クレーマーというのは、商品やサービスの提供者に対して理不尽な苦情を言い続ける人のことをいいます。
もちろん、間違ったことを伝えてしまった時、対応方法に落ち度があった場合には謝罪するのは当然です。
しかし、クレーマーは「自分の気に入らないこと」に対して注文をつけてきます。
特に近年では、悪質なクレーマーも増えているようです。
そこで今回は、クレーマーが生まれる理由やクレーマの心理、そしてクレーマーに上手に対処する方法について考察していきます。
目次
なぜこんなに多い?クレーマーが生まれる理由
すこし前まで、企業に注文をつけるという行為は、それほど一般的なものではなかったでしょう。
しかし時代が進み、人々の心理に「顧客ファースト」という意識が根付いていくにつれ、クレーマーは増加の一途をたどるようになりました。
では、近年これほどまでにクレーマーが増えている理由について考えてみることにしましょう。
「消費者は守られて当然」という意識がある
企業は商品やサービスを提供する側であり、消費者は対価(お金)を支払って商品やサービスを受け取る立場であるという心理が、まず我々の根底にあります。
その中で、「ここはちょっと問題だな」「企業としてどうなんだろう?」と、疑問に感じることがあれば、各企業に設けられた「お客様相談室」に問い合わせをするというのが一般的です。
そして大抵の人はその「疑問」を「クレーム」に昇華させることはしません。質問または意見を述べて、すみやかに話を終了させます。
クレーマーの場合は「疑問「を「大きなクレーム」「大損害」としてことを荒立てようとします。「自分は消費者だから完璧に守られている」という心理から、大きな態度に出ることができるのです。
至れり尽くせりのサービスがクレーマーを量産する
企業が顧客満足度をアップさせるため、さまざまな取り組みをすることは、企業として当然あるべき姿と言えるでしょう。
しかし、サービスが過剰になりすぎることは、時としていわれのないクレーム・クレーマーを生むことにつながる場合もあります。
そしてクレーマーのほとんどは、「こちらが強気に出れば何とかしてもらえるはずだ」という心理で企業にコンタクトを取ってくることが多いものです。
クレーマーの心理をこれ以上甘やかさないためにも、過剰なサービスを見直し、時には毅然とした態度で臨むことも必要と言えるのかもしれません。
対応者の「最初のひとこと」が火に油を注ぐことがある
クレーマーの心理を逆なでするような「ひとこと」があります。
たとえば、以下のような対応者のひとことです。
- お客様のおっしゃっていることは間違っています
- 本当にそのような事実があったのですか?
- 私どもに落ち度はございません
こうしたひとことは、クレーマーの心理状況をさらに悪い方向へとヒートアップさせていきます。
ですから、クレーマーが「明らかにおかしいことを言っている」と感じても、決して相手を責める・または企業側に落ち度はないと言い切るのは得策ではありません。
知っておきたいクレーマーの心理
あなたはクレーマーの対応に四苦八苦した経験があるでしょうか。クレーマーは同じ文句を何度も繰り返し、「こちらが欲しいのは謝罪ではなく誠意だ」と言い続けます。
クレーマーを納得させられるような対応をすることは非常に難しいものですが、クレーマーの心理を知ることで、対処法の糸口はつかめるかもしれません。
では、特に悪質だと言われ、対応に苦慮させられるクレーマーの心理について見ていきましょう。
イライラしているからストレスを発散したい
「受け取った商品やサービスについて本気で意見を言わせてほしい」という人はもちろん存在します。
そうした人々はクレーマーではなく、「商品やサービスの改善・向上に役立つ貴重な意見をくれる、をありがたい顧客」ということができます。
しかし、クレーマーはその逆です。商品やサービスは二の次で、嫌なことがあってイライラしているから、そのストレスを発散するためにクレームをつけてきます。
仕事や家庭の問題など、人は誰しも多かれ少なかれトラブルを抱えて生きているものです。クレーマーになる人はそうした個人的なトラブルからくるストレスの発散方法として、「企業にクレームを入れる」というやり方を選択しています。
電話口で文句を言うのですから、「相手に自分の顔が見えない」ということも、クレーマーの態度を増幅させる原因のひとつと言えるでしょう。
特別なサービスを提供してほしい
クレーマーの心理として、「企業はお客様に逆らうことはできない」と信じているところがあります。ですから、企業にとって大切なお客様が文句を言えば、相応の見返りがもらえると期待しています。
「自分はおたく(企業)のことを考えて親切に助言している」「いろいろな迷惑を被ったのだから特別扱いしてほしい」という心理が働くのです。
しかし、クレーマーが企業側に「迷惑を被った」と訴えてくる内容はしばしば、補償範囲外のことであったり、顧客自身の不注意によってもたらされた損害であったりすることも少なくありません。
それを「企業の落ち度」にすり替えるのがクレーマーです。お客様の発言を最初から疑うのはもちろんよくありませんが、クレーマーの言うことをすべて間に受けて対応してはいけないのです。
強い自分をアピールしたい・認めてほしい
クレーマーにありがちな特徴として、誰かに面と向かって文句を言うことはできなくても、電話を通してなら強気で発言できるというものがあります。
自分に自信が持てない、言いたいことをハッキリ言えない、周りからは「いい人」だと言われるけれど、本当はいい人を演じるのはもうこりごりだという心理状態の人も、クレーマーになりやすいようです。
クレームを言って相手を屈服させることで、「自分」という存在を外の世界にアピールしようとしているのかもしれません。このように、クレーマーの中には心理状態がとても不安定な人も多々存在するのです。
怖がらなくていい!クレーマーにうまく対処する方法
クレーマーの心理を学ぶ上でぜひ知っておきたいのが、クレーマーの「タイプ」です。
- 激情型:最初から最後まで語気が強く威圧的
- 冷静型:口調は淡々としていて論理的。いつまでも同じ文句をくり返す
激情型の人は、第一声を聞いた段階で「クレーマーである」と察しがつきます。しかし冷静型の人は最初からクレーマーであると判断できないのが恐ろしいところです。
ここからは、こうしたさまざまなタイプのクレーマーにうまく対応する方法について、探っていくことにしましょう。
最初から最後まで口をはさまず話を聞く
「この人はクレーマーだ」とピンときたら、まずは最初から最後まで相手にしゃべらせるようにしましょう。口をはさみたくなる心理はよく理解できますが、ここはぐっとガマンします。
口を出すことでさらに反感を買うことになるからです。そして相手が「あらかたしゃべり終えたかな」というタイミングを見計らって、企業側の打開策を提示していきます。
クレーマーの大半は「とにかく誰かに文句を言いたいだけ」であることも多いため、言いたいことを全部吐き出してもらい、心を鎮めてもらうという方法もアリなのです。
安易に「できます」と言わない
企業側は何とか早くクレーマーを退散させようと、あの手この手でクレーマーを懐柔しようとします。しかし、その中で絶対に言ってはいけないのが「できます」「必ずそのように致します」というひとことです。
クレーマーはここぞとばかりに責め立ててくるでしょう。「できなかったらどう責任を取るつもりだ?」「書面にして提出しろ」など、さらに大きな問題に発展する可能性も考えられます。
クレーマーの心理を少しでもうまくコントロールしようと思うのであれば、「できます」ではなく、「できる限りご期待に沿えるように善処いたします」というような言い方をする方が良いでしょう。
カウンセラーになった気分でクレーマー対応をする
クレーマーはとにかく「自分の話を聞いてほしい」という人がとても多いので、「そうだったんですね」「それはおつらい思いをさせてしまいました」といった相づちをはさみながら話を聞いていきます。
相手の話を否定しない、共感するという能力も、クレーマー対応の際に必要な能力のひとつであると言えるでしょう。
クレーマーの心理状態をこじれさせないためにも、対応者側はカウンセラーになったような気持ちでいると良いかもしれません。
対応する側は感情的になってはいけない
人は事実と違うことや、理不尽なことを言われると反論したくなるものですし、つい感情的になってしまうものです。しかし、クレーマーと対峙する際には、決して感情的になってはいけません。
クレーマーの怒りに同調して感情的になってしまうと、自分からクレーマーと同じ土俵に上がってしまうことになるからです。
怒りの感情で責めてくるクレーマーと同じ位置に並ぶのではなく、一歩引いたところからクレーマーと対峙することを心がけましょう。
クレーマーと対峙したあとは気持ちの切り替えが大切!
クレーマーが生まれる理由やクレーマの心理、そしてクレーマーに上手に対処する方法について考察してきました。
クレーマーと話をすることは、心身ともに大きな疲労感をもたらします。自分を否定されたような気分になって落ち込んでしまうこともあるでしょう。
そんな時は、クレーマーが責めているのは「対応者個人ではなく企業である」ということを思い出してください。決して自分を追い込んではいけません。
クレーマーと対峙した直後は気持ちが晴れずにモヤモヤした気分になってしまうでしょう。
しかし、クレーマーにあなたの顔が見えないように、あなたにもまた、クレーマーの顔は見えないのです。さらに言えば、クレーマーはこれから先もずっとつき合い続ける相手ではありません。
ですから、クレーマーについてはあまり深く考えすぎず、上手に気持ちを切り替えて前進していきましょう。