近年、少子化が進んでいるとはいえ、すべての家庭が一人っ子というわけではありません。不登校の子どもにお兄ちゃんやお姉ちゃん、もしくは弟や妹がいることも多いはずです。
そうなってくると、不登校の子どもを持つ親御様の立場として間違いなく気になってしまうのが「この子の不登校が他の子に影響しないか」ということだと思います。
特に不登校について調べている方ならば、何かと「兄弟姉妹揃って不登校に……」という文章を見たことがあるのではないでしょうか。
残念ながら、不登校の子の兄弟姉妹、特に下の子は上の子に影響されて同じく不登校になってしまうというケースは多々存在します。何かと見かける文章は悪質な脅しをしているわけでも不安を煽るためだけの文言というわけでもないのです。
しかしながら、不登校原因が「親の離婚」など、兄弟姉妹に共通するものである場合を除き、このケースはあくまでも対応を間違ってしまったことが原因です。
対応さえ間違えなければ、兄弟姉妹に不登校が連鎖する可能性はぐっと低くなるでしょう。場合によっては、兄弟姉妹の存在が不登校解決に繋がることもあり得ます。
どのような対応を取れば良いのか、何に気を付ければ良いのかですが、
- 「不登校」にメリットがあると思わせないこと
- 不登校=ずるいと感じさせないよう、不登校そのものへの理解を促す
このようなことを肝に銘じておく必要があると言えるでしょう。これは子どもたちだけに強要してどうにかなる問題ではなく、親御様もしっかりと理解し、気を付けておかなければならない問題です。
「不登校」にメリットがあると思わせないこと
子どもがそれなりに大きくなっていても、「ずるい」と感じることは当然あります。隣の芝生は青く見えるものです。ですから、うっかり「不登校になれば得だ!」と子どもに思わせてしまえば、不登校は簡単に連鎖してしまうことでしょう。
例えば、不登校になった子をデリケートな状態だからといって大事に大事にしていたり、悪いことをしてもあっさり許してしまったりしたとします。一人っ子ならば比べようがないので大丈夫だと思われますが、そんな場面を他の子ども、不登校になった子と家庭内での立ち位置は対して変わらない兄弟姉妹が見ていたとすれば、どう思うでしょうか。
これに加えてよくあるのが、「不登校じゃないんだから」、「あの子とは違うでしょ」と不登校になっていない兄弟姉妹のことを蔑ろにしてしまったり、何かと厳しく接してしまったりすれば、その子の不満はどんどん大きくなってしまうことでしょう。
この結果起こることが不登校状態にメリットを感じてしまったが故に発生した「不登校の連鎖」で済めば良いのですが、最悪の場合、兄弟姉妹間の関係が修復不可能なレベルで悪化し、重大な家庭崩壊が発生する可能性もあります。
「兄弟姉妹なんだから、分かり合えるものだ」と思われるかもしれませんが、残念ながらそのような仲の良い兄弟姉妹は意外とレアケースなところがあります。どうにかなる場合もなくはないのですが、後述の理由もありますし、自然解決頼りにはあまり期待し過ぎない方が良いと思われます。
子どもでも、理不尽な状況には憤りを感じます。訳も分からず学校に行かなくなってしまった兄弟姉妹、親はその子に掛かりきりで、少々のことは許してもらっている。それなのに、自分が同じことをすれば酷く怒られてしまう……文字にすれば分かりやすいかと思われますが、これってかなり酷い状況では無いでしょうか。自然解決頼りが難しいのはこういった事象が関係しています。
確かに、不登校の子に対しては「学校に行かなくても良い」など、ある程度の許容が必要となります。そのことを兄弟姉妹が「羨ましい」と感じてしまうのも仕方がありません。しかし、必要以上にその感情を大きくするようなことがあってはならないのです。
「我慢しなさい」だけでは限界があります。本来被らなくても良い不利益を被ってしまっているということを、理解してあげるようにして下さい。
子どもは何歳になっても、親の影響を強く受けるものなのです。親の態度によって、その後の人生に大きな影響が生じてしまうものなのです。そのことを絶対に忘れてはいけません。
不登校=ずるいと感じさせないよう、不登校そのものへの理解を促す
理論では分かっていても、1の問題を解決するのは難しいものです。機械のように、兄弟姉妹間に完全に平等な状況を生み出すことが可能であったとしても、きっとこの問題は解決しないことでしょう。
そんな無理難題状態な、兄弟姉妹が絡む不登校問題ですが、比較的やりやすいと思われる対処法も存在します。それは、不登校になっていない兄弟姉妹を不登校解決のための味方に付けてしまうことが挙げられるでしょう。
不登校理由が明確で、さらに子どもの年齢や不登校の子との関係性によっては状況を説明したうえで「協力してほしい」と正直に伝えるのです。
何の説明もなく、ひとりはとても大事にされていて、親は自分のことを見てくれないとなると、その子は「自分だけ爪弾きにされている」ような感覚に陥るでしょう。それならば協力者として役割を与えてあげた方が本人の心境も楽なものとなるでしょう。
それでもやはり「ずるい」と感じてしまうことはあるでしょう。ですから時々は、不登校の子にはしないようなことをその子に対してしてあげると良いと思います。
贔屓、と聞くと嫌なイメージしか抱けないかもしれませんが、時として必要な贔屓もあると思います。このケースの場合、協力者として共に不登校問題に立ち向かってくれている子にお礼と言う名の贔屓をしてはいけない理由は、どこにもないのです。
繰り返しますが、間違っても「自分も不登校になれば、親が優しくなってくれる!」だとか「こいつ(不登校の子)のせいで親の対応が酷くなった! 最悪だ!」などと思わせてはいけません。むしろ、そう思わせないために、不登校でない子を優先的に扱うくらいの勢いで良いのかもしれません。
味方に付けるところまではいかなくとも、不登校の子が兄弟姉妹に対して何かしら迷惑を掛けてしまったり、親の対応が不登校の子に向いてしまっていたりした時、その瞬間は仕方がなくとも、後で「ごめんね」、「我慢してくれてありがとう」と謝罪の言葉や感謝の言葉を掛けてあげるだけで、子どもが感じるものは大きく異なっていきます。要は、ほんの少しでも子どもが感じるであろう理不尽さを軽減させることが大事なのです。
また、困ったことに問題は家庭内のみでは留まりません。子ども達が学校など、共通の団体に所属している場合は教師などから学校に通っていない不登校の子のことをしつこく聞かれることがあるのです。
それだけでも結構な負担となり得ますし、その子が不登校事情をよく理解していなかったとすれば、負担はどうしようもない勢いで倍増してしまうでしょう。
場合によっては学校に「その子にあれこれ聞かないでくれ」と親御様の方から一声掛ける必要が出てくる可能性もありますが、子どもが不登校の子について聞かれてもある程度は自力で対処出来るように働きかけておく方が良いと考えられます。
「いちいち説明しなくとも、状況からして大変なんだと自分で察して欲しい」と思われるかもしれませんが、家族といえども思考回路を共有しているわけではありません。そう簡単に察してもらえるものではありませんし、大変だと分かっていても嫌なものは嫌なのですから、そのことは忘れないようにしましょう。
子どもはひとりでは無いということを忘れずに
不登校問題の難しいところは、あらゆる場面での匙加減だと考えられます。その子だけでも大変なのに、兄弟姉妹がいる場合は彼らのことも気にかけなければならないので、なおさらです。
手がかかる子ひとりに掛かりきりになっていれば、どうしても目を向けて貰えなかった子の心にひずみが生まれてしまいます。兄弟姉妹がいる場合はその子の気持ちも忘れずに考えなくてはなりません。
それは非常に大変なことですが、「子どもはひとりではない」ということを考えれば、ある意味当然のことだとも言えます。子どもを育てるのは親の責務ですし、ひとりが不登校になったからといって手を抜いて良いという免罪符にはならないのです。
とはいえ、色々と思い悩み過ぎて親御様が潰れてしまうことも当然ありますし、実際に潰れてしまったケースも多々あります。
子どもも「人間」である以上は、子育てに絶対の正解はありません。ですから、どうしても試行錯誤は必要ですし、間違ってしまうことも当然あります。
そもそも、兄弟姉妹というものは不登校問題が関わっていなくとも難しいところがあります。それぞれの性格が違えば、仲裁しなければ揉め事が絶えない……ということも多いものです。
元々難しい問題を扱っているのです。ですから失敗してしまった時に「この子が不登校にさえならなければ」、「一体何を間違ってしまったのだろう」と過度に思い悩んだり、自棄になったりしないように気を付けて下さい。
繰り返しますが、失敗してしまうのは仕方がないことなのです。しかし失敗したことに気付かなかったり、見なかったことにしてしまったりすれば、取り返しのつかないことになりかねません。
試行錯誤して、子ども達の「正解」を見付けられるよう、子どもたちの様子をなるべく気にかけ、時には外部の力を借りつつ、困難な状況に立ち向かっていくことが一番の理想です。
不登校問題・兄弟姉妹問題を乗り越えてきた先人達も存在します。行き詰ってしまった時には、そういった方々の話を聞いてみるのも良いかもしれません。
「何とか自分達の手ですべてのことをやらなければ」、「失敗してはいけないんだ」と気負い過ぎないようにして下さいね。