手の内について
「手の内がとれていない」、「弓を握りこんでいる」と注意を受けたことがある方も多いのではないでしょうか。
的中を上げるためにも手の内は大変重要なポイントの一つになります。
今回は、手の内について紹介します。
手の内とは
手の内とは、弓手(左手)の形、握り方を指します。弓道に慣れてきた人にとってもなかなか思うようにとれず習得が難しい技術の一つです。
手の内を整えることで、弓手の押しを利かせ的中を高めたり、弓返りにつながったりしますので、超重要な技術の一つになります。
ですが、弓道を始めたばかりの時は、とにかく弓を引くので精いっぱいかと思われます。そのような場合は、とりあえず手の内の形を作って練習してみてください。習慣として体に覚えさせましょう。
初歩練習の徒手や素引き練習の時に意識して体に染み込ませれば無意識にとれるようになるので効果的ではあります。
一方で、残念ながら実際に矢を射る段階にならないと感覚がピンとこないため、なかなか難しいのです。
以上を踏まえて、段階的にメリットを上げました。手の内を整える事で下記の上達を望めますので、ぜひチャレンジしてみてください。
- 初級者:弓が安定する。離れの際に腕や胸をはらうのを防ぐ。
- 中級者~上級者:指から余分な力が抜け下押しの力が入る。しっかりと的へ向かって押す力が働く。弓返りにつながる。
手の内を整えるタイミング
手の内を整えるタイミングと整え方・ポイントを紹介します。
まずは手の内を整えるタイミングについて簡単に説明します。
手の内を整えるタイミングは「弓構え」の時です。矢をつがえて右手で取懸けをとった後に、手の内を整えます。
この整えた手の内の形を保ったまま、弓が引ければ完璧です。打起し以降では、弓を引きながら手の内を整えることができないので、どうぞお忘れなく。
さて、次は手の内を整えるポイントを見てみましょう。
手の内を整えるポイント
1.天紋筋に弓の側面をあてて手の内を作る。
左手の両端の感情線の始まりと知能線の始まりをつなぐと掌の真ん中あたりに線が一本引けますよね。これを天紋筋と言います。この天紋筋に沿って弓を掌に置きます。
あとはその位置で、まず小指から弓を握り、小指の先に合わせて薬指と中指をそろえます。親指は中指の上に乗せ、人差し指は軽く曲げて手の内の完成です。
人差し指の先は軽く曲げて親指の先につけても大丈夫です。曲げすぎてしまったり、ピンと伸ばし過ぎてしまうと、無意識に指に力が入って握りこんでしまうので注意が必要です。
ところで、離れの際に腕や体をはらってしまう方はいらっしゃいませんか。手の内をとることはその防止につながります。
なんと手の内には、その策が隠されているのです。実際に弓を持って確認してみましょう。
まず、手の内を整えた状態で弓を持ち、的に向かうように弓手を伸ばしてみてください。(弓手のチェックをしたいので馬手では引かなくてOKです。)
このとき、弦はどの位置にありますか。弓を中心に腕から30度くらい離れた角度に弦があるのではないでしょうか。
驚いたことに、手の内を整えて握ることで、少し弦の角度を体からずらすことができます。離れをしたときには体や腕に弦が当たらない引き方を取れるようになっているのです。本当に先人の知恵はすばらしいですね。
もしもこの弦が腕や体寄りに位置していたら、確実にヒットします。体に近ければ近いだけ強打になります。…考えただけでも恐ろしいですよね。
腕や体をはらってしまう原因は他にもあるのですが、ぜひ一度手の内もチェックしてみてください。
2.親指の先は立てる。
中指にのせた親指の先は曲げるのではなく、親指の第一関節だけを反らせ的に内側を見せるように立てます。こうすることで、弓を下に押す力が入り、的に向かって弓を前に押すと同時に、下押しがかかるので弓が安定します。
親指を内側に曲げてしまうと、曲げた分だけ矢が上を向いてしまうだけでなく、指に余分な力が入ってしまいますので注意しましょう。
3.ベタッと握らない。
弓をベタッと握らないことも重要なポイントです。
特に、中指と薬指は、指先を小指に合わせることで少し隙間が空きますよね。この隙間をつぶさないように弓を持ってみましょう。
天紋筋、小指、角見(親指の付け根のあたり)の3点で弓を支えるだけとイメージするとよいです。離れの瞬間に弓が自由に動くことができ、離れの反動による弓返りにつながります。
※弓返りについては、別の記事で紹介しますので、そちらを参照してください。
手の内の練習方法
1.手の内の形の練習
弓やゴム弓があるときは実際に持って手の内を整える練習をすればよいですが、何もない場合は素手でも可能です。
まず、右手でチョキの形を作ります。そして、人差し指と中指をくっつけます。この指2本分がちょうど弓の横幅くらいになるそうです。右の指を弓に見立てるんですね。
次に、左手を開き、右手の中指の側面を天紋筋に当てます。掌に対し指を垂直に置く形です。
そして左手の小指で右手の人差し指を握り、左手の薬指、中指の順に置いて小指の先にそろえます。
左手の親指を左手の中指の上にのせ先を反らし、左手の人差し指を軽く曲げて手の内の完成です。
上からのぞくと、左手の中指と薬指で作った輪の中に少し空間が見えるのではないでしょうか。
この空間を意識して手の内をとれるようにすると弓返りにつながります。
2.力を加える練習
手の内で弓を支えるポイントは3つ、天紋筋、小指、角見と紹介しました。
実際に引くときには、弓に対してこの3点でねじ込むように力を加えていきます。
先ほどの右手の中指と人差し指を弓に見立てた素手での練習で、この3点が接し反時計回りにねじるように力を入れます。
ここでチェックしたいのが、左手の中指と薬指の第2第3関節、掌の付け根のあたりは、「弓(右手の中指・人差し指)に触れていないこと」です。指は本物の弓の厚みより薄いので、ベタッと握られていませんよね。
この状態を本物の弓やゴム弓を持った時に維持できるように、形を何度もとって体に簿得させると効果的です。ぜひ試してみてくださいね。
まとめ
いかがでしたか。
手の内を整えることで、弓手の押しの力を効果的に発揮し、弓の位置を安定させ、腕をはらわないような工夫がされていることに気付くことができたのではないでしょうか。
ただし、手の内という技術は、中上級者にとってもなかなか簡単にはいかない技術でもあります。
習得やコツをつかむためには時間がかかるものと覚悟を決めると同時に割り切って、根気強く修練を積んでくださいね。