理工系・医療系大学の先生の仕事内容。教授・准教授・講師・助教とは?

大学の先生がしている仕事

 ここでは、大学の先生がしている仕事について解説します。

ただし、理系、文系、医療系等々、大学の学部はいろいろあり、それぞれの学部で仕事内容も変わってきます。

この解説は、主に理工系、医療系の大学の先生の仕事についてです。

一昔前までの大学の先生と言えば、悠悠と自分の研究をして、講義をして、勤務時間も昼頃来る先生もいるし、年中研究室にこもっている先生もいる、と多様性がありました。

しかし、最近は大学の先生には「自由」がなくなり、いろいろな規則や規定に縛られるようになりました。

さて、現在の大学の先生はどんな仕事をしているのでしょうか?

        

  • 教育について
  • 研究について
  • その他の仕事

大きく分けると、上の3つになります。それぞれについて説明しますが、この3つは独立しているわけではなく、互いに連携して「大学の業務」というものを形成しています。

まずは予備知識として、大学の先生の肩書きを整理しておきましょう。

1. 教授:これは世の中によく知られた肩書きです。

2. 准教授:昔の助教授になります。以前は研究室のトップは教授であることが当然でしたが、最近では准教授がトップであることも珍しくありません。

3. 講師:一般的には准教授の下、とされています。医療系では割と多いのですが、理工系ではそれほど多くはありません。

4. 助教:昔の助手になりますが、助手と比べると業務が増えています。

教育について

大学の先生が行う教育と言えば、講義が真っ先に思い浮かびますが、その他にも、実習、卒業研究指導、大学院生の指導などがあります。

講義をする先生

ちょっと前までの大学の講義は、教授、助教授(今の准教授)、講師が行っていました。

助手は講義の補助などで、どちらかというと研究室の指導が中心でした。

ですが、最近では助手は助教という肩書きになり、講義をすることが可能となっています。

これはうがった見方をすると、従来の助手の人件費で講義をできる人間を確保することが目的の一つと考えられています。

昔であれば、講義をさせたい場合は講師以上に昇格させることが必要でしたが、今では助教のままで講義をさせることができます。

つまり、大学では昇任によって人件費を増やすことなく講義をする人間を確保できるようになったのです。

講義をするとなると、準備が必要です。

最近では、スライドを投影して行う講義が増え、学生の要望によって、レジュメの配布も必要になってきています。

このスライドの準備、レジュメの準備はかなり時間がかかります。

特に、国家試験対策が必要な学部ですと、常に最新のものに作り替えなければなりません。

そのため、最新の情報収集は講義をする先生のルーティンワークとなっています。

また、試験前は当然質問などにも対応しなければなりません。この質問対応が厄介です。

今も昔も学生は試験前ギリギリに質問をしに来ます。

ある学生に1時間くらい費やすと、廊下には5人くらいの質問待ちの学生が溜まるということが頻繁にあります。

昔々は、「私はもう帰る、明日以降に来なさい」と言って帰ってしまう先生は多かったのですが、今それをやると問題になります。

ですので、質問の学生がいなくなるまで対応しなければなりません。試験前は夜の12時過ぎまで帰れないことはざらにあります。

講義に関連する業務は、

1. 講義に必要な最新情報の収集
2. 講義の準備(スライド、レジュメの作成)
3. 講義の実施
4. 質問への対応
5. 試験問題作成
6. 採点
7. 再試の作製と採点
8. 成績決定
となります。

最近は、「なるべく留年生を出すな」という雰囲気ですから、試験の採点にもかなり気を使います。

実習をする先生

理工系、医療系の、実験を伴う実習の流れを追ってみます。
1. 実習書の作製
2. 実習準備
3. 実習の実施
4. 質問対応
5. レポートの採点

おおまかに書くとこのようになります。

学年の学生数が多いと、1人の教員が100名以上の実験の面倒を見なければなりません。

怪我などの事故が起こると大変です。ですので、最近はなるべく簡単に、安全にということで、10年以上前と比べると、実習のレベルが下がっている大学が少なくありません。

そしてレポートの採点です。

学年が100人以上の学部ですと、100本以上のレポートを読まなければならなくなります。

そのため、最近の大学ではレポートではなく、簡単な試験を行う所もあるようです。

実際には、実習は出席してレポートを出しさえすれば、ほとんど落ちる、つまり単位を落とすことはありません。

とはいえ、ひどいレポートを認めるわけにはいきませんので、そういうひどいレポートを書いた学生には再提出を命じます。

しかし呼び出してもなかなか応じなかったりする学生は少なくありません。

ここで、「呼び出しに応じず、再提出させられないので単位を認めることはできない」と報告すると、事務、または実習の統括する先生から、「なんとかして単位を認めろ」と言われることが多いのが現状です。

研究指導をする先生

理工系の大学では、卒業研究を行います。この研究指導も重要な仕事です。

研究室によっては、何時から何時までは研究室にいるように指定する所もありますが、ほとんどの研究室は自由です。

もし、全く研究室に顔を出さない学生がいたら、連絡を取って呼び出さなければなりません。

呼び出しをせずに、「君は来なかったから卒業研究の単位は不認定」と言いますと、かなり怒られます。

それは、「学生の投稿を促す努力をしなかった場合は、教育責任の放棄をした」と言われるからです。

研究内容については、研究レベルは大学入学時の偏差値にほぼ比例します。

ひどい大学になると、先生が出したデータを、学生のデータとして卒業研究にすることもあるようです。

研究について

大学の先生の仕事は、教育と研究が両輪です。

他の学校、高校などの先生と違うのは、研究をしなければならないという点です。

大学の先生が行う研究のレベルは、ピンからキリまであります。やってますといういいわけ程度の研究から、毎年国際誌に論文を発表するレベルまで様々です。

研究をする、ということにおいては、大学の先生はよく中小企業の経営者に例えられます。

自分で資金を集めて研究して、結果を論文として発表して、その論文をもとにして次の研究費を稼ぐ、の繰り返しです。

では、その仕事を具体的に見ていきましょう。

研究資金を集める

最近の大学の先生は、研究資金を集めるのが大きな仕事です。

国からもらう研究費、企業からもらう研究費など色々ありますが、基本的に競争です。

こういう研究をするからお金を出して欲しい、という申請書を書きます。この申請書を審査する側が見て、お金を出そうという研究を決めます。

お金がもらえる確率は、その募集によって違いますが、5%から30%の間くらいの確率です。

大学からもらう研究費は年々減少し、今では年に数万円しか大学からもらえないというところもあります。

お金が足りなくなった場合は、自分の懐、つまり給料から出す人もいます。

研究をする

ここでは、理工系、医療系について書いていますが、研究ということになりますと、実験をしなければなりません。

実験は、スタッフ、学生(大学院生が中心)、そして自分が行います。実験は時間がかかることが多く、丸1日必要な実験もたくさんあります。

しかし大学の先生には他の業務もありますので、なかなか1日全部が使える日はありません。

そういったケースでは、スタッフ(助教、研究員、技術員など)に任せたり、自分が育てた学生に任せたりします。

研究結果を論文にする

研究で結果が出たら論文を書きます。

論文も研究と同じで、スタッフ、学生、自分のいずれかが書きます。

研究の論文は、研究に関わった人全てが著者として掲載されますが、研究の責任者であると、著者の最後に名前が載ります(医歯薬学、生命科学など)。

この論文を出さないと、「研究をした」とは認めてもらえません。

その他の仕事

大学の先生の仕事は他にもいくつかあります。よく「雑用」と言っています。

入試の試験監督、学生の生活相談、学生の父兄との面談、高校への営業、就職先の開拓等々、この雑用は中身が様々です。

そして学部、大学運営のための会議です。

この会議というものはなかなかストレスが溜まるもので、それでいいという結論になりかけても、1人が反対し始めると長くなります。

研究者は理屈っぽいですし、話が長いので、こうなるともう全体が諦めモードになります。

そうして行う会議では、多くの場合はそれほど大したことが決められることはありません。

まともな研究者、大学の先生であれば「筋が通っていればそれでいい」という人が多いのですが、やはり一定割合で自分が仕切らなければおさまらない、という人がいまして、大概はそういう人がいると会議は長引きます。

そして、ある会議をするための会議、というのも存在します。冗談のような会議ですが、実際に存在するのです。

最近の大学では、トップ(総長、学長、理事長など)に権限が集中して、トップダウン形式になっており、決定が早くなりそうなのですが、最近の大学のトップは、「○○について決定する会議を開け」という命令をやたら出します。

その会議の中心になる人には、「私の意向はこうだ」と伝えておいて、自分の都合の良い方向に決めさせるわけですが、だったら自分が決めればそれでいいはずです。

しかし、それで何かあると、大学のトップの責任問題になるので、責任を分散させるために、そういう会議を開かせて、「私はこの会議の決定を尊重したんだ。私が決定したわけではない」という形式にするわけです。

会議を少なくさせるためのトップへの権力集中が、逆に会議を増やしているという面もあります。

昨今の大学の経営難から、人件費削減を目的に人が減らされており、こういう仕事がだいぶ多くなっています。

事務担当の職員も当然減らされていますので、かなりこういった仕事に時間を取られます。

大学の先生のお仕事を大雑把に書くとこんな感じです。世間では給料をかなりもらっている印象があるかもしれませんが、ほぼ公務員と同じレベルと考えてよいと思います。

そして、裁量労働制ですので、残業代、休日出勤手当はほぼ全ての大学でありませんし、勤務時間も定時で終わることがほとんどありません。

大学の先生の中には、定時が何時なのか知らない人もいます。毎日夜10時頃にようやく帰れるので、定時なんてどうでもいい、ということです。

ただし、業績さえ出せば好きなことをしていてもあまり文句は言われないので(好きなことをする時間は自分で何とか作り出します)、それほど悪くない仕事だと思います。

おすすめの記事