子供が不登校になってしまったら、親は仕事をやめるべきなのか?

男は外で仕事、女は家を守る……という時代は既に終わり、今では共働き夫婦が大半を占めるようになりました。両親どちらも仕事で家を空けていることが多い時代ですね。

それが正しいかどうかは、こんなところで話すべき議題ではありません。時代の流れでそうなっているのですから、話したところでどうにもならないとも言えます。

ですが、この両親共働き状態。不登校の子どもを抱えてしまうと頭を悩ませることとなる重大な問題にもなり得ます。

子どもが不登校になると多くの親、特に母親は「仕事を辞めて子どもの傍にいるべきではないのか」と考え込んでしまうのではないでしょうか。

時には、配偶者や周囲から強く「仕事を辞めて、常に子どもの傍にいて学校復帰のサポートするべき」だと言われ、困ってしまうこともあると思います。仕事を辞めた場合に家計が回るか回らないかの問題ではありません。

この問題、どのような家庭であっても、一度は悩む難題です。子どもを心配する親の気持ちがあるからこそ、悩んでしまうのです。

だからこそ、辞められない理由がある場合は「子どもの傍にいられないなんて」と自分を責めてしまうかもしれません。仕事に身が入らなくなってしまうかもしれません……が、それではいけないのです。

実は大半の場合において、仕事は「辞めるべきではない」という答えが出てきます。何故なら、回りまわって子どもに悪影響を及ぼすことが多々あるためです。

勿論、例外もありますが、その例外パターンにおいても、「親の離職」というものはあまりよくない方向に作用することが多いのです。

理由としては、

  • 金銭的な親の負担が増し、あらゆる意味で余裕が無くなってしまう
  • 親の離職が結果的に子どもの負担を倍増させる
  • 子どもが親に反抗する可能性が高まってしまう

以下、それぞれの項目について、具体的に取り上げていきたいと思います。

金銭的な親の負担が増し、あらゆる意味で余裕が無くなってしまう

ものすごくシンプルかつ分かりやすい問題点が金銭問題です。

人間、生きていくためにはどうしてもお金が必要ですので、「子どもよりお金を優先するなんて」と考えてはいけません。1円を笑う者は1円に泣くのです。

大黒柱になっている片親の給料がとても良く、もう片方の親はあまり働く必要が無いけれど働いていた、などというイレギュラーが発生している家庭ならこの問題は発生しませんが、そんな家庭はほとんど無いと思います。働かなくて良いのなら最初から働かない人の方が多い筈です。

子どものためにと仕事を辞めて、金銭的に厳しくなってしまった時。今までは出来ていた贅沢が出来なくなってしまった時。親も善人ではありませんから、苦しい状況に直面すると、どうしても悪い考えが頭に浮かんでくるものです。

恐らく「生活はこんなに苦しいのに不登校から立ち直ってくれない」、「いつまでこんな生活が続くんだろう」、「いい加減にしてくれ、学校に行ってくれ」などと考えてしまうでしょう。

親として失格だとか、そういう問題ではありません。考えて当然のことなのです。そしてそれは大抵の場合、子どもの方も理解しているものです。

こういったマイナスな感情を胸の内に秘め、表に出さないまま過ごすことが出来るのならばまだ良いのですが、ハッキリ口にしてしまったり、イライラと当たり散らすような行動に出てしまったりと、言葉や態度に表してしまえば、その後はろくなことになりません。

ただでさえ、不登校の子どもへの対応は根気が必要なものなのです。どんな裕福な家庭であっても、先の見えない状況に置かれてしまうことを忘れてはいけません。

不登校の子どもに対し、高圧的・威圧的な態度は厳禁であるともいえます。ですが人間誰しも感情が高ぶってしまうことがあるのですから、感情を爆発させてしまうかもしれない懸念材料は少しでも減らしておくべきでしょう。

子どもがいなくとも「金銭問題」は生活に付き纏うシビアな問題です。

「こんなことで……」と思わずに、余裕をもって子どもと向き合えるように、その時の感情に突き動かされて仕事を辞めてしまうのはあまり良い手とはいえないのです。

親の離職が結果的に子どもの負担を倍増させる

不登校になった途端に親が仕事を辞めたとなれば、流石に子どもも「自分のせいだ」と気付くものです。

直後でなくとも、実際は無関係でも、子どもはきっと自分のせいだと思い込むことでしょう。それもそのはず、不登校の子どもは大抵の場合、自尊心を大きく損ねてしまっているからです。

大げさでもなんでもなく、そういった子どもはまるで連想ゲームのように悲観的な考えにたどり着いてしまいます。

「自分が不登校になったから、親が仕事を辞めてしまった」という事実が、「自分さえいなければこんなことにはならなかった」となり、さらに「早く学校に行かなければいけないのに、行けない」と過剰に焦りを募らせることとなり、最終的には「自分はどうしようもない奴だ」と考えてしまうのです。

元々ナーバスになっているところに、この追撃はあまりにも残酷です。親御様は「子どものため」を思って離職を選択すると思いますが、それが必ずしも子どものためにはならないということです。

ただし例外的に「常に見ておかなければ死んでしまいそう」な時は離職も視野に入ってくることでしょう。

仕事に行っている間に子どもが死んでいた、などという事態になれば「後悔」という言葉では言い表せない程の最悪な結果となってしまいます。

ですが、こちらも先程のマイナス思考な連想ゲームが開始されるのは間違いありませんから、いきなり離職するのではなく、どうにか子どもをサポート出来る体制を家庭内や外部の力を借りて構成する、もしくは辞めるのではなく時短勤務に切り替えることによって子どもの負担を少しでも減らしていくことが大事でしょうね。

子どもが親に反抗する可能性が高まってしまう

「自分のせいで親が……」となるタイプの子どもとは対極のパターンです。親が仕事に行かず、傍にいることによって「なんでいつまでもいるんだよ!」と親の存在にイライラしてしまうのです。

子どもが不登校と同時に反抗期に入っていると、こうなる可能性が非常に高くなります。前者の責任を感じて落ち込むタイプの子どもも、不登校期間が長引けば長引くほど、このタイプに切り替わっていくこともあるでしょう。

「お前のために辞めたんだ、一緒にいるんだ」というのは、結局のところ親のエゴなのです。よく嫁から夫への感情を表す言葉として「亭主元気で留守が良い」などと昔から言われていますが、これに近いところがあります。

この状態になってしまえば、子どものために、だとか、不登校が治るまで、だとか、そういった理由は全く通らないのです。酷い話だと思われるかもしれませんが、反抗期は親から自立するために精神的に親を拒絶してしまう時期なのです。こればかりはどうしようもありません。

どんな相手でも、ずっと一緒にいると飽きてしまい、嫌な部分ばかりが目に付くようになってしまいます。この件はそれに近いところがあるのではないかと思います。

また、子どものために仕事を辞めてしまった親御様の中には、よく「不登校が治らないから」とピリピリした空気をまとわせている方もいらっしゃいますが、これまた良くない傾向です。

子どもの方が爆発することはなくとも、いつ爆発するか分からない親とずっと一緒にいるというのは、控えめに言っても辛いものです。親にひたすら気を使い、言いたいことは全く言えないまま、自分の殻の中に閉じこもってしまうかもしれません。そうなってしまえば不登校改善は尚更遠のいてしまいます。

不登校の子どもは一人で居たがっていることも多いのです。そんな子どもが一人になれる時間を削ってしまうのは、決して良策とは言い難いものです。

親御様目線でも、子どもの傍にずっといれば精神を病んでしまう可能性が高いです。気分転換のためにも、外に確実に出る用事を残すためにも、仕事を辞めずに会社に出続けることが大切です。

よりよい親子作りのために

子どものためにと仕事を辞めてしまうと、高確率で良くない方向に話が進んでしまう、ということがお分かり頂けたでしょうか。

とはいえ、ずっと家にいる子どもを放置して出勤するというのもなかなか不安になるものです。それでも、まるで監視をするように子どもの傍に居続けるというのは、双方にとってあまり良くありません。

ずっと傍にいなくとも、子どもはただ親から「いつでも味方でいるよ」、「今はゆっくり休んでね」という言葉を貰えるだけで心強くいられることでしょう。できることなら心からの、100パーセントの気持ちで優しい言葉掛けをするのが理想です。

反抗期に入っていると素直に「ありがとう」とは言ってくれないかもしれませんが、それでも気持ちは伝わっているはずです。言葉と態度だけで十分なのです。

もし、この記事を読んだ方の中に「子どものために仕事を辞めるべきだ」と考えている方がいらっしゃいましたら、ひと呼吸置いてよく考えてみて欲しいのです。

お金の問題が発生してしまわないか、子どもに苦痛を与える結果にならないか、それは一方的なエゴではないか、などなど。仕事を辞める前に、考えるべきことは沢山あります。

基本的には、間違えればやり直せば良いのです。しかし、一度仕事を辞めてしまえば、復帰はなかなかに困難です。

同じ職場に戻れるとは限らず、もう元には戻れない可能性も高いのです。そうなった時、子どものせいにしてしまうようなことがあってはならないのです。

不登校だからといって、極端な特別扱いは必要ありません。

本当に子どものためになるのはどのようなことか。

考えることは本当に沢山ありますが、真摯に自分に向き合ってくれる親のことを、子どもはしっかり見ているものです。

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