不登校の回復にかかる期間は原因によって変る。ケースごとに解説します。

学校に行かない子=不登校と考えられがちですが、厳密には『何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの』と文部科学省は定義しています。

回復までに掛かる期間はケースバイケースですので、一概に「これくらい」とは言えないのですが、不登校になった理由次第で数字は大きく変わります。

結局はその子次第、そして不登校の回復までには時間が掛かるということを念頭に置いた上で、様子を見ながら接し方を変えていくようにして下さい。

1.学校で嫌なことがあり、それが原因で不登校になったケース

  • テストで酷い点数を取ってしまい、自信を持てなくなってしまった
  • 友達と喧嘩してしまい、会いたくないと思ってしまった
  • 先生に怒られ、気持ちの整理が付けられなくなっている

……などなど、学校で何かしら嫌な思いをしてズル休み、もしくは心的理由が体調に直結して休んでしまったことをきっかに、そのままズルズルと学校に行けなくなってしまうケースです。

このケースは子どもが幼ければ幼い程に発生しやすくなります。逆に高校生くらいの子どもになると「世の中どうにもならないことがある」と渋々受け入れてくれることも多く、発生理由としては減っていきます。

しかしながら、どうにもならない場面で立ち止まってしまう子どもも中にはいます。

特に原因となりやすいのは人間関係で、「同級生・先輩・教員など、特定の人がどうしても嫌。会うことがとにかく苦痛」というパターンです。

大人は「そんなことを言ってもしょうがない」と考えてしまいがちですが、転職理由をランキング化しても、『人間関係』がかなりの高順位に入ってくることを忘れてはいけません。

むしろ、そう簡単には環境を変えられない分、子ども達の方がシビアな環境にいるかもしれないということを念頭に置いた上で接してあげるようにして下さい。

とはいえ、このケースは原因がハッキリしている分、対処しやすいところがあります。レアケースではありますが、学校にいけなくなっている理由を上手く取り除くことが出来れば、あっという間に解決まで行くこともあります。

不登校の定義である30日よりも早く復帰できることもあります。

また、しばらく不登校を続けているうちに「これはどうしようもないことなんだ、逃げていても仕方がないんだ」と子どもが自ら悟り、前に進み出すことも中にはあります。

そのため、他のケースに比べると解決までの時間が短いことが多いです。

ただし、長期化してしまうと楽な方向に行く癖が付いてしまったり、「いまさら学校に行っても居場所が無い」などと考えてしまったりして逆に学校に行きにくくなってしまうこともあります。

長期化を防ぐためにも、子どもが不登校化する兆しを見せた段階で解決への道筋を立てておくべきでしょう。

子どもは『どうにもならないことを受け入れるため』に不登校となっているとも言えます。

ですから「子どもは今、受け入れようと頑張っているんだ」と理解した上で、「苦しいのは分かるけれど、今は頑張るべき時。支えになるから立ち止まらないで」と優しく訴えかけ、どうにか前に進むための手助けをしてあげるように心掛けてください。

可能ならば理由となっている事柄を除去するための行動をするようにして下さい。

2.学校ではなく家庭などが原因で不登校になるケース

  • 両親が離婚し、どちらかと離れ離れになってしまった
  • 親がリストラされてしまった、将来どうなるか分からない
  • 親が近所の人と喧嘩をし、重苦しい空気が漂っている

こういった事柄はどちらかというと小学生くらいの幼い子どもに多い理由なのですが、高校生は思考力も鍛えられ、物事の真意などに気付きやすい傾向があります。

そのため、大人がひた隠しにしてきた汚い部分や残酷な現実に気が付いてしまい、ショックのあまり何も出来なくなり、結果として学校に行けなくなってしまう……というケースも中には存在します。

このケースは処理しきれない事柄にぶつかり、学校が二の次になってしまっているだけとも言えます。

ですので、何とか学校の方に関心が向くように働き掛けることが出来れば、あっけなく解決してしまうこともあります。

とはいえ子どもの気持ちを蔑ろにして「そんなことはどうでも良いから学校に行け」と適当にあしらうようなことだけはしないようにして下さい。子どもも色々と考えていますし、悩むのです。

子どもをちゃんと1人の人として扱うように心掛けて下さい。

3.全く理由が分からないが、とにかく学校に行けなくなってしまうケース

長期化しやすく、さらに高校生に多い不登校理由としてはこちらが挙げられます。

高校生は小学生、中学生と比較すると遥かに燃え尽き症候群になりやすく、急にやる気を失ってしまい、学校への足が遠のいてしまうことがあります。

こちらは本当に「とにかく学校に行けなくなってしまった」ケースですが、他にも日々の嫌なことが積み重なり、心が限界を迎えてしまったケースも考えられます。

大体は後者のタイプでしょう。原因がありすぎるため、どれが理由だとはっきり言えないのです。

そのため「どうして学校に行かないの」と聞いても曖昧な答えしか帰ってきません。それに対して意味が分からないとイライラしたり、周囲の大人が落ち込んだりするようなことがあってはなりません。

このケースで不登校になるのは元々サボりがちな不真面目な子だったり、非行に走って周囲を困らせたりするようなタイプということはなく、むしろ、

  • 成績優秀で非のつけ所が無いような優秀な子
  • 友達が多く、明るくて人気者の子
  • 目立たないが、大人しく真面目な子

……といった、ごくごく普通の、それも周りを困らせないタイプの子であることが多いです。

周囲を気遣い過ぎるあまり、燃え尽きてしまったり、疲れてしまったりするということです。

どちらにせよ、我慢強く耐えてきた子がとうとう限界を迎えてしまったのです。ですから「甘ったれるな」と無理矢理登校するように促せば、あまり良くない事態に陥ること間違いありません。

子どもを見守る立場である大人達からしてみればあまり好ましくはないことかもしれませんが、残念ながらこの手のタイプはそれなりに長い期間の休息を必要とします。

それだけ傷付いてきた、我慢してきたんだと理解し、子どもを信じて待つように心掛けて下さい。むしろ周囲が悪い刺激ばかりを与えていれば、回復が遅くなっていくのだと理解するようにして下さい。

子どもを支える周囲の大人が折れてしまわないためにも、時にはカウンセラーなど外部の力に頼ることもまた効果的といえるでしょう。

『期間』を気に過ぎないことが大切

結局のところ「だいたいこれくらい」という明確な答えを出すことは出来ません。

それが知りたくてこの記事を読んでいる方もいるかと思いますが、世の中色々な人がいるように不登校回復までの期間も人それぞれなのです。

むしろ、具体的な数字があれば「もう治るくらいなのに!」と焦り、誤った行動を取ってしまう可能性も高まります。具体的な数字は無い方が良いとも言えるでしょう。

目の前の子どもの様子を見て、取るべき行動を判断する。結局はこれが1番の薬なのです。周囲が焦ったり、勝手に子どもの心境を決めるようなことはあってはならないのです。

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