医師、という職業は高収入の代表のような扱いをされています。
確かに、低くはありません。しかし、医師は同じ職業の中でも働き方に多様性があります。
働き方に多様性があれば、それに伴って、収入にも多様性があります。
その働き方によって医師の収入は大きな差があります。ですが、基本的には他の職種と比べると高めに設定されていることは事実です。
目次
医師の給料はなぜ高いのか?
医師の給料が高いことは知っていたも、なぜ高いのか?について考えたことがありますか?
「頭がいいから」、でも頭が必要でもそれほど給料がもらえていない職種もあります。
「命に関わるから」、人の命に関わる消防士、警察官なども高給でしょうか。
これらの理由は間違いではありません。ただ、一つの理由で高いのではなく、いくつかの理由が絡み合って、高い給料になっているのです。
責任が重い
医師の判断が、人の生死を左右することがありますし、ミスが許されないポイントが他の業種と比べて多くなっています。
とっさの判断が必要となる救命救急医は当然として、他の医師も、人の生命に関わる判断をしなければなりません。
レントゲンの写真を見るにしても、がんの影を見落としただけで大変なことになります。
医師になるまでの時間と労力
それだけの責任に耐えうる知識、思考を身につけるためには、長い時間が必要です。
多くの総合大学では、合格の難易度が最も高いのは医学部です。
医学部に合格できるレベルの授業をしている高校に行かなければなりませんので、中学生あたりから、高い学力が必要です。
さらに、医学部入学後も6年間のカリキュラムは非常に密度が高くなっています。
この6年間の最後に医師の国家試験に合格しなければなりません。医師国家試験の合格率は見ると高く感じられますが、内容はかなりの難易度です。
つまり、医学部生はそれだけの勉強をしているからこそ、高いと感じられる合格率を出せるということです。
さらに国家試験合格後は研修医、後期研修で専門の方向性を決め、一人前の医師になるには30歳くらいでしょう。
それでも30歳程度では、半人前として扱われます。個人差はありますが、信頼できるような感じになるのはアラフォーくらいではないでしょうか。
社会的な必要性
昨今の高齢化社会や高齢者への医療問題に隠れがちですが、国の労働力、生産力維持のためには医療は不可欠です。
働き盛りでなんらかの病気、怪我をした場合、医師がいなければ仕事に復帰できる人は大きく減少するでしょう。
また、出産時に医師がいなければ、死産の率ははね上がるでしょう。
国の労働力、生産力の維持のためにも、医療は重要なのです。
医師でないとできないことがある
症状を見て判断し、治療をする、こういう行為を医療行為といいますが、診断、治療は医師、または医師の指示によらなければなりません。
医師でないとできないことがあり、加えてそれが生命に関わる重要なことですので、医師に責任がのしかかってきます。
先に述べた、「責任の重さ」に帰結しますが、医師でないとできないことが、重要であり重い責任を必要とするため、必然的に医師の給料が高くなるのです。
医師会の政治力
これはちょっと難しい話になりますが、医師会の政治力によるものもあるかと思われます。
診療報酬の減額という政治的決定がないわけではありませんが、政府は産業界(医師会を含む)と財務省の両方に気を使いながら政策を決定しなければなりません。
診療報酬が減額されたとしても、医院が次々とつぶれたりしているわけではありません(確かに病院の中には経営がやや厳しくなっているところもありますが)。
いくらノーベル賞受賞者が重要性を訴えても、せいぜい数年前の予算レベルまでしか上がらない科学研究予算を見ると、医師会の政治力の強さは想像できるのではないでしょうか。
医師はどのくらいもらえるの?
よく、職業別の平均年収が出ていますが、それはあまり意味がありません。
乱暴な計算ですが、年収100万円の医師と、年収1000万の医師がいた場合、その平均年収は550万円です。
ここでは、医師免許を取ってから、そしてどこに勤務すればいくらくらいなのか、細かく見ていきましょう。
医師にはアルバイトがある
医師として医療機関に就職した場合、収入はそこからの給与のみというわけではありません。
医師が不足している医療機関のヘルプ、当直、健康診断などに出る場合があります。
この場合、一日いくらくらいもらえるかは、内容によります。
健康診断の場合、一日4~6時間勤務として、30,000円くらいから80,000円くらいの間でしょうか。
当直も、一回30,000円から50,000円、医療機関によって幅があります。
自分が就職した常勤の機関には、こうした依頼が来ます。それをこなすことによって、給与+アルファの収入を得ることができます。
給与はどのくらい?
一般的に、公立病院は私立病院よりも給料は安いと言われています。
大学病院の場合は、その大学が私立か国公立かにもよりますが、勤務医で600万円から800万円が下のラインと言われています。
国立病院の場合はもう少し下のラインです。このラインは、若手医師のラインと考えてください。
先ほど書いたように、こういう病院には各医療機関から健康診断などの依頼が来ますので、それに対応することによって、+アルファがあります。
私立病院、または私立のクリニックなどに勤務した場合は、かなり給与に幅があります。
東京などの都市圏であれば1000万円をこえる年収も珍しくありませんし、1500万円くらいの年収も少なくありません。
ただし、都市圏では生活費もそれなりにかかりますので、実際に生活がどうなるかはその人の生活レベルにもよります。
ただし、人口10万対医師数で医師が不足しているという県の求人では、東京などをこえる年収で募集するところもあります。
開業すればどのくらいの年収?
開業すれば収入は上がりそうですが、これもどうなるかというのはわかりません。成功している開業医もいれば、そうでもない開業医もいます。
開業医の場合は、年収にかなり大きな開きがありますので、平均年収もそれほど参考にはなりません。
医師が高給と引き換えに背負うもの
医師の給料はなぜ高いのか?に書きましたように、医師の給料は、様々な責任があることが一つの理由です。
40代になりますと、自分が診察する患者だけでなく、後輩の医師への指導、アドバイスなども仕事になります。
役職がつけば、部下の医師だけでなく、同じ科の看護師などのやることにも責任を負わなければなりません。
それらのほとんどは、患者の健康、生命に直接反映されることなので、非常に大きく、重い責任になります。
このように、どうしても「患者の生命に対する責任」がついて回るため、医師が受ける精神的な重圧はかなりのものになります。
さらに、医療機関の経営を考えると、人件費の高い医師をなるべく少なくし、医師1人あたりの労働量を増やす方向になります。
高給がゆえに、なかなか補充されず、1人あたりの労力が増えていくのが実情です。
一方で、医師がなかなか雇えない、募集をしても医師が応募してきてくれない医療機関もあります。
そういった医療機関は、提示する給与の額を上げて、待遇面で人を集める方法をとっています。
などなどの理由で、医師の給与は高くなるわけです。ただし、一部で見られる、高給取りで優雅な生活を送っている医師はごくごく一握りです。
時間的な拘束も長くなることがありますし、患者やその家族に責められることもあります。
医師が高給である理由まとめ
医師の収入がなぜ他の職種とくらべて比較的高いのかをまとめます。一つの理由で高いのではなく、様々な理由が重なって高くなっています。
1. 責任が重い
2. 医師になるまでの時間と労力
3. 社会の必要性
4. 医師という職業での時間的拘束
5. 不足している地域、医療機関の存在
6. 医師統括団体の政治力
そして最後に、人の生命・健康に関わりながら、何人もの患者を診察できる精神力でしょうか。誰でももてる精神力というわけではありません。
年収が1000万をこえることは珍しくない職業ではありますが、やはりそれなりの犠牲を払っている職種です。