精神的な強さ、弱さとはどうやって測るのでしょう。
精神的に弱い、と聞くとあなたはどのような弱さを思い浮かべますか。
ストレスに弱い…。
すぐに泣いてしまう…。
他人からの悪意に耐性がない…。
こういった内容を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
どれも確かに精神的な弱さではありますが、どちらかというと対人ストレスへの耐性の有無が主に論じられています。
現代はストレス社会ですから、人間関係でのストレスに耐えられないということは精神的に弱いとも言えますが、では精神的に弱いとは対人ストレスに対して弱いことだけを指すのでしょうか。
対人ストレスに耐えられる精神が、本当に強い精神なのでしょうか、些細な人間関係のすれ違いで逐一傷つくようでは、精神的に弱いのでしょうか。
そうではありません、対人ストレス耐性だけでは測れない精神的な強さも存在します。
意志の強さ、粘り強さ、逆境で踏ん張る力、そうした尺度ではかれるものも精神的な強さですよね。
ただ、それぞれ「与えられるストレスの質」が異なっている点に着目します。
現代社会では対人関係のストレスに悩まない人ほど精神的に強い、と称されますから、対人ストレスに弱い人は自分のことを精神的に弱い、と思ってしまうかもしれません。
それは誤りだということを先に述べておきます。
この記事では、自分のことを精神的に弱いと考えている方に、自分の隠された強さに気づくヒントを解説します。
きっとあなたにも勇気を与えられる内容になっていますので、もし精神的に弱い自負のある方は最後までお付き合いください。
精神的な強さ、弱さとは
自分の精神を弱いと感じるときは、具体的に自分がどうなったときでしょうか。
やはり感情が昂ぶり、マイナスの感情に押しつぶされてしまったり、泣いてしまったり、諦めてしまったときでしょうか。
もしくは、激昂して人に当たったり、ものに当たってしまう人もいるでしょう、あとで後悔して、自分の精神的な弱さに気づくことは多くあると思います。
いずれの場合であっても、自身の感情に抑えが効かなくなったとき、人は行動を抑制できなくなります。
理性でコントロールできなくなってしまった自分を俯瞰し、あとで「精神的に弱い」と自分を責めた経験があなたにもあるのではないでしょうか。
ここで肝心なことはひとつ、行動や感情を制御できなくなるまで、人は自分のことを精神的に弱いとは思わないということです。
言い換えれば、いつでも自分の行動や感情をコントロールしていれば自分のことを精神的に弱いと思わずに済むのです。
他人について考えてみても、やはりストレスに左右されず自分の感情をコントロールしている人は穏やかで、落ち着いている印象を受けます。
そういう方を精神的に強い、と捉えますよね。
とはいっても、自分の体とはいえ抑えが効かなくなることはありますし、感情をコントロールすることなんて不可能に近い、と普通は思います。
確かに、感情に左右されながら生きているだけでは難しいでしょう。
そう、感情に左右されずに生きる方法がないわけではありません。
ここは心理学の力を借りることにしましょう。
ストレスを管理、緩和するための方法
ストレスとなる出来事を世の中から完全に排除するか、自分が全くストレスを感じなくなれば、精神的な弱さは消え去ります。
しかしそんな話は現実的ではありませんので、折衷案として、ストレスと「上手く付き合っていく」生き方を提案させていただきます。
そのためには、まず今のように「ストレスに耐えられない自分は弱い」などと思わないことです、その癖を治すところから初めていきましょう。
人がストレスを感じる背景には生存本能が密接に関係しています。
ストレスを感じるおかげで、私達は今日まで生き延びていられるといえますから、ストレスをなくすのではなく、自分の支配下に置くことにしましょう。
そのための方法を二つ、心理療法をもとにご紹介します。
ストレスを支配下に置く「系統的脱感作法」
認知行動療法の一つとして高い成果を挙げているのがこの「系統的脱感作法」です。
どのような手法かというと
・自分がストレスを感じるものや状況をリストアップする(不安階層表)
・その中でよりストレスの弱いものから強いものまでランキング形式で並べていく
・身体を硬直させて、リラックスする「筋弛緩法」を習得する
・はじめに作成した不安階層表の弱いものから順に触れていき、ストレスを感じた時点で筋弛緩法を行い身体をリラックスさせ、もう一度、一番弱いところから初める
このような流れで不安、ストレスを克服することで、ストレスを支配下におくことを目的としたものです。
自分でこれを行うには少し難易度が高いのですが、例えば筋弛緩法だけは自分で訓練しておき、実際にストレス下に置かれたとき、緊張する自分の身体を弛緩させることでリラックスしストレスを軽減することはできます。
また、ストレスを紙に書き出すだけでも自分の不安を可視化できますから、不安階層表を作成するだけでも精神の安定には繋がります。
セルフケア方法としてぜひ取得してほしい「自律訓練法」
ドイツの医師シュルツが提唱した手法です、上記の系統的脱感作法とは別物ですが、こちらも精神を安定させる上で非常に有効な方法となりますので、あわせてご紹介します。
自律神経の自律をとってこのネーミングなのですが、自律神経というのは交感神経と副交感神経に分かれる、身体の活性化や沈静化を支持する神経と捉えてもらえればよいです。
交感神経が活性化、副交感神経が沈静化を促しますが、人間は基本的にどちらかの神経が優位になって活動しています。
リラックスしているときには副交感神経が、逆に活発に動いているときは交感神経が優位になっています。
自律訓練法は簡単に言えばこの副交感神経が優位の身体状態に転換させるための呼吸法を指します。
瞑想に近い形ですが、厳密には瞑想よりも科学的な根拠のある方法です、あえて瞑想の紹介は致しませんが、気になるかたはそちらもあわせて調べてみると面白いと思います。
さて、具体的な方法ですが、まずゆったりとした服を着て、適温の薄暗い部屋を用意します。
次に、言語公式と呼ばれるテンプレートの音声ガイドを聴きながら、そのとおりに意識を集中させます。
ネットで検索すれば言語公式にはたどり着けると思いますが、書店で本を購入し、言語公式を自分で録音して聴きながら自律訓練法を行うことでもよりリラックスできます。
仕組みと意味を説明するためにはまず心身相関を理解する必要があります。
身体の状況が精神にも影響を与え、その逆も然り、という人間の仕組みを表す言葉ですが、この現象を逆手に取り身体を安静にすることで精神を落ち着かせるのが自律訓練法です。
プレゼンや自己紹介などの緊張する出来事の直前に自分で行えるなど、セルフケアとしても効果の高い方法ですのでぜひ習得してみてください。
まとめ
精神的に弱い人が感情に流されず、自分をコントロールするための方法を、心理学的な視点から紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
自分の感情ですら思い通りにならないというのは煩わしく、それによって悩むこともありますが、感情が理性と切り離されているおかげで人間は生きていられるとも言えます。
プラスの感情があるということはマイナスの感情も当然存在しますから、そうしたマイナス面とどのように付き合っていくのか、建設的な思考をすることで精神的な弱さは軽減されていくのではないでしょうか。
そのためにも、様々な研究や調査が行われていますし、こうして実用的な手法も開発されています。
ぜひご自分でもメンタルケアに興味を持ち、いろいろな手法を取り入れて上手くストレスと付き合っていけるような精神の安定を手に入れたいですね。
この記事がそうした安定の一助になることを願っています。