている通貨です。
しかしイギリスは現在脱退こそしているものの、かつてはヨーロッパの国としてEUに所属していました。
EUに所属している国の多くはユーロを利用していますが、イギリスはユーロをメインの通貨としていません。
先ほどポンドが基軸通貨だったという話を出しましたが、ユーロではない理由もこのイギリスによる経済問題が関わっています。
今のイギリスを見れば分かるように決して経済力の弱体化は続いたわけではなく基軸通貨がドルへ移った後の時代で回復しました。
経済力が回復すればポンドの価値も上がりますが、そこでイングランド銀行を潰した男と呼ばれるジョージソロスという投資家が出てきます。
ジョージソロスはポンドが上がらないと判断して大量に売りました。
為替相場は買われれば価値が上がり、売られれば下がるため、大量に売られればレートが急激に下がるのです。
イングランド銀行は介入してレートを維持しようとましたが、結局ポンドは上がらないで終わってしまいました。
ユーロは何もなしに採用できるものではなく、取り扱うには条件があったのです。
イギリスではジョージソロスによるポンドの売りが合った結果、条件を満たせずユーロを採用できなかった話になります。
ちなみにメインの通貨こそポンドですが、ユーロは紙くず同然というわけではなく使える場所もあるのです。
しかし一部でしか使えないため、結局イギリスで買い物をする場合はポンドを使った方がいい話になります。
FXにおけるポンド円
値動きの激しさは有名ですが、それ故にスプレッドも気にしなければいけません。
値動きの激しさは通貨ペアで一番
ポンド円に限らずポンドが含まれる通貨ペアは相場の中で最も激しく動きます。
ドル円やユーロ円といった基軸通貨同士の相場と比べればその違いは一目瞭然でしょう。
穏やかな相場が1日で数十銭動くとなれば、ポンド円は1日に円単位で動いてもおかしくない世界です。
1円の動きはFXにおいて大きく、上手くいけば短期間で数十万、数百万の利益が得られます。
その反面利益が大きければ損失も大きくなるものであり、短期間で自分の資金が全てなくなるのもおかしな話ではありません。
そのためポンド円に軽い気持ちで手を出し、地獄を見たトレーダーは多く存在します。
ハイリスクをもたらす値動き故にポンド円は「殺人通貨」や「暴れ馬」と呼ばれているのです。
正に多くのトレーダーを為替相場という市場から「殺してきた」通貨ペアといえます。
クロス円と取引量の関係でスプレッドは広い
ポンド円は円とペアになっているためクロス円に該当する通過ペアです。
クロス円は該当する通貨を購入する前にドルを介して取引するため、余分な取引が行われます。
そのためスプレッドは広く設定されており、ポンドは流通量の少なさもあり基軸通貨同士のユーロドルと比べスプレッドは広いことが多いです。
スプレッドの広さは業者によりますが、中には10銭以上も広く設定しているところもあるでしょう。
しかしポンド円は値動きが激しいためスプレッドが広くても短期取引で利益を得られる土壌ができています。
そのためスプレッドが少し広いぐらいであれば気にならないでしょう。
証拠金が通貨ペアの中で最も多い
レートを見比べれば分かりますが、現在ポンド円は通貨ペアの中で一番レートが高くなっています。
レートの高さは必要な証拠金の金額に関わるため、ポンド円は必要証拠金が通貨ペアの中で最も多いのです。
そのため少ない資金で取引するのは難しく、損失が多く出るのも考えれば多額の資金を用意しなければいけません。
ポンド円が動く要員を理解する
値動きの激しいポンド円ですが、決してでたらめに動いているわけではありません。
ポンドに影響を与える情報も幾つかあり、理解しておかなければ右も左も分からぬまま殺されてしまうでしょう。
ポンド円で取引する際に頭に入れておくべき情報は以下の通りです。
取引はロンドン市場から
値動きの激しいイメージはありますが、ポンド円も常に動いているわけではありません。
他の通貨ペアと同じように時間帯によって動きは変わり、他と比べれば動いてはいるがポンドとしてはそこまで動いていない時もあるのです。
ポンドはイギリスが取り扱う通貨なため、よく動くのはやはりロンドン市場の時間帯となります。
そのためポンド円で取引する時はロンドン市場を中心に相場へ参加することになるでしょう。
ロンドン市場は4時からですが、始まる1時間前の3時から相場に動きが見え始めます。
そのため3時辺りで取引の準備をしておいた方がいいでしょう。
もちろんロンドン市場はイギリスの首都が名前になっているため、イギリスからの経済指標も発表される時間帯です。
ポンド円は値動きが激しいため重要な情報を発表されれば通常以上の変動を見せる可能性が高くなります。
イギリスで何か経済指標が発表されないか確認してから取引を始めましょう。
ポンド円はドルの取引も行われる通貨ペアであるためニューヨーク市場でも動きを見せます。
しかし深夜に入ると動きは収まるため4時から1日が終わるまでの時間帯がポンド円の戦場になるでしょう。
イギリスの情報を確認する
イギリスの通貨なためイギリスに関わる情報に影響を受けるのは当たり前です。
経済指標として重要なのは幾つかあり、最も重要なのはBOEによる政策金利発表となります。
BOEとはイングランド銀行のことでありイギリスの金融関係を担う重要な組織です。
政策金利が重要なのは他の通貨ペアと国でも同じでありポンド円も例外ではありません。
発表される時期は月上旬の水、木辺りであり時間としては8、9時辺りになっています。
ロンドン市場が始まってから少し時間が経った時になるため、意識していないと不意打ちに遭いやすいでしょう。
金利次第で相場の値動きは変わりますが予測できないため、ポンド円の値動きを考えるとリスクが遥かに大きいです。
そのためBOEによる政策金利がある日はポンド円の取引を控えるという選択を取るのもいいでしょう。
BOEによる重要な情報は政策金利だけでなくインフレレポートと呼ばれる書類が公表されます。
時期は一定の間隔を空けて決まっており2、5、8、11月の上旬です。
政策金利に比べると重要度は下がりますが、内容によっては相当な影響を与える情報となっています。
該当する月が始まった時は政策金利と共に警戒しておきましょう。
経済指標以外にもイギリスで気をつけなければいけない情報があります。
イギリスは土地柄故にテロの標的へされることが多いのです。
テロは不安な情報になるため相場にも悪い影響が出てしまいます。
もちろんテロは突然起こるものなため予測できる情報ではありません。
ポンド円で取引する時は「テロで暴落する可能性がある」というのを理解しておきましょう。
ユーロの動向にも気をつける
ユーロを取り扱っていないものの、イギリスはEUに所属しており脱退した今でもヨーロッパの国であるのは変わらないため影響は受けます。
そのためユーロの動きに連動するケースも多いのです。
実際にポンド程ではありませんがユーロも値動きがあり、特にトレンドが発生すると継続しやすい特徴があります。
ポンド円で取引する時はユーロ円かドルのチャートを見て、現在どのような相場になっているかを分析し参考にしましょう。
ポンド円でどう取引していくべきか
ポンド円は一瞬の油断が地獄へ導くハイリスクな通貨ペアです。
トレーダー側は安易な気持ちで取引を考えず、以下の点を踏まえてやっていきましょう。
初心者は手を出さないこと
値動きの関係からポンド円はFXを始めたばかりの初心者におすすめできる通貨ペアではありません。
手を出してしまえばあっという間に殺されてしまう未来が見えるでしょう。
運がよければ一時的に利益は得られますが、トレーダー本人が調子に乗ってしまう可能性があるためストレートに負ける以上の損失を出してしまう危険性が高まります。
ポンド円は値動きが激しい故に単なるテクニカル、ファンダメンタルという取引手法だけでなくトレーダー本人の判断も重要です。
しかし判断力は実際に取引をして経験を積まないと身に付かないものなため、初心者が手を出すと判断できずズルズルと損失へなる可能性が高いでしょう。
FXを始めたばかりのトレーダーはまずポンド円ではなくドル円やユーロドルといった分かりやすくリスクも少ない相場から始めた方がいいです。
基本は短期取引
単純に値動きが激しいだけでなく大きく動いたとしても反転して元の場所へ戻る可能性がよくあるのもポンド円です。
長期取引は長続きするトレンドが明確に確認できないと難しいでしょう。
逆に短期間で大きく動くため短期的に利益を出せる可能性は高いです。
そのためポンド円ではスキャルピングやデイトレードといった短期取引が基本となります。
しかし値動きの激しさ故にスキャルピングは他の通貨ペア以上にトレーダーの瞬間的な判断力が試されるでしょう。
いきなりスキャルピングだとポンド円の動きに振り回される危険性があります。
そのためまずは別の通貨でスキャルピングのやり方に慣れた方がいいです。
スワップ狙いはやめた方がいい
ポンド円のスワップポイントはそこまで低い方ではありません。
そのためスワップポイント狙いで取引もできなくはないですが、まずやめた方がいいでしょう。
スワップポイントを狙った取引はポジションを長期的に保持します。
しかしポンド円は値動きが激しくポジションを保持できない場合が多いでしょう。
相場の状況によっては可能ですがリスクの高い相場で長期的に保持は自ら危険な場所へ立ち殺されに行くようなものです。
スワップポイントを狙う場合はポンド円よりも高く、値動きもそこまで激しくない通貨ペアでやりましょう。
ポンド円で取引するか
ポンド円は地獄を見る一方で大きな値動きによる多額の利益が狙える魅力のある通貨ペアです。
それ故にトレーダーの中にはポン専と呼ばれるポンド円だけでしか取引しない方も存在します。
逆に危険性があるためポンドが関わる通貨ペアは絶対取引しないと決めているトレーダーもいるのです。
どちらを選ぶかはトレーダー本人次第なため、FXを始める時はポンド円にどう対応するか考えておくといいでしょう。