ワーキングプアに陥っている人数は現在も増えており、社会問題として取り上げられています。
定義としては雇用があり、就業しているにもかかわらず年収が200万円を下回っている人のことをワーキングプア、はたらく貧困層と呼びます。
200万円というのはだいたい生活保護家庭の収入ラインと言われており、働いているにもかかわらず生活保護家庭と同等の収入しか得られない状況にいる人のことを、一般的にはワーキングプアと呼んでいます。
現在は労働者の4人に1人がこのワーキングプアであると言われていますが、なぜそんなに低所得の方の割合が大きいのでしょうか。
理由としては、雇用形態が安定しておらず、劣悪な労働環境から抜け出せない人が後をたたないためです。
そうした、派遣社員やアルバイトで生計を立てるフリーターをひとまとめにして非正規雇用と呼びます。
中には非正規雇用でも多額の収入を得ている方がいますが、多くの非正規雇用ではたらく方は正規雇用に比べて低い給与で働いている事がわかっています。
年収200万円というのは、月収でみても16万円程度ですから、手取りは13万円前後になることが予想されます。
13万円で生活しながら、毎日労働に追われる精神状態を考えると恐ろしくなりますが、この問題の実態として浮かび上がってくるのは、さきほど述べた非正規雇用の蔓延です。
この記事ではワーキングプアの生活を実際にシミュレートしつつ、有期雇用派遣ではたらく方々がどのように希望を持てばよいのか考えていきます。
今現在、実際にワーキングプアに喘いでいるという方も、そうでない方も、ぜひ一緒に考えてみてください。
明日は我が身、ワーキングプアは他人事ではありませんよ。
目次
ワーキングプアに陥る理由とは
おそらく、普通に正社員として勤務している方にとってはワーキングプアというのは現実味のない話だと思います。
そもそも、働いているのに貧困である理由が想像できないのではないでしょうか。
月の手取りが13万円では一人暮らしをしていた場合、そうとう生活をタイトに切り詰めなければなりませんから、わざわざそのような環境に身をおいてはたらく方の気持ちが理解できないかもしれません。
しかし、仕事ができなくてワーキングプアに転落しているとも言い切れないのが今の日本の労働市場なのです。
労働市場を見てみると、求人数は増加し、企業は人手不足だと次々倒産している様子が見えます。
ではどうして働きたい人と雇いたい会社が多くあるのにマッチングしないのでしょうか。
その答えは海外の労働力にありました。
海外労働力の流入
例えばフィリピンやインド、バングラデシュなどから日本へ出稼ぎに来る若者はあとを絶ちません。
理由としては、日本が労働者へ支払う賃金の高さ、生活環境の良さが挙げられます。
自分の国では同じ時間働いても絶対に得られない賃金が、日本ではコンビニバイトでも稼げてしまうのです。
加えて、清潔な水や整った生活環境が備わっているのですから、日本で働いたほうが得なのです。
単純労働であっても、そうしたバイタリティをもった海外の労働者は日本人よりも必死になって働き、労働させてもらえることに心から感謝します。
辞めても他に行くところがない彼らは多少のことではへこたれませんし、自国に待つ家族の為にも食らいついてきます。
そうしたハングリーさは同じ時給を払っても日本人からは得られなくなってしまいました。
加えて、日本人は英語が致命的に話せませんが、フィリピンやインドからくる彼らは英語や母国語に加えて日本語をも習得していますから、その時点で、すでに言語力は一歩二歩先を行っています。
単純労働を任せる人材として、純粋に日本人では役者不足になってしまっていると言えるでしょう。
だから、単純労働で高賃金が得られる職は軒並み海外の労働力が占めてしまい、頭脳労働職に就けなかった日本人に残された働き口は低賃金の単純労働か、高賃金の頭脳労働かしかなくなってしまっているのです。
労働力の価値が二極化している
日本語は日本でしか通じない言語ですから、日本を離れた途端に言語的不利を被ることになります。
これが日本人が生まれつき背負っているハンデなのですが、これまでこうしたハンデに焦点が当たらなかった背景として「日本が先進国で豊かだった」という理由が挙げられます。
日本の大学で、日本語で学べない学問はありませんでしたし、日本国内で職にあぶれて餓死することもありませんでした。
そうした国の豊かさに支えられて、日本国内で人生を終えることになんの違和感も持たずに済んできました。
しかしグローバル化が進み、日本に海外の労働者が流入してくると、日本企業は日本人を雇うより海外労働者を雇ったほうがコストを押さえられることに気づき始めました。
その結果、これまでは単純労働の働き口を用意していた企業が日本人ではなく海外労働者を雇うようになり、頭脳労働に就けない日本人の賃金が低下、職種も狭まるなどの影響が出るようになりました。
その成れの果てが、昨今社会問題となっているワーキングプアなのです。
ワーキングプアの改善法
ここまでで分かるように、ワーキングプアに陥る理由は二つ、
- 狭まった単純労働の働き口での競争に敗れている
- 頭脳労働に就くための知識や経験が得られない
という内容です。
それぞれに着目し、ワーキングプアを改善するために必要な社会のあり方、個人の考え方を見ていきましょう。
単純労働の競争に破れている
純粋に労働力の質が上がったと見るべきでしょう。
日本の企業がこれまで想定していた以上のクオリティで仕事をする新たな労働力が確保しやすくなったため、競争が生じ、これまでしなくてよかった競争をする必要が生まれたために日本人が敗れているのが現状です。
シンプルに日本人が単純労働に就くために努力するか、新たな単純労働の雇用を創出することでこの問題は解決されると思いますが、いずれにせよここまで大きな問題になってしまっては行政の介入が必須です。
例えば、単純労働に必要な技能の習得を行える修練場を国内に建設したり、これまでは頭脳労働の分野だった仕事の一部を単純労働化して仕事を分ける(ワークシェアリング)ことで、頭脳労働へステップアップする道を作ることもできるかもしれません。
企業が余分なコストをかけてこれらの施策を行うとは考えられませんから、やはり行政の介入が必要になるでしょう。
この方法で個人がとれる行動としては、単純労働のみの労働力はもう需要がないことを自覚し、この先の自分のキャリアを意識しながら日々を過ごすことです。
日々の単純労働だけで終わるのではなく、業界や職種についての理解を深め、会社の利益を最大化するための思考を行うことでキャリアアップを積極的に狙っていきましょう。
そして、そうした思考を持つことが次項で述べる知識、経験の習得にもつながってきます。
頭脳労働に就くための知識、経験の不足
頭脳労働とは、専門知識や技能、業務独占資格の保有者が就ける仕事のことを指します。
平たく言えば「誰にでもできる仕事ではない」という位置づけになりますが、例えば税理士や弁護士といった士業、国家公務員、経営者などのことです。
このレベルの職業になると海外から流入してくる人材ではカバーしきれない難易度になってくるため、日本人の割合が高くなります。
競争がないわけではなく、むしろ質の違う競争に巻き込まれることになりますが、こうした頭脳労働に対して競争をするほうが単純労働の働き口を確保するよりも伸びしろがあります。
国民全体のIQを見ると、国家が豊かな分日本人の知能は平均以上をキープしていますが、これはほぼ全員が義務教育を修了していることも関係しています。
つまり頭脳労働に就く素養は持っていながら、そうした知識を身につける機会や職場に恵まれないがゆえに低賃金の単純労働を奪い合う競争に巻き込まれてしまうのです。
むしろ考えかたを変えて、そうした単純労働の労働力は海外の労働者にアウトソーシングしてしまい(工場などの職場は国内)、日本人には専門的な知識や経験が身につくような教育の機会を与えることで最大効率を生み出せます。
そうした施策を取るのはやはり行政であるべきですし、個人レベルで行えることといえば「自ら教育を受ける機会を手に入れる」ことしかありません。
自ら教育を受けにいく
これまでは大学へ行くことが、ワーキングプアから脱却する唯一の方法でした。
しかし職種が多様化した現在、むしろ大学へ行っただけでは望む仕事につけなかったり、奨学金の返済ができない程度の賃金しかもらえなかったりと、すでに安牌の選択肢ではなくなっています。
これからワーキングプアにならないために必要な方法はたった一つ「自分で価値を想像できるか」という点に尽きます。
勉強することである程度の賃金が得られていた時代は終わっています。
その証拠に、今はエンジェル投資家、クラウドファンディングといった新たな資金の収集方法が日の目を浴びています。
これは知識や経験だけではなく「アイディア」に価値が生まれていることを意味します。
実現可能性にレバレッジをかけるくらいのアイディアに価値が生まれ、あらゆる方面からお金を集めることで自分が本当にやりたいことを実現する世界が到来しています。
もう、やりたくない仕事で消耗しているだけでは助けてもらえないのです。
自分が本当は何がしたいのか、年齢や今の仕事なんて関係なく、自分がどんな貢献を通して世界に新たな価値を生み出したいのか、それを語れなければ大学を卒業していても職にあぶれるようになっています。
もしくは、職に就いたとしても満足できず自ら退職する方も多くいます。
ワーキングプアに限った話ではありませんが、特に、日々をやりたくない仕事で消耗している方にはもう一度、自分がやりたかったことを思い出してほしいと思います。
すぐに使える社会保障制度
夢を語るだけではなく現実的な面でも、ワーキングプアの脱却を考えていきましょう。
確認できる範囲でワーキングプアの方が利用できる、かつ効果が高そうな制度は「住居確保給付金」です。
また「失業保険」もあわせて確認しておきたい社会保障の一つですが、もちろん加入していますよね。
週20時間以上就業しているのに雇用保険に加入していない場合は労働基準法違反になりますので、もし週に20時間以上働いていながら未加入である方は労働基準監督署へ相談に行きましょう。
ワーキングプアからの脱却を大まかな流れとして表すと
- 退職後に役所へ行き住居確保給付金を受け取る
- ハローワークへ行き教育訓練給付金について説明を受け、受けたい講座に申し込む
- 講座の時間と被らない仕事を探し、再就職(バイトでも可)
- 訓練期間を終えるとハローワークが就職先を斡旋してくれるので、再就職
といった流れを踏むと、少なくとも今現在の消耗する働き方からは脱却できる可能性があります。
大切なポイントは住居確保給付金、教育訓練給付金という二つの社会保障を利用することです。
この二つは返済不要で給付される国からの支援金です、前者は就業後も一定の期間支払われるため、職を失ったらまず申請しに行きましょう。
後者の給付金は安定した雇用の実現のために用意された専門的技能を身につけるためのお金です。
IT関連の技能から介護、建設、経理や事務に至るまで、様々な資格や技能の訓練を無料で受けることができます。
昼間はこうした訓練を受け、夜はアルバイト、という生活半年から一年ほど送り、専門的技能を身につけてから再就職に向けてハローワークと二人三脚で歩いていくことになります。
こうした社会保障を利用すれば、少なくとも単純労働で消耗し続けることはなくなるでしょう。
まとめ
ワーキングプアの実態に迫りながら社会保障などを利用してワーキングプアを脱却する方法について解説してきました、いかがでしたでしょうか。
なんとなく遠い世界のできごとに感じていたワーキングプアですが、蓋を開けてみればもう他人事ではないことがおわかりいただけたと思います。
私達だけでなく、これから生まれてくる子どもたちにとっても身近な社会問題になりうるワーキングプアについて、私達がしっかり理解しておくことがまず何よりの対策になるのではないでしょうか。
雇用や世界の労働市場についてもアンテナを張り、常に他人事ではないという意識をもっていたいものですね。
それでは、ご覧頂きありがとうございました。