かつては点数のみで合格が決まっていた大学入試。
しかし近年では、高校での生活や態度を選考基準にする様々な形式の推薦入試やAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれる、学力を選考基準としない入試形態を導入する大学が大半となりました。
子どもの不登校経験がマイナスに作用するのではないかと心配される親御様も多いでしょう。
残念ながら、不登校経験がマイナス要素となってしまう場合も存在します。
特に高校での様子がそのまま合否に直結するAO入試の場合、本人がいかに良い子であっても不登校を理由に難易度が高くなる傾向が見られます。
しかし、その子が「過去に不登校であった」のか、「今も不登校が続いている」のかによって、状況は大きく変わってきます。
例えば1年時に不登校を経験するも2年時以降に不登校状態から脱し、その後は問題なく学校生活を遅れている子どもの場合ですと、そこまで問題が大きくならないケースが大半です。むしろ推薦入試を勧めてくれる場合も多いと思われます。
というのも、高等学校、特に進学校の場合は基本的に大学への合格率を上げたいと考えていますので、態度にかなり難がある子どもでなければ大学入試を止めるようなことはまずありません。
場合によっては、学校として特定の大学へその子どもを直に推薦する『指定校推薦』を利用できる可能性が高まります。
指定校推薦は原則として合格確定ですから、利用できれば子どもの気持ちはぐっと楽になるでしょう。
不登校回復後に大きな問題を起こしておらず、他にその学校を希望する生徒がおらず、さらに各大学が定めている評定平均値などの規定を満たしていれば認められる場合も多いと思われます。言ってみるだけの価値はあるはずです。
ただし、高校としては大学側からその後の生徒の受け入れを丸ごと拒否されるような事態は当然ながら避けたいものですので、極端に出席日数が少ない場合は簡単に首を縦には振ってくれない場合もあります。
そもそも指定校推薦の場合は欠席日数の上限を定めている学校も少なくはないという現実がありますので、あまり期待しない方が良いかもしれません。
そして推薦入試を利用する時、最大の問題となるのは「現在も不登校が続いている」ケースです。この場合は残念ながら、指定校推薦は使えないものと考えた方が良いでしょう。
また、不登校期間が長くなれば長くなるほど、その他の推薦入試を利用することも難しくなっていきます。
推薦入試には他にも「一般公募推薦」と「AO入試」などがありますが、どちらも学校での様子が合否に関わります。
どちらも自分で自分自身を推薦する、という形での推薦ではありますが、学校が調書を作成し、それを大学に送るという形式を取ります。
欠席日数を伏せて入試を受けることはまず不可能ですので、現在も不登校が続いている場合やあまりにも不登校期間が長かった場合、合格の可能性はどうしても非常に低いものとなってしまいます。
というのも、近年は「大学生の不登校」も問題となっており、大学側もその可能性を持つ生徒の入学を危惧する傾向が見られるためです。
学力という絶対的なもので合否を決められない以上は入学後にしっかりと大学に通い、優秀な成績を出してくれそうだと期待できる生徒を優先してしまうことは当然といっても過言ではありません。
不登校生徒が必ずしも大学で不登校になると決まっているわけではありませんし、高校で皆勤賞を取っていたような生徒が大学で不登校になることもあります。
ですが、大学も少ない判断材料で入学生徒を決めなければならないため、不登校経験はどうしてもマイナスに作用する場合が多くなってしまうのです。
こればかりはどうすることもできませんし、学校に「何とかしろ」と訴えたところで時間の無駄になってしまうと思います。
ですから、不登校生徒さんの場合は原則として一般入試やセンター利用入試を利用した大学進学を目指すべきでしょう。
一般入試、センター利用入試の場合は基本的に本人の学力のみが選考基準となりますので、不登校経験のことはあまり気にせずとも大丈夫でしょう。
良くも悪くも実力主義ですから、学校に皆勤で通っていたような子が不合格になって、不登校だった子が合格することだって勿論あります。
むしろ、比較的よくあることなのではないでしょうか。ですからまだ、大学進学を諦めなくて良いのです。
加えて、万が一高校を卒業できなかった場合も高卒認定(旧・大検)を取得することが出来れば一般入試、センター利用入試を受けることが可能です。
高卒認定取得も極端に難しいものではありませんので、不登校が続き、高校卒業が怪しくなっていても「大学に行けなくなるよ!」と神経質にならずに「こんな方法もあるよ」と子どもに掛かるプレッシャーを取り除いてあげるのも一つの手です。
東京大学や京都大学といった旧七帝大など難関大学への合格を目指す場合は不登校生徒でなくとも相当な努力を必要としますが、そうではなく、さらに特定の大学に拘っているということもなく、ただ「大学にいきたい」、「この学問を極めたい」とだけ考えている場合は子どもが得意な科目を利用できる大学を探すのもひとつの手です。
実は幅広い科目を必須とする大学はそれほど多くはなく、偏差値の高い大学でも文系科目だけ、理系科目だけ、三科目だけ、といった少ない科目数で受験が可能になる場合もあります。その科目が出来れば高校への出席日数は関係ありません。
「不登校になってしまったから」、「学校に行っていないから」といって行きたい大学・学科をいきなり諦めるのではなく、まずは調べてみて下さい。
そして何とか出来る道が見つかるようであれば、特定の科目を極めることに今後の時間を使っていきましょう。
高校に行っていない分、授業についていけなくて分からなくなってしまった科目も出てくると思います。
その場合は塾に行ったり通信教育を利用したりと何らかの努力が必要になります。
不登校から脱している場合は高校の先生に教えてもらうことも勿論出来るはずですから、自発的に行動して分からない部分を減らし、少しでも合格の可能性を上げていきましょう。
いずれの入試形態においても、どの大学を選ぶのかにしても、不登校日数によっては何らかの形で合否に関わることも勿論あります。ですが、結局は本人次第なのです。
何もせずに大学に合格出来る筈がないのは、皆勤賞を取るような子どもも不登校になった子どもも同じなのです。
子どもが大学への入学を望むのであれば、それ相応の努力を怠ることのないように激励しつつ、入試を終えるその時まで暖かく見守ってあげて下さい。
前述の通り、高校で不登校だったからといって大学でも躓くものとは限りません。むしろ、大学は皆勤で通うことができたというケースも多々あります。大学進学が子どもの未来を切り開く場合もあります。
もし、不登校中、不登校経験のある子どもに「大学に行きたい」と言われても、頭ごなしに「高校に通えなかったのに大学に通えるわけがない」と言わずにとりあえずは受け止めて、その後、本当に大学進学が可能かどうかを一緒に考えてあげられるのが理想ですね。
最近は通信制の大学というものも出てきていますので、引きこもりがちな子どもでもまだ可能性はあります。大学進学への可能性はきっと、想像以上に大きいものです。
あまり悲観的にならずに、可能性を求め、まずは調べることから初めてみてください。