「ワンオペ育児が辛いけど専業主婦だから我慢しないといけない」
「誰かに悩みを相談しても専業主婦だと分かってもらえないかもしれない」
こんなふうに感じていないでしょうか。
専業主婦のワンオペ育児は、辛さを共感してもらいにくく、一人で問題を抱え込んでしまうケースが珍しくありません。
ワンオペ育児は、育児を担当する者の状況によって悩みが変わってくるため、専業主婦だからという理由でひたすら耐え続ける必要はありません。
ワンオペ育児の辛い現状を変えるために、何をどのような考え方でおこなっていけばよいのでしょうか。
今回は、専業主婦のワンオペ育児に焦点をあて、その辛さや対処法を紹介します。
目次
そもそもワンオペ育児とは
ワンオペとは、ワンオペレーションの略で「単一の操作や工程」といった意味があります。
飲食店などにおいて店員が一人しかいない状態を指すことで知られていました。
某飲食チェーンでも、深夜時間帯にアルバイトの店員を一人しか置かず過重労働を押し付けたとして、ブラック企業だと話題になりました。
記憶に新しい方もいらっしゃるでしょう。
こうしたことから派生し、育児をすべて一人でおこなうことを「ワンオペ育児」と呼ばれるようになったのです。
一般的にワンオペ育児がよい意味で使われることはなく、ワンオペ育児は苦しいもの、あるいは家庭が破たん寸前といった状況を示されることが多くなっています。
また、ワンオペ育児を担当するそのほとんどが、母親や妻である女性です。
ワンオペ育児の背景もさまざま
離婚や死別などで一人親家庭であるケースを除けば、通常は育児を夫婦2人でおこなうことができるはずです。
では、一体なぜワンオペ育児に苦しむ女性が多いのでしょうか。
その背景はさまざまです。
たとえば、夫が単身赴任で家を留守にすることが多い場合、妻が育児をするしかありませんので、ワンオペ育児にはなりやすい状況です。
夫が病気やケガで思うように動けない場合も仕方がないといえるかもしれません。
一方で、夫が健康で家にいるにもかかわらず、実質的には妻が一人で担っているケースも多く見られます。
夫は協力したくても仕事が忙しくて帰りが遅くなるなどすれば、夜遅くまでは妻が一人で子どもの面倒を見ることになります。
もちろん、夫が単に非協力的で、「手伝えるのに手伝わない」家庭もあるでしょう。
ワンオペ育児とひとくちに言っても、家庭によって事情が異なります。
専業主婦はワンオペ育児をやるしかないのか?
妻にも兼業主婦と専業主婦の2通りがいます。
兼業主婦の場合は、家庭での家事育児以外に仕事もありますので、ワンオペ育児がハードであることは容易に想像ができます。
一般的にも「大変だね」と言われることが多いかもしれません。
では、専業主婦の場合はどうでしょうか。
専業主婦の場合、仕事はありませんので兼業主婦と比べて楽だと思われてしまうことがあります。
しかし、そもそも専業主婦だからといって兼業主婦よりも育児に慣れているわけではありません。
子どもの世話で寝不足になったり、疲れが限界にきたりすることは同じです。
専業主婦ならではの大変さもあります。
場合によっては、むしろ専業主婦のワンオペ育児の方が、問題が深刻化しやすいことがあります。
専業主婦のワンオペ育児はここが辛い
ここからは、専業主婦のワンオペ育児の辛さを見ていきましょう。
「やって当たり前」と思われ周囲のサポートを得られにくい
専業主婦に対して厳しい意見をお持ちの方は少なくありません。
仕事で多忙を極め、仕事上のストレスを抱え込んでいる人からは、
- 毎日家にいて気楽だろう
- 仕事がないのだから時間がたっぷりあるだろう
- 家事育児が仕事なのだからしっかりやって当然だろう
こんなふうに思われることがあります。
また、我慢が美徳であり、家は女性が守るものと考えられていた時代に子育てを担っていた年配の人からは、
- 我慢が足りない
- 家庭を守るのは嫁の努めだ
- 苦労しているのはやり方が悪いのだろう
などと言われてしまうこともあります。
兼業主婦であれば、家庭内にも職場にもサポートしてくれる人や、味方をしてくれる人がいるかもしれません。
しかし、専業主婦のことを、専業主婦目線で味方してくれる人はほとんどおらず、「やって当たり前」と冷たく突き放されてしまうのです。
また、昔のように近所や家族付き合いが密だった頃には得られた協力も、核家族化が進み、付き合いが希薄になった現代ではそれも難しいです。
どんなに困ってもごく身近な人たちからのサポートを受けられないこと。
これが専業主婦ならではの辛さです。
家事も同時に担うことがほとんどで負担が大きい
ワンオペ育児は「育児」とつくものの、通常は育児だけでなく家事も含めてワンオペになることがほとんどです。
育児は妻が担当するけれど、家事の大半を夫が担ってくれる家庭であれば、そもそも大変なことがあっても乗り越えられる妻が多いでしょう。
専業主婦は出産前から専業主婦になっている流れから、家事を妻以外がおこなう選択肢を思い浮かべない家庭が多いものです。
場合によっては妻ひとりあたりの負担は、兼業主婦よりも専業主婦のワンオペの方が多くなってしまうことすらあります。
「仕事をしていないからひとりで全部やるべき」というのは間違いで、トータルで見たときの負担がどの程度あるのかは家庭ごとに異なるのです。
ストレス発散機会が少なく気持ちが落ち込みやすくなる
専業主婦の育児は四六時中子どもと一緒にいますので、自分だけの時間を持つことがほとんどありません。
子どもが小さいうちは外出も一苦労なので、どうしても家の中に閉じこもりがちになります。
専業主婦であることで負い目を感じる、あるいは家計費の問題もあり、友人たちと外食や買い物にでかけてお金を使うことも簡単ではありません。
もちろん兼業主婦の場合、家事、育児、仕事と3つを両立させる必要があるためかなりハードです。
フルタイムで働き、家事育児について夫の協力を得られない兼業主婦が、肉体的にはやはり一番大変だといえるでしょう。
しかし、外に働きにでることで保育園などのサポートも受けるほか、職場のママ仲間に相談することなどもできるため、精神的には救われる点も多くなります。
専業主婦の場合はストレス発散の機会が少なくなり、気持ちが落ち込みやすくなっていきます。
ワンオペ育児に疲れ果てていても気分を上げることができず、誰にも相談できず、メンタルの不調に陥ってしまう人も大勢います。
うまくできない自分を責めてしまいがち
「自分は専業主婦をさせてもらい、夫の稼ぎで食べている」
専業主婦はこんな感情から、自分自身で何でも完璧にやろうとしてしまいます。
兼業主婦であれば「わたしも働いているのだからあなたも協力して!」と強くいうことができるかもしれませんが、専業主婦は引け目を感じてしまうことが多いものです。
しかし、家事だけならまだしも、育児は思うようにいかないことの連続です。
子どもは一人一人違いますので、本や情報誌に書かれていることが当てはまるとも限りません。
そのたびに、うまくできない自分を責め、自己否定感が強くなってしまいます。
子どもが泣いている場面を見て、「おいおい、お前がそばにいるのになんで泣いてるんだ?」など、夫から心無いひとことを投げかけられて傷ついてしまう人も珍しくありません。
専業主婦がワンオペ育児を頑張り過ぎるとどうなる?
「ワンオペ育児は辛いけど、わたしは専業主婦なのだから頑張らなくては」
このように思っている方は、少し肩の力を抜いてください。
専業主婦であることを理由に、ワンオペ育児を我慢してする必要はないのです。
ワンオペ育児になると自分が辛いこと以外にも弊害が生まれてしまいます。
ここからは、専業主婦がワンオペ育児を頑張り過ぎることのデメリットを紹介します。
子どもへのしつけや教育が偏る
子育てに正解はありませんが、一人で育児を担うと、どうしてもしつけや教育面で偏りが生じてしまいます。
専業主婦の場合は、自分の子育てが世間一般的に見てどうなのかを誰かと比べる術が少ないため、甘やかしすぎ、厳しすぎといったふうに極端になっても気がつかないものです。
少なくとも夫が育児に参加してくれれば、母親とは違う立場からしつけや教育をおこなってくれ、子どもに選択肢が生まれ、多角的な考え方ができる子どもになるでしょう。
また、幼少期に大勢の人から愛情をもらった子どもの方が、大人になったときに社会への適応力が高く、人間関係においても苦労が少ないといわれることがあります。
幼少期に愛情の不足を感じていた子どもは、自分が愛される自信をもてず、常に人の顔色をうかがうような大人になることもあるようです。
両親が健在であり、夫を子育てに参加させることが可能な状況であれば、子どもの将来のためにも、ワンオペ育児にならない方がよいと考えることができます。
ワンオペ育児から脱却すべきなのは、疲れてしまう母親のためでもあり、子どものためでもあるのです。
何もできない夫が生まれる
ワンオペ育児を頑張る妻たちからは「夫を頼ってもどうせ何もできない」「夫は戦力外」といった声が聞かれます。
確かに、ストレスが溜まって苦しい状況の妻にとって、おろおろしているだけの夫は本当に役立たずに思えるかもしれません。
しかし、夫にとっても通常は初めての子育てで慣れないことが多いものです。
最初のうちは何もできなくて当然なので、一緒に覚えていくように仕向けていきましょう。
専業主婦だから自分が一人で頑張らなくてはという思いは、何もできない夫を育てることになり、夫に親としての自覚を持たせないことにもつながりかねません。
「あなたもこの子の親なのだから、きちんと子育てに向き合ってほしい」と、率直に言葉にして伝えましょう。
「わたしだって疲れているからあなたも手伝って」と言うのでは逆効果です。
育児は家事のように分業できるものではなく、夫婦二人でおこなうものであり、夫自身にとって大切なことなのだと諭すのです。
夫への信頼感がなくなり離婚する人も
女性は元来我慢強い生き物です。
加えて、出産という一大イベントを乗り切ったことで、母親としての強さ、忍耐力が備わっています。
それ自体は素晴らしいことなのですが、強いがゆえに夫の弱さが気になるようにもなっていきます。
夫を頼ろうと相談しても何もしてもらえないと、「母であるわたしが何とかしなくては」と、自分の力だけで何とかしようと奮起します。
妻が強くなればなるほど、夫は自身の無力感を強め、距離を置くようになっていくでしょう。
妻側は、夫を頼ることを忘れ、結果として夫への信頼もなくなっていきます。
ワンオペ育児を経て離婚する家庭は珍しくありません。
ワンオペ育児を頑張り過ぎることで家庭崩壊につながってしまうリスクがあるのです。
妻はどんなに強くなっても、夫を頼ることを忘れないようにしましょう。
「そぶり」でもよいのです。
夫は妻から頼りにされることが喜びなので、上手に手のひらで転がすことが家庭を守るひとつの方法です。
専業主婦のワンオペ育児対策
ワンオペ育児に苦しんでいる専業主婦の方に向けて、少しでも状況を改善するための方法を紹介します。
すべて一気にやる必要はありませんし、家庭によってあう、あわないもあるでしょう。
できることからでよいので、試してみてはいかがでしょうか。
夫に理解と協力を要求する
ワンオペ育児を改善するためには、まずは夫に理解してもらう必要があります。
夫は、妻が困っていることすら気がつかないものです。
妻としては「夫婦なのだから気づいて当然」と思うかもしれませんが、男性は総じて「察しない」性質があります。
一方で、夫は妻から感情的に不満をぶつけられても、具体的にどうすればよいのかが分からなく困惑します。
妻は夫に対し、何が、どんなふうに大変なのかを、論理立てて伝える工夫も必要です。
ワンオペ育児で悩む妻は、そもそも夫に指示をだしていない人が少なくありません。
専業主婦であることに引け目を感じることでなかなか言い出せないかもしれませんが、夫は言わなければ分からないことを理解しましょう。
便利ツールを活用する
専業主婦の方は、「家事は自分の仕事」と強く思うかもしれません。
しかし、家事の負担を減らすだけで結局は家事育児の総量を減らすことになり、育児にも余裕が生まれます。
たとえば便利家電。
- 全自動洗濯機
- 食器洗浄機
- 掃除ロボット
- 自動調理鍋
- スチームアイロン
- 布団乾燥機
このように色々な種類の家電があります。
家電量販店やネットからは時短家電の情報を多数得ることができますので、息抜きがてらチェックしてみてはいかがでしょうか。
月に数回だけ、家事代行サービスを頼むこともよいでしょう。
ベビーシッターを利用して少しだけ育児から離れることも方法です。
手を抜くところを抜く
専業主婦だと他の立場の人より時間や気持ちがあるという考え方を捨てましょう。
現状がワンオペ育児だと感じるのであれば、それはすでに時間や気持ちの余裕がなくなっている証拠です。
自分が担うべきだと感じている家事や用事について、手を抜けるところがあるはずです。
たとえば掃除。
育児を放棄することはできませんが、数日間掃除をしなくてもまったく問題はありません。
食事も毎日手作りで、おかずは何品以上で、と自分を縛ることはやめましょう。
たまには外食や惣菜を利用してもよいのです。
子どもの食事でも、メーカーが味や健康面を考慮して作ったよい商品が売られています。
疲れたときはそうしたものを上手く取り入れて適度に息抜きしましょう。
専業主婦だから家事育児をすべて完璧にこなそうと思うことはありません。
それこそが自分を苦しめる要因となり、夫や子どもに当たってしまう、疲れて体調を崩してしまうなど、まわりまわってよくない結果につながります。
実親や兄弟姉妹を頼ることも検討
誰でも使えるわけではありませんが、実親を頼ることも選択肢のひとつです。
子どもを連れて数日でも実家に帰れば、両親は喜んで受け入れてくれないでしょうか。
夫には「精神的に疲れているから少し実家に帰らせてほしい」と正直に伝えることで、夫にことの深刻さも伝わります。
実家が遠く、預けに行くことが大変なら、お願いして来てもらうことも検討しましょう。
実の娘が心底困っていると聞けば、少なからず手を差し伸べようとしてくれる親は多くいるはずです。
義理の両親も理解がある家庭であれば頼ってみてもよいでしょう。
大人になったときは兄弟姉妹も頼りになるものです。
兄弟姉妹も家事育児に追われて大変であれば難しいかもしれませんが、近年は未婚率が上昇していますので、兄弟姉妹が独身というケースもよくあります。
兄弟姉妹は、甥姪にあたる子どもの世話を喜んで受けてくれる人も少なくないのではないでしょうか。
不満を発散する
「専業主婦の気持ちは誰にも分かってもらえない」と不満を抱え込んでいないでしょうか。
特に女性は人に話を聞いてもらうことでストレス発散につながりやすいので、適度に吐き出すことを意識することが大切です。
不満を聞いてもらう相手は夫が選択肢のひとつですが、夫の対応によっては、余計にストレスが溜まってしまうことがあります。
ため息でもつきながら「俺は仕事で忙しいんだから…」とでも言われてしまえば、本当に辛いでしょう。
そのときは、実際に子育てを経験し、共感してくれるママに話を聞いてもらうこともよい方法です。
できれば専業主婦として奮闘した経験がある人か、経験していなくても相手の立場に立ってものごとを考えてくれる人がよいでしょう。
ノートに不満を書き出すだけでも違います。
思っているだけではなく、実際に字として視覚的に吐き出すことで、心の負担が減ることがあります。
困ったら相談できる先は山ほどあると知る
夫やママ友など、不満を聞いてもらう人がいなくても打つ手はあります。
少子化の日本では育児支援が急務となっているため、困ったら相談できる先は数多くあるのです。
【各自治体の子育て相談】
各自治体では、子育てに悩む方のための相談を受けつけています。
自治体なので相談料がかかることはありません。
「自治体名 子育ての悩み」などと検索してみると多数の相談先がヒットします。
以下、東京都の一例です。
- 子どもの虐待防止センター相談窓口
- 母と子の健康相談室
- 都立小児総合医療センター「こころの電話相談室」
- 子ども家庭支援センター(育ち愛ほっと館)
自治体によっては区立保育園全園で子育てに関する相談を受けつけていたり、民生委員や児童委員と呼ばれる人たちが子どもを巡るさまざまな問題について相談に乗ったりしています。
自治体では子育て支援をおこなっていることが多いので、お住まいの自治体のHPなどから探してみてもよいでしょう。
【エンゼル110番】
森永乳業がおこなっている育児の無料電話相談です。
妊娠中から就学前の子どもがいる人を対象に30分程度の相談ができます。
HPにはよくある相談や、パパ応援コーナーなどもありますので、夫婦で一緒に見ることもできます。
http://www.angel110.jp/column/2017/12/post-108.html
【ファミリーサポート】
ファミリーサポートとは、自治体が運営する、育児や介護を「助けたい人」「助けてもらいたい人」が会員となり、助け合う組織です。
たとえば、買い物や冠婚葬祭など子どもを一時的に預かってほしいときに預かってくれたり、保育所までの送迎を代行したりといったサポートを受けられます。
サポートを受けたい場合は、ファミリーサポートセンターに申し込みをすればよく、特別な資格などは不要です。
http://www.jaaww.or.jp/service/family_support/
現代の子育ては、昔のように家庭内でなんとかできる問題ではありません。
そのため、こうした外部の相談先やサポート先が存在しますが、親自身が頼ろうとしなければ、制度が活用されないのです。
外部に相談先やサポート先が多数あることを知り、実際にそれらを巻き込んでうまく子育てをするようにしましょう。
保育園に預けられるなら仕事も検討
子どもの年齢や地域の保育園の状況にもよりますが、保育園に預けられるようになったら専業主婦をやめて働きにでることを検討することも方法です。
「ワンオペ育児に加えて仕事までしたらどうなるの?」と不安に感じる方がいるかもしれませんが、育児から離れて社会と接する時間が増えることで、精神的に安心できる人も少なくありません。
家事育児で忙しくしている兼業主婦の中には「仕事中が唯一の息抜き」と笑う人もいるほどです。
仕事にでるべきか否かは、ご自身の性格や、夫の考え方などによっても変わってきますので、夫婦でよく話し合うようにしましょう。
最後に
いかがでしたか?今回は専業主婦のワンオペ育児をテーマに、辛い点や対処法を中心に紹介しました。
育児はそれ単独で大変な面が多いものなので、ワンオペ育児と専業主婦という立場を一緒にしないことが大切です。
専業主婦だろうと兼業主婦だろうと育児は大変。
紛れもないこの事実をしっかり受け止め、周囲のサポートや便利なツールを利用することを考えてみましょう。