大学を卒業した人がさらに高度で専門的な研究をおこなう場所、それが大学院です。今までのように大きな教室で講義を受けるのではなく、「研究室」にて担当教授から直接指導を受けることになります。
また、大学を選ぶ際には「学校のブランド」や「偏差値」が重要視されがちですが、大学院を選ぶ際には自分が専門にしたい分野の研究ができるかどうかを見極めることが重要です。
しかし、数々の試験をパスしてようやく大学院に入学することが決まったにもかかわらず、大学院を辞めたいと思う学生が少なくないという現実もあります。
そこで今回は、大学院を辞めたいと感じる人が増えているのは一体どうしてなのか、苦労して入った大学院を辞めたいと感じた時の気持ちの切り替え方、そして大学院を卒業するメリットなどについて紹介していきます。
目次
なぜ大学院を辞めたいと感じる人が増えているのか?
大学院生というと皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。大学院は大学の延長線上にあるのだから、さぞかし気楽な生活をしているのだろうと思うでしょうか。
実際のところ、大学院生の生活は気ままな大学生活とは別物です。大学時代は与えられた課題をこなすことで単位を修得していきましたが、大学院は自主的な活動がメインです。
自分の専門を深めるべく日々研究に取り組み、結果を出していかなければいけない厳しい世界と言えます。そして大学院を辞めたいと感じている人も少なくないのが現状です。
では、なぜ大学院を辞めたいという気持ちに駆られてしまうのか、具体的に探っていきます。
朝から晩まで研究室にこもりきりの生活に嫌気がさす
大学院生になると、大学時代のような時間割はありません。時間になったら場所を移動してそれぞれの講義を受けるというスタイルでもありません。
ほとんどの時間を自分が師事する教授の研究室にこもって過ごすことになります。特に理工系の大学院・研究室であれば、何日も研究室にこもって研究・観察を続けることもあるでしょう。
時には朝と晩の区別もつかなくなるほど、研究室から外に出ない日が続くことも頻繁にあると言います。そうした生活に疲れを感じた時に、ふと「大学院、辞めたいかも...」という気持ちになってしまうこともあるようです。
そうは言っても、研究を途中で放り出して即座に辞めてしまうわけにもいかないのが悩ましいところかもしれません。
「結果を出さなければいけない」プレッシャーがつらい
大学院という場所は、高校や大学などと違い与えられた課題をこなすことで評価されるような場所ではありません。自らが選択したテーマ・専門分野について深く掘り下げていくことが求められます。
担当教授に研究についてのアドバイスを求めることはあっても、基本的に自主的に行動して研究を進めていくことになりますから、ずっと受け身の姿勢でいては大学院にいる意味がありません。
また、研究を進める以上は必ず「結果を出す」ことを求められます。時間は有限ですから、ある一定の期間までに成果を出せなければ、大学院での生活が無為になってしまうということにもなりかねません。
このように「結果が求められる」というプレッシャーに耐えられなくなってしまうことも、せっかく苦労して入学した大学院を辞めたいと思う一因になっているようです。
師事したい教授がすでに大学院を去っていた
ずっと昔から憧れていた教授がいるから、ぜひ指導を受けてみたいと考えていた教授がいるからこそ大学院に入ることを決めたのに、いざ入学してみたら目当ての教授はすでに大学院を去っていたということもあります。
大学院への受験を決めた時点では間違いなく教授は在籍していたのに、自分が入学する頃には他の大学院に移籍していた、または研究そのものをやめていたというのもよくあることです。
教授の動向まで受験生が把握できるものではありませんから、それも仕方のないことなのかもしれません。しかし、大学院に入学した途端に出鼻をくじかれる形になるのは否めません。
「あの教授がいないのであれば、自分がこの大学院にいる意味はない...辞めたい」と考えるに至っても決して不思議ではありません。
苦労して入った大学院を辞めたいと思った時に気持ちを切り替える方法
せっかく苦労して大学院に入ったのだから、軽々しく「大学院を辞めたい」などとは言い出せないかもしれません。自分に期待してくれる人たちを裏切れないという気持ちになることもあるでしょう。
だからこそ、大学院を辞めたいなと感じた時に、うまく気持ちを切り替える方法を知っておく必要があります。では、大学院を辞めたいと思った時に心を軽くする方法について見ていくことにしましょう。
休学して研究室を離れてみる
どうしても研究が進まない、これ以上この研究を続けていても成果を出せる気がしないと感じる時には、思い切って休学をしてみるのも選択肢のひとつです。
1年くらいの休学であればそれほど問題にならないと言いますから、この機会に自分が本当に目指している研究は何なのか、心から取り組んでみたいと思える課題とはどんなものなのかを真剣に考えてみましょう。
また、研究室を離れることは、精神面と体力面の両方を一度に癒すチャンスとも言えます。研究漬けの生活のためできなかったことにチャレンジしてみるのも良いかもしれません。
さらに休学して研究室を離れてみることによって、今までとは別のことに興味を持つようになることも考えられますから、休学明けに研究室を変更することも視野に入れておくと良いでしょう。
研究室のメンバー以外の知人と出かけてみる
大学院の研究室というのは基本的にメンバーが固定されています。大学時代のように、たくさんの人々が入れ代わり立ち代わりするような大教室での講義はありません。
研究室にいる間はずっと、同じメンバーと顔を突き合わせて活動することになります。ですから、研究室の雰囲気に馴染めないとつらくなってしまいます。
ですから時には研究室の外に出て、研究室以外の知人とかかわり、出かける機会を作ってみましょう。似たような会話、同じような生活の繰り返しで麻痺したあなたの頭に新しい風を吹き込んでくれるかもしれません。
ひとりで悩まない!他人の意見に耳を傾けてみる
大学院を休学するのは学費がもったいないので難しい、旧知の友人と久しぶりに出かけてみたけれど気持ちが晴れないという場合には、ひとりで考えすぎないことも大切です。
すでに大学院を卒業して就職している先輩たちの意見を聞いてみるというのも良い方法です。大学院を辞めたいと感じたことはなかったか、その時どんなふうに乗り越えたのか、疑問をぶつけてみましょう。
今の自分とは異なる視点からアドバイスをもらうことによって、これから自分は具体的にどうしていくのがベストなのか、答えを出すことができる可能性も高まります。
大切なことは、「全部ひとりで解決しなければいけないんだ!」と、思い悩まないことです。大学院でしか学べないこともたくさんありますから、「辞めたい」と感じたら慎重に答えを出すようにしましょう。
「辞めたい」と思うのは早すぎる?大学院を卒業するメリット
大学院に入学することは簡単なことではありませんし、また卒業することも容易なことではありません。だからこそ、研究をまっとうして大学院を卒業することには大きな意義があるのです。
では、大学院を辞めたいと感じても辞めない選択をすること・卒業まで通い続けることのメリットについて、いろいろな角度から見ていくことにしましょう。
専門性が身につき就職に有利な場合がある
大学院に在籍していた、大学院を卒業したという事実は、専門性が高く評価されることが多いため、就職する際に有利になる場合があります。
理系の大学院で研究していた場合には企業の研究職に進む道が開けるかもしれませんし、文系の大学院の場合はコンサルティング会社やシンクタンクなどで高度な知識を活かせることもあるでしょう。
「大学院を卒業している」というステータスは企業側からプラスの評価をもらえることがほとんどですから、企業に大きく貢献してくれる可能性が高い人材として、採用される確率が上がるかもしれません。
ですから今この瞬間、大学院を「辞めたい」という気持ちが大きく盛り上がっていたとしても、すぐに決断しないでください。大学院を卒業したあとの進路についてしっかり考えてから最終的な決断をしても遅くはありません。
世の中を生き抜くための忍耐強さと辛抱強さが身につく
大学院で研究生活を送る期間というのは、長い人生の中でも特殊な時間に属するものでしょう。研究というのは一朝一夕に成果が出るものではありませんし、相応の我慢も必要です。
そのため、大学院に在籍して研究をするということは、大学院を卒業してから世の中を生き抜いていくための忍耐強さや辛抱強さを身につけるための良いチャンスであると言うこともできます。
研究に没頭し、研究に向き合うことは、自分自身と向き合うことにつながると言っても良いのかもしれません。大学院を辞めたいと思う時は、まず自分が大学院生活で身につけてきたことを振り返ってみてください。
必ずしも就職できるとは限らない!大学院を辞めて別の道を進むのもひとつの選択
大学院を辞めたいと感じる人が増えているのは一体どうしてなのか、苦労して入った大学院を辞めたいと感じた時の気持ちの切り替え方、そして大学院を卒業するメリットなどについて紹介してきました。
大学院を卒業することによって専門性が高まり、就職に有利になることは確かですが、必ず希望の職種に就けるとは限りません。
自分の専門外の部署に配属される可能性もありますし、大学院を卒業しているから「絶対に安泰」と言いきれないのが実情です。
ですから、どうしても「大学院を辞めたい」と思う気持ちが止められなくなってしまった時は、きっぱりと別の道を進むのも良いのかもしれません。いずれにしても、5年後・10年後に後悔のない選択ができると良いですね。